第10話 あっという間の決着
「悪いな岸、こっちも本気でAクラスを目指しているから、まず、お前から倒させてもらうぞ」
そう、白水が言った直後、彼らが作った全長10メートル程の炎の鳥は岸に向かって一直線で飛んできた。
表面が赤々として輝いており、触れたもの全て溶かしてしまうような雰囲気を醸し出している。
「岸さん!」
禍々しいものを目の前にし、風月は隣で心配そうに岸を見つめる。
だが、岸はこれを見て、風月が思うようなことと別のことを考えていた。
この魔法、明らかに上級魔法に匹敵する呪文だ。
5人の力を合わせたとしてでも、ここまで難しい呪文を出すなんて。凄い。
僕がこの呪文を出すことは一生できないだろう。
Fクラスだからといって見くびっていた自分がいたかもしれない。
そうだよな。彼らも受験を制して、この学園に入ってきたんだ。
やる前は手を抜いて戦おうと思ってた。
けど、こんなの見たら、こっちも本気でやらないといけないよね。
岸は、何かを決意したのか、小言でこう呪文を呟いた。
「暴風の征者」
その直後、岸の目の前には、目の前の炎の鳥と同じ程度の大きさの龍が現れていた。
ただし、その体は実体があるというわけではなく、風でできていた。
「白水君、そっちがその気ならこっちも本気でいくよ。」
向かってくる鳥に対し、その龍が激しい音をならしながら正面から衝突し合う。
観客たちは漫画でよく見かけるような均衡した熱い展開を期待した。
だが、そんなことは漫画だけの世界でしかおきない。
勝負は一瞬だった。
龍は鳥を食べるかのようにその火を一瞬で打ち消した。
そして、そのまま、白水たちFクラスへと向かって進んでいた。
「なっ」
白水たちは為す術もないまま、そのまま龍に飲み込まれた。
彼らはそのまま壁へと打ち付けられるように飛ばされた。
砂埃がまい、少しの沈黙が流れる。
そして、白水たちの姿が完全に見えるようになった時、
審判の山岸は
「Fクラス全員気絶のため、デュエル終了。勝者Aクラス。」
と、試合の決着を言い渡した。
同時に周りにあった大きな結界も消滅していた。
「あれ、俺ら何もしてなくない。」
傍で結城がそう呟いた。
実際、デュエルの時間は1分もかかっていなかった。
「「「わーーー」」」
今年度の首席の本気の魔法を見たからか、Aクラス、Fクラスどちらの生徒も大きな歓声を上げていた。
一方、今回の立役者の岸は大きな魔法を使った疲労からか、大の字になり地面に寝そべっていた
はあ、少し疲れたな。
ここまで大きな魔法を使うのは久しぶりすぎた。
動けないかも。
デュエルが終わり、ホッとした顔を岸がしていた。
そこに、一人の女の人が近く。
「さすが首席。すごいね。あなたの魔法すごすて、惚れちゃった。」
「あ、ありがとう。」
岸は少し怯えながら返答をする。
というのも、岸がその女のことを見知らないということもあったが、彼女の見た目が派手なメイクに金髪のロングであったため、その姿に圧倒されていたらだ。
「それで、凄い凄いAクラスの首席にお願いがあるんだけど。」
女は謎のためを取る。
何だろうとても嫌な予感がする。
「今から私とデュエルしよ。」
金髪の女は笑顔で岸にそう言った。




