ウサギテイマーの悲喜こもごも
ベッタベタなVRMMOもの。
ウサギと言えばヴォーパルを出したいのですが、今回は無し。
どうも皆様こんにちは! ここは完全没入型VRMMOゲームの中です!
典型的な、自分に近い体型のキャラメイクしか出来ない系の、ファンタジーRPGですよ。
このゲーム1番の特長はソロでも安心安全! ゲーム開始時に全員が、最低一体はパートナーとして魔物をプレゼントされるのです。
プレゼントされる魔物は選択制で、決まった種類から選ぶ形式。 ワタシはウサギ一択!
ちなみに貰った魔物を育てるのも、魔物を最初の1体は無料で預かってくれる牧場へ預けるのも自由。
1パーティー最大6体。 つまりそう言う事です。
そんなゲームで、リアルでもウサギ好きなワタシは『ラビラヴィ』と言うプレイヤーネームを名乗り、今日も幸せなウサギ天国に埋もれています!
そうそう、ワタシのパーティー構成はこんな感じ。
ワタシ サポート兼用ヒーラー。
ワタシことラビラヴィですね。 主に回復支援と、ウサギ達のごはんに関するスキルや魔法ばかり揃えてます。
あとはみんなの荷物係として、アイテム欄拡張アイテムも持ってます。
容姿? 平均的ですよ? 身長も。
……どこ見て育ってないな~って言ってるんですか? セクハラですか? GMコールの準備はいつでも出来てますからね?
ロップ 物理アタッカー(バランスより)
最初に貰ったウサギちゃん! 最初はロップイヤーだったんですよ! でも進化を繰り返したら、耳が立ってツノが一本生えて、それが40センチを越え立派に伸びていって。
もはやツノが本体ですよ、これは。 ……最初の頃の名残は見る影もありません!
いえ、基本的なウサギの形のままですから、名残だらけと言われても否定しませんけどね!
でもまあ、アレコレ言っても可愛いのです! 暇があれば抱えてモフってクンカクンカして……うへへへへ。
あとこの子、周囲から《可能性の獣》とも呼ばれるのですが、なんでしょうね?
ドワーフ タンク。
あの有名なラビットさんの品種から頂いた名前でスッゴく可愛い!!
途中からぐんぐん大きく進化して行って、気がついたら体高1メートル80センチ、体長もそれ相応の巨大ウサギ!
狭くて背の低い場所へ入ろうとすると、その空間に問題なく入れるまで小さくなる、ゲーム的配慮がされた不思議ウサギでもある。
長距離移動をする最には、この子に寝そべるのが大正義。
固いのにウサギらしく速い、結構ズルい子なんですよ、ふふふふ。
アナ 純物理アタッカー。
地面を掘り掘りするのが好きなウサギさんっぽかったから、この名前ですね。
凄いんですよ、この子。 洞窟型ダンジョンの壁に、ワタシが通り抜けられる穴を掘るスキル持ちに進化!
お陰で洞窟荒らし~なんてそこらの人から言われて、ちょっとイヤな気分にさせられた事もありました。
穴掘りに特化した逞しい前足を持つ、ウサギらしからぬウサギ。 これもまた可愛いウサチャンなのです。
タイム 魔法アタッカー。
真っ白なウサギさん。 時計を持ってるあの子を連想して名付けしました。
珍しい魔力持ちでウサギ特有の素早さと合わさって、かなり強い子。
ロップの代わりなのか、今の種類へ進化する時にこの子の耳が垂れたのには、興奮して鼻血が出そうでした。
魔法で分身出来て、1羽でモフモフ祭が開催できます!
アンゴラ 斥候
パーティー唯一の長毛種! 真っ黒な毛で、クールなウサチャン!
可愛い耳と可愛くヒクヒク動く鼻で、敵やダンジョンの罠を見つける名手。
気配を消すのも得意で、アサシンプレイも可能に進化して、より頼れるウサチャンに!
持ってるスキルで分身出来て、この子もまた1羽でモフモフ祭が出来ます!
パーティー名は《アイムラヴィニット》
良い名前でしょ? ラヴィはもちろん、ウサギと愛のふたつをかけてます。
掲示板なんかでは、ウサギ狂いとかウサギ小屋とか、小学校の飼育係とかハンバーガー屋とか……色々言われてます。 訳分からないあだ名は、日本家屋。 どうしてそうなった?
でもそんなのどーでも良いのです! 可愛いは正義! 可愛い=ウサギ! つまりワタシ達は正義のパーティー!!
え? 現実を見ろ、お前のウサギ達は魔物であって、本当のウサギじゃない?
ハハッ、ウサギですよ? 何言ってるんですか、消しますよ?
