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【コラボカフェ開催】ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する【アニメ化しました!】  作者: 雨川 透子◆ルプなな&あくまなアニメ化
〜7章3節〜

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334/335

300 決着の付け方


 ザハドが一気に間合いを詰めて、そのままヨエルの懐に入る。後退は前進よりもバランスが取りにくい、その一瞬の隙を突かれて、ヨエルの呼吸が乱れた。


(――あのときも、私を庇った所為で)


 騎士の人生における最期の交戦で、ヨエルが亡くなった瞬間が過ぎる。


(誰かを守りながら戦うことは、ヨエル先輩にとっての致命的な『唯一の』弱点。それを克服するためとはいえ、アルノルト殿下とザハドを相手取るなんて、やっぱり……)


 だが、リーシェは目をみはる。

 その極限の状況から、ヨエルが更に身を沈めたのだ。


「……まだ……!」

「ほう!」


 地面に手をついたヨエルの頭上を、ザハドの剣が掠める。ヨエルはそのまま、沈み込んだ分の反動を利用するかのように、驚異的なしなやかさで体勢を直した。


(先輩が、狙うのは)


 ヨエルが狩りで地を蹴る獣のように、低い位置から間合いへと飛び込む。

 その先に立ちはだかるのは、アルノルトだ。


「遊んでよ、『アルノルト殿下』……!」


 アルノルトが僅かに双眸をすがめた。ヨエルの剣が真っ直ぐに、アルノルトの左胸を突こうとする。


「――――……」


 かん! と短い音がした。


 アルノルトが木剣を振り上げて、ヨエルの剣先を逸らしたのだ。ヨエルを捉えるのは容易ではない、しかしアルノルトは的確に一撃を加えることで、その突撃の軌道を逸らした。


 その上で涼しい顔をして、騎士たちに告げる。


「ザハドを留めろ。――動きも学べ」

「はっ!」


 騎士たちがザハドを包囲するが、その動きを砂漠の兵たちが阻んだ。けれどもザハドを筆頭に、その場の剣士たちの注目は、ふたりの手合わせに注がれる。


(アルノルト殿下と、ヨエル先輩の一騎打ち!)


 アルノルトが半歩だけ身を退いて、ヨエルの一撃を淡々と躱した。

 ヨエルもすぐさま対応する。凄まじい体幹と瞬発力により、くるんと演舞のように身体を回した。かと思えば軽やかに動きを変えて、今度は頭上から振り下ろす。


 再び木剣がぶつかりあった。


「……これも防ぐ、なら……」

「…………」


 ひゅっと風を切る音と共に、ヨエルが後ろに飛び退いた。そのまままた踏み込んで、アルノルトに斬り掛かり、弾かれることを繰り返す。


 木剣同士が互いを弾き合うさまは、土砂降りの雨垂れを思わせた。アルノルトとの手合わせが始まって、ヨエルの剣技は一層研ぎ澄まされているようだ。


 アルノルトから、決して視線を外さない。


「あの少年騎士、ヨエル殿と言ったか?」

「アルノルト殿下と、ああして何度も剣を交えるお力があるとは……!」


 騎士たちが感嘆の声を上げる中、リーシェの脳裏に騎士人生の戦いが重なる。


(凄まじい攻防。アルノルト殿下も本気では無いとはいえ、決してヨエル先輩を軽んじていらっしゃらない。けれど)


 アルノルトと切り結んでいたヨエルが、体勢を立て直そうとしたときだ。

 鮮やかな軍服の装飾が、太陽のように美しく翻る。ヨエルがはっと息を呑んで、アルノルトから視線を外した。


「ヨエルさま!!」

「!」


 表情を変えないアルノルトが、ヨエルの剣を弾き飛ばす。


「あ…………」

(集中が切れたんだわ! 私を守ろうとすると、意識が全てこちらに剥がれる。ヨエル先輩はやