第8話 そのクラス厄介
こうして、但田先生の授業は始まった。
僕らの最初の授業だからなのか、汗をかきながら熱心に行っている。
ただ、どの内容も知っていることばかりでどうにも話が頭に入ってこない。
四大元素の内容や、簡単な魔法や混合魔法の紹介といった、本当に基礎の基礎といった内容だ。
まあ、最初の授業だからこのような内容をやるのは理解できる。
あまりに退屈だったので、上の空で話しを聞いているぼーっとしているうちに気づいたら授業は終わっていた。
「よし、それじゃあ今日はここでお終い!次回誰が授業するかわからないけどしっかり聞くように!」
そう言って、但田先生は軽く会釈をして教室から出て行った。
最初の授業はそこまで長くなかったな。
ここの学校は本当に特殊で、チャイムといったものがない。
先生が好きな時間だけ授業を行ってもいいのだ。
例えそれが何時間と行った長い時間を取ったとしても問題ない。
今回但田先生は内容が簡単なものだったからか早めに授業を終わらせている。
もちろんこの学校にも時間割というものはあるにはあるが、それは単にその日に何をやるかということを示しただけのものだ。
例えば、今日でいったら座学の授業が二つあるだけだ。
何故このような制度が取れるかというと、この学校にはかなりの数の優秀な先生がいるからだ。
彼らは授業を行っていなければ、空いている教室に行き時間割に書いてある授業をする。
しかも、どの先生もオールマイティーに教えることが可能なため、どの科目でも問題ない。
流石、日本一の魔法学校とも言われているシャルム学園。
教育制度に関しては抜かりがない。
「なんか今の授業つまんなかったね。」
愛が自分の机に腰掛けながら、そう言ってくる。
「うん、そうだね、知ってることばかりで退屈だったね。」
「だよね、はあ早く座学じゃなくて実技の授業したいわ。」
「それはわかる。」
そうやって愛と話していると、気づけば担任の山高先生が教卓の後ろに立っていた。
「えー皆さん席に座ってください。本当は次の時間にも授業がありましたが、今日はそれがなくなりました。」
「「「「え」」」」
突然の担任の言葉にクラスのほとんどの人が思わず声を出す。
「そしたら、先生何をするんですか?」
廊下側の席に座っている子が山高に対し、質問をする。
「本日ですが、Fクラスからクラス対抗戦のデュエルを申し込まれました。そのため、クラス単位のデュエルを行います。」
「「「「「ええええええ」」」」」
先ほどよりも大きな驚きの声が教室内に響き渡る。
「とういわけで皆さん、デュエルは校庭で行いますので、外に出てください。」
山高は相変わらず不愛想な顔でそう説明し、率先して外へと向かって歩いて行った。
あまりに突然な出来事のため、Aクラスの皆は話を理解できていないが、取り敢えず、山高についていった。
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「待っていたぞ、Aクラス」
校庭に着いて早々突然大砲が発射されたかのような大きな声で挨拶をする男が立っていた。
僕は彼を知っている。
なぜなら、今朝会ったからだ。
「俺の名前は白水真人。Fクラスの室長を務めているものだ。忙しいところきてもらって申し訳ないが、今からデュエルを挑ませてもらう。はっはっは。」
高らかに笑いながら、白水は僕らを見てくる。
会って早々、宣戦布告とは。
朝から思っていたが、彼はとてもせっかちな性格なようだ。
「すまんな、うちの生徒たちが授業始まって早々にFクラスに迷惑をかけて。」
朝のジャージの先生が申し訳なさそうに後頭部に片手を乗せぺこりと軽く頭を下げてくる。
「謝る必要はない。これはこの学校のルールだからな。」
確かに彼の言っていることはその通りだが、何となく腑に落ちない。
「俺は一刻も早くデュエルがしたい。早く結界を張ってくれ。」
ジャージの男は僕らにも聞こえるような大きなため息をつき、AクラスとFクラスの間に歩いてくる。
同時に、山高先生も少し前進し、彼の隣に立った。
「それじゃあ、先に魔法結界だけ張らせてもらいます。」
そう山高先生が言うと、僕らの周りにはいつもより遥かに大きい結界が展開されていた。