第4話 デュエルは手短に
「「「「うおおおおおお」」」」
周りの観客はこの試合、岸が無名の選手を圧倒すると予想していた。
例えそうでなくても、岸が必ず勝つ、誰もがそう思っていた。
ここにいるほとんどの人は、デェエルがどのようなものかを直接見たいと思って来ただけである。
しかし実際は、試合が始まると同時に岸が飛ばされ、倒れているではないか。
この予想と真逆の展開は、人々を熱狂させ、もはや公害ともいえるほど校庭は騒がしくなっていた。
「いいぞ、知らんやつ。もっとやれ!」
「岸君〜、Aクラスの意地見せてよ!」
「早く、でっかい魔法使え!」
思い思いの声援が飛び交う。
ただ、その声は魔法結界によって内部に届いてはいなかったが。
___状況はかなりまずいかな。
仰向けで寝転がりながら、岸は現状の状況を考えたいた。
布衣野君が何の魔法を使ったか、わからない。おまけに体調も最悪。
もし、後一発でも今の食らったら、負ける可能性だってある。
本来なら大技を使って布衣野君を倒したいんだけど、今のコンディション的にコントロールできるか自信はないな。
それに失敗して、魔力切れとかになったら、それこそ勝ち筋がなくなりそうだ。
んーどうしよう、大勢の前で見せたくないけど、あれをやるしかないのかな。
「岸君!どうしたんだい!早く立ち上がってくれないか!倒れている君に攻撃するのは流石にスポーツマンシップに則ってないから、攻撃できないよ!まだまだやれるだろ!」
___はあ、そう言われたらやるしかないか。
僕のとっておきバレないで欲しいけどな。
岸は何かを決意したのか、鉛を背負ったかのような重たい体をゆっくりと起こし、立ち上がる。
「___待たせて、ごめんね。さあやろうか。」
「そうこなくっちゃ!準備万端そうだし、早速で申し訳ないけど、もう一回いかせてもらうよ!」
布衣野がそう言うと同時に、彼の姿が消えていた。
そして、
ドン
っとまたしても鈍い音が結界内に響き渡った。
シーン
先ほどまで騒がしかった結界の外は内部の状況とは正反対かのように非常に静まっていた。
あまりの一瞬の出来事だった。
皆が今目の前で何が起きたのか理解できなかった。
それもそうだろう、
目の前では、布衣野が結界に向かって拳を当たるという奇妙な光景が広がっているからだ。
なっ...
避けられるはずがない、そう思っていた攻撃がかわされ、布衣野は焦りの表情を見せる。
「岸君今何をしたんた!」
予想外の自体に、布衣野は岸の方向へ振り返り、睨むようにして見つめる。
「ただ単に、布衣野君をかわしただけだよ。高速で動いてる君をね。」
「なっ。」
まさか自分の魔法が見抜かれたのか。この一瞬で、そう言わんばかりに、布衣野の顔からは動揺が見られる。
「どうしたんだい、布衣野君。これで終わりかい。もう一回その魔法を使ってごらん。今度は君を気絶させるから。」
先ほどの布衣野の言葉を受けてか、挑発するかのように岸は呟く。
布衣野はそれ聞き、若干苦い顔をした。
「さすが、首席だね、岸君!まさかこんなに僕の魔法が早くわかるとは!もうわかってるなら言うけど、そう僕の属人魔法は身体強化!今回はスピードに強化して攻撃をさせてもらったけど、まさかかそれを2回目で見抜くとはね!正直驚きだよ!それなら次は本気でやらせてもらうよ!」
そう呟いた直後、布衣野は急にしゃがみ始めた。
そのまま、両手で自分の靴を握り、何か小言で呟くと、そこには魔法陣が出現していた。
勢いよく立ち上がり、岸の顔を見ながら、
「これはかわすのは難しいよ。」
今までとは違った冷静な声で岸にそう言った。
彼の顔には先ほどとは打って変わって、自信が戻ったような顔をしている。
これで決める、そう決意した、布衣野は
「俊神」
そう唱え消えていた。
結界内では砂埃が飛び散り始める。
次こそは、当てる!
これが、僕の最高速度だ!
さっきはどうしてかわされたかわからいが、このスピードをかわせるわけない!
それに、今回はさっきの直線の攻撃とは違う!
こうやって周りを動いていれば、どこから来るかわからくて対処できるはずがない!
今だ!
布衣野は、目にも留まらぬ速さで、岸に蹴りを入れた。
勝った!
布衣野がそう思った矢先、
岸の体が空気のようになって消えた。
そして、布衣野は耳元で僕の勝ちだよ、そう小さな声が聞こえた後、
首に雷が打たれたかのように強い衝撃を感じ、意識が途切れた。
そしてその3秒後、審判を務めていた教師は、勝負が決したことを悟り、声高らかに叫んだ。
「試合終了、勝者Aクラス、岸!」
岸はデュエルが終わったことを実感し、ホッとした顔のまま気づけば意識を失っていた。