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第3話  初デュエル

『デュエル』

 どうせいつかはするだろうから、出来るなら早めにしておきたい。


 そういう思いは、岸の中にあった。


 だが、彼の体調は過去最悪とも言えるほど悪く、それをするのは明らかに今日ではない。

 そのことは、本人も自覚しており、岸は布衣野の申し出を断ることにした。


「えっと、デュエルなんだけど、今日はちょっとでk「ねえ、話聞かせてもらってんだけど、デュエルするにしたって先生いないんじゃないの。」


 突然、岸の後ろから話を遮るように、女性の声が聞こえてきた。


 岸は後ろを振り向くと、そこには、短い茶髪の前髪をヘアピンで留め、つり上がった目から気が強そうなイメージを連想させる女性が腕を組んで立っている。


「デェエルは先生がいないと認められないでしょ。先生はちゃんといるの?」


 こちらが振り向いたことも全く気にせず、見知らぬ女性は話を続けた。


 彼女の口調は何故かとても強い。まるで自分たちが何かしでかして、それを怒っているかのように強い。いやむしろ強いを通りして怖いくらいだ。

 突然の知らない女性の参戦、しかも怒っているかのにように話をするので、岸は一人萎縮していた。


 その一方、布衣野は彼女が会話に参加したことを何も気にしない様子で、

「もちろんさ!外で集合と言ったから後で先生もくるはずだよ!ご心配ありがと!」

 と返答する。


「ふーん、そうなんだ。なら、ウチも丁度、生のデュエル見たかたっし見学させてよ。」


「当然だよ!ギャラリーは多い方が盛り上がるしね!」




 ___何故だろう。

 自分の意思とは関係なく、話が進んでるいると感じてしまう。

 このままだと嫌な予感しかしない、早く止めなければ。


「__えっと、盛りがってるところ、申しわけないんだけろ、デュエルはそのでk「おい、今年の首席がデュエルするらしいぜ」

「マジかよ!早速だな」

「俺らも見に行こうぜ」


 布衣野君の雄叫びのようにでかい声のせいか、僕がデュエルをすることをクラスのみんなが知ってしまったみたいだ。


「どうやら、みんなも見たいようだね!それじゃあ、さっそくで申し訳ないけど、行こうか!」


 どうしよう...

 ここまで、盛り上がったらもう無理なんて言えない...


「う、うん...」


 こうして、岸は渋々、布衣野にエスコートされながら校庭へゆっくりと向かうことになった。


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 入学前にも見たが、ここの校庭はかなり広い。

 東京ドーム一つ入るんじゃないかくらい、広い。

 仮に校門から校舎まで瞬間移動魔法や、浮遊魔法を使わずに歩いたらどれくらい時間がかかるんだろうか。

これだけ広ければ上級魔法など周りに気にせず打つこともできる。

 これほど最高の環境で学ぶことができるなんて、本当にこの学校に来てよかったな。


「それじゃあ始めようか。」


 その言葉で現実逃避をしていた岸を現実に引き戻す。


 いつの間にか、僕たちは校庭に到着していた。

 Aクラスは一階にあるため対した距離を歩いたわけではないが、体には大きな疲労感があった。


 わー、ワー


 周りからはざわめき声がする。

 どうやら僕が布衣野君とデュエルすることが知れ渡ったらしく、さっきよりもたくさんの観客ガヤが僕と布衣野君を囲っている。


「おい、早くやれよ」

「室長頑張って!」

「俺は岸に賭けたんだから負けるんじゃねえぞ!!」

「祭りだ祭りだ」


 明らかにおかしいものもあったが、新入生初のデュエルということで、多くの人が興奮し様々な声援が聞こえてくる。


「入学初日からデュエルって今年の一年は活気があるね。」

 そんな怒号にも近い声が飛び交う中、少し笑いながら、布衣野が連れてきた先生は僕らにそう言ってきた。


 全くだよ。

 入学初日から勝負を挑んでくるなんて、本当に活気がありすぎるよ。


「お褒めいただき光栄です!」


「う、うん、ハハ」


 布衣野の予想外の言葉のためか、その教師は少し動揺している。


「えーと、それじゃあ、お互いが初めてだと思うから、簡単にデュエルの説明をさせてもらうね。」


 教師は、そう言い床に手を突くと、僕らの周りには半径5Mほどの結界が張られた。


「とりあえず、周りが五月蝿かったら、先に魔法結界を張らせてもらうね。」

 ハニカミながら、教師は僕たちに言う。


 よかった。ちゃんと周りに気を配れる人だ。

 岸はその先生の態度を見て少し安堵した。

 なぜなら、先程までの布衣野の傍若無人ぶりな行動から、連れてきた先生も似たような人だったらどうしようかと内心心配をしていたからだ。


「まず、デュエルをする場合、周りに被害を出さないよう、こうやって魔法結界を張ることが前提。

 そして、デュエルにおいては、禁術以外どの魔法を使用しても問題はないんだけど、相手に深手を負わせそうな場合は、魔法結界を張った責任者、今回だったら自分がその魔法を消したりするなど何らかの方法で関与はさせてもらう。そして、大事な勝利条件としては、これは単純で相手が気絶した場合、または参ったと言ったら勝ち。まあ、ざっくりとだけど、こんな感じかな。」


「ありがとうございます!」


「布衣野君は本当に元気だね。それじゃあ、早速だけど、始めさせてもらうね。準備はいい?」

 自分の左に立っている教師は、そう言いながら手をあげる。



 いつでも準備は"できてない"。


 本当はそう答えたいが、周りの盛り上がった様子を見ているとそんなことを言える様子でもない。


「もちろんですよ!早く始めましょう!」

 布衣野は飼い主に餌を求める犬かのように大きな声で答える。



「はい、大丈夫です。お願いします。」

 まるで病人かのように弱々しい声で、岸も同意する。


「オッケー。それじゃあ、始めさせてもらうね。」


 少しの間があった、再び先生は口を開け


「デュエル!」

 と上げた手を下ろしながら叫ぶ。


 こうして、僕の初デュエルは開幕した。




 しょうがない、やるしかないか。

 そう、岸が戦うことを決意した瞬間


 ドンッ


 鈍い音ともに、岸の体の背面が結界にぶつかっていた。

 頭を強く打ったため、ほんの一瞬だけ意識がとび、そのまま、ゆっくりと前のめりに地面に倒れた。




 何が起きた。


 あまりに唐突に飛ばされたため、岸は何があったのか全く理解できていなかった。

 鳩尾辺りに激しい痛みがあると言うこと以外は。



 そう、うろたえている中、目の前にいる布衣野を見ると、彼は挑発するかのように

「どうしたんだい、岸君!君は首席なんだろう、早く立ち上がってくれないか!」

 と言った。


 どうやら、この学園は一筋縄ではいかないらしい。

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