無表情な彼
「ソフィアお嬢様、すごくお綺麗ですよ」
今日のパーティのためにローザが気合いを入れて用意をしてくれた。
花があしらわれた淡い青いドレスに髪には青い花の髪飾りをつけている。
「ふふ、ありがとう。でもやっぱり少し派手じゃないかしら?」
「これくらい普通ですよ、お嬢様の少し赤みがかった髪には対称的な青いドレスがよく似合います」
ローザはそう言ってくれるけど自分には地味な方が似合うんじゃないかと思ってしまう。
今日はすみに隠れてやり過ごすつもりだったんだけど大丈夫かしら。
「そろそろ時間ですので、旦那様たちと向かいますよ」
「はーい」
今日は陛下主催の王城でのパーティだ。
王城でのパーティではめったに事件は起こらないしすごく治安がいいと聞いたので、またあのトラウマのようなことは起こらないだろうと少し安心している。
王城につくとたくさんの人で賑わっていた。
同い年ぐらいのご令嬢は皆すごくきらびやかなドレスを身にまとっている。
レイモンド殿下が来られるということでみんな気合いが入っているのだろう。
「さぁソフィ、陛下たちのところへ挨拶に行くよ」
「はい、お父様」
う、ついにこの時が来てしまった。
陛下のところへ挨拶ということは、きっと殿下もその場にいらっしゃるだろう。
陛下のもとへ行くとさっそく国王様が声をかけてくださった。
「おう、マーグリス!久しぶりだな」
「ご無沙汰しております。本日はご招待ありがとうございます。」
「そんなに堅くならなくてもいいのに」
と王様は父に向かって笑っている。
マーグリスというのは父の名前だ。
「それにマリア夫人にそちらはソフィア嬢だね」
「はい、お久しぶりでございます」
私とお母様は軽く王様に向かって一礼をする。
「今日はせっかくのパーティだ。楽しんでいっておくれ」
その王様の言葉で挨拶は終わった。
(ふぅ〜緊張した...)
王様は昔と変わらず気さくに話してくださって何も変わっていなかった。
え?殿下はどうしたのかって?
もちろんその場にいましたとも。ずっと王様の隣に。
一言で言うと殿下は昔とは違った印象だ。
昔は感情表現が豊かな方だったのに、さっきは父が話している時もずっと無表情でこちらに興味を示していない感じがした。
それがなんだか怖くて私はほとんど見れなかったのだけれど。
予想通り私のことなんて忘れてしまっているみたいだった。
それにしても殿下はすごくかっこよくなっていらっしゃった。
昔から美少年という言葉が相応しかったけれど、今はより一層かっこよくなられていた。
昔と変わっていなかったら、もしかしたら私は殿下になら男の人が苦手なところを克服できるかもと淡い希望を抱いていたけど、やはりそんな都合がよくはなかった。
殿下も立派な男の人になっていたのだった。
忘れられていたことに少しショックを覚えていると、見慣れた人物が会場にいるのが見えた。
「お父様、エリアルがいたので少しお話をしてきてもいいでしょうか?」
「ああ、行っておいで。私も少し挨拶をしてまわらなければいけないからね」
そうして私は一旦両親から離れてその人物のところへ会いに行くことにした。