こほん。 そんな我がウサウサパーティー《アイムラヴィニット》は、高難度でまだ攻略者の少ないダンジョンに挑戦してます。
ダンジョン自体は楽勝でした! アンゴラの大活躍で罠も敵も処理されて、みんなでお散歩気分。
アンゴラの解除方法はとても漢らしいんですよね。
そのままズバリ“漢解除”! 手持ちのスキルで解除出来ない場合、アンゴラの分身ちゃんに罠を起動させて強引に解除する!
……良いですよねぇ。 普段はどれだけ毛並のお手入れをしてあげてもクールなのに、必要とあれば強引な事もする、ワイルドな一面もあるのです。
はぁ、たまにはワタシへ強引に迫って「俺の体を許すのは、お前だけなんだよ」とかって…………おほおおぉぉぉおおっ!!! モフモフ! ワタシはウサウサモフモフのドレイですぅぅぅっ!!
…………失礼しました。
リアルではお断りです。 いつも無口で格好つけてて時々強引にって、ソレまんまガキですもん。
強引に出るのは、大体自分の思い通りにならないから「俺の言うこと聞けよぉっ!!」って駄々ですもん。
妄想の中だけですよ、あんなにクールでスマートな強引さって。 リアルでそんなのやる奴は大体直結厨ですからね(偏見)
って、全然話が進みませんね。
現在はダンジョンのボス戦真っ最中。
ここのボスはかなり大きい、オーガから進化した強敵です。 レベル差が10有りますし、油断したらすぐにやられます。
3メートルとか行ってますかね? とにかく上背があって、手に持つ鈍器でドンドコドーン!と地面を叩く、凶悪極まりない奴。
ダンジョン自体は楽だったのに、ボスは大変なとても詐欺臭いダンジョン構成です。
開始直後の雄叫びをされた時には冷や汗がどっと出ました。
だってウサちゃん達の耳は良いですから、雄叫び1発で怖がったり気絶しちゃったり。
建て直しが大変でしたよー。
他にも地団駄を踏んだり、サッカーボールキックしてきたり、掴もうとしてきたり。 それで一定間隔かな? で、また雄叫び。
攻略者の少ないダンジョン=情報がまだ揃っていない。
つまりこの大きいオーガに判明していない情報が有るかもしれない。
そんな訳で苦戦するのも必然でして、開始20分でもまだオーガの総体力から見て3割削れていれば良い方な戦況です。
有効打があまり打てていません。
鈍器を振りかざせばドワーフへ指示して、振り下ろす前に飛びかからせて勢いを止めさせる。
オーガの片足が上がれば、軸足になっている方へ攻撃集中してみたり、踝や膝の皿を狙ってみたり、弁慶だってやりました。
それで出来たのはごく軽微なノックバック、敵の行動キャンセルが関の山。 しかも成功率は低い。
そんな感じで焦れてイライラしてきたし、つい叫んでしまったのです。
「あんなヤローは小指をタンスにぶつけて、悶絶ゴロゴロしてしまえ!」
って。
そうしたらですね? 近くにいたロップの目がギラリと光ったのですよ。
ちょっと様子がおかしいので、ロップにどうしたの? って呼び掛けても反応してくれず、とても悲しかった。
ウサギにシカトされる事はよく有りますが、それはリアルの話。 ゲーム内なら、呼びかければ絶対にこっちを見てくれるはず。
なのに見てくれない。 見てくれない理由はなんだろう、そうロップを観察していたら、急にオーガへ突進を始めました。
なんの方策無しに突撃なんて危険極まりない!
ワタシは思わず「ロップーーーッ!」と叫びましたが、やはり効果無し。
……いや、耳が片方こっち向きましたねっ!
これはロップ独自の策でしょうか?
あとピョコピョコするウサギ走りのおかげで、後ろから見てると可愛いまんまる尻尾がプリプリしててとってもプリティー!
知ってますか? あの尻尾、つまんで引っ張ると伸びるんですよ? ぐいーんって。
それが何かやたらと面白くて、夢中で繰り返し引っ張ると嫌われますのでご注意下さい(経験者は語る)
いやいや、変な事を考えている暇な時じゃないですね。 もう全てロップに任せます。
その気持ちを込めて「行っちゃえ、ロップゥ!」なんて叫んでみたら、ロップが応えてくれたかのように、赤いオーラを纏いました!
アレ何ですかね? ちょっと禍々しさもありますし、ボスの発狂モード? いや、でもなぁ。
ぐおおぉぉぉおおおんっ!!
ゴチャゴチャ考えていたら、今まで全然聞いたことの無いオーガの声が!
慌ててそっちを注視すると、なんとロップの長いツノがオーガの小指にブッ刺さっているではないですか!!
アレですか!? ワタシのあの愚痴を聞いて「オレはやるぜ オレはやるぜ」って奮起したんですかね?
……それにしても凄い痛がり様ですね。 何もかも放棄して、うずくまって小指をおさえてますよ。
スネも相当痛いはずなのに、コイツはそれより小指ですか。
ともかくこれはとても大きな隙です。 ドワーフ、アナ、タイム、アンゴラ。 全員で総攻撃開始。
ロップも小指からツノを抜き取り、弱そうな所をツンツンチクチク。
更に動きを封じ込めるべく、即興ですが効きそうな次の一手を指示しましょうか。
「アナちゃんっ! オーガの下に穴を掘りましょう!」
うずくまっていたオーガを殴っていたアナちゃんが、ワタシに従って地面へ向かいます。
そしてまたもやロップです。 再び目が怪しく光りました。
なにかやらかす気ですね? じっくり見させてもらいましょうか。
「…………オーガの背後?」
はい、ロップがオーガの後ろへ回り込みました。
そして再び赤いオーラ。
飛びかかる構えで、ぐいっと身を引いて。
ぴょんっ!
ぐおおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおんっ!!!
「うわぁ……」
ロップも穴を掘りました。
もちろん掘られたのは地面ではなく、オーガの胴体。
しかも長いツノの70%は沈みこんでますね。
今の一撃で、オーガの残り体力およそ半分。
……後でロップを本気でキレイキレイしないと、抱っこしたくありません。
と言うかですよ、あんなのいつ覚えたんですか? ちょっと身震いします。
元凶を探さないと。 もし見付けられたら、色々剥ぎ取って存分に反省を促して、解ってもらえたらごめんなさいでウサギのエサ行きにしないと……ぶつぶつぶつ。
以降は終始こちらペース。
オーガを穴に落として、1段低い状態になり、ロップに怯え腰が引けながら常時警戒。
そんなオーガでは有効打ひとつ出せず、時折ロップに泣かされ、倒れました。
倒れたオーガさんの顔が、なんかホッとしてた様に見えたのは、なにかの見間違えでしょうね。
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それで今回のリザルト!!
色々手に入れましたが、1番嬉しかったのはロップが進化した事!
そうです! 大きなオーガを討伐したと思ったら、ロップが進化するってアナウンスされたのです!
その結果は…………。
ロップの種族が《いちごうさぎ》なんて、とても可愛いのになったのです!
それに伴って、新しい攻撃スキルも取得!
元々外見は茶色だったけど、微妙に葉っぱみたいな緑色が交じって、ツノが赤くなりました!
しかもそのツノに大きな変化が!
とても長くて立派だったツノが、イチゴサイズに小さく可愛く!! これで顔面スリスリをする時にツノへの注意が減って良い感じに!
うひゃ~~ん♪ 早速スリスリモフモフ可愛がるぞーーーっ!!
なんて出来るかぁぁぁぁっっ!!
イヤだよ! まだ忘れてないよ! オーガにしたアレを!!
だから待っててね! そんな構ってビーム出さないで! ワタシも悲しいの、解って!?
拠点まで帰って、みんなをキレイキレイしてから、思いっきり可愛がるから。 ね?
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拠点までの帰り道に、新しい攻撃スキル【いちご畑】を使ってみました。
感想ですが、以後封印して絶対に使いたくありません。 可愛いスキル名なのに、なんであーなった。
なんですかね、あれ。
実際のいちご畑はあんなに赤くなりませんよ。
ほとんどがいちごの葉っぱで、いちごの赤い実は点々としか無いんですよ。
なのに一面真っ赤になりました。
ロップも真っ赤になりました。
敵の返り血で。
帰ったらロップは丁寧に、入念に、全てを忘れられる様に、全部キレイキレイしないと。
キレイキレイしないと、ロップを可愛がれない。
キレイキレイに、キレイキレイじゃないと、キレイキレイなロップじゃないと…………。
技名:【いちご畑】
説明:対象の敵を中心とした、円形の範囲攻撃。
対象の相手へ攻撃が命中するとほぼ同時に、範囲内の敵へダメージ。 その姿はまるで、大豊作のいちご畑。
昔読んだラノベに、英語にしたいちご畑の技が有りまして。
イメージ通りの真っ赤っか。 いちご大豊作。
その衝撃を久々に思い出しまして、いちご=可愛い!なんて誤解だよ(ゲス顔)
を地でやってみようかと、こうなっちゃったイチゴ県民。
あ、いちごのフォローをしますね。
いちごを育てるハウスって収穫時期になると、とても甘い香りがするんですよ。
前を通るだけでふわぁ~って。 アレ卑怯。 こっそり入って、何粒かもらいたくなる誘惑の強さと言ったら、もう!
ちなみにいちごの旬は、クリスマスとかで騙されがちですが、実は春です。
春が食べ頃なのです! 遅くても3月まで!
4月まで食べられる品種もあるけど、それはとても少数!
さあ、ハウスから漂う魅惑の香りに負け、いざ観光農園のいちご畑へお越し下さいませ!!(本人はいちご農家では有りません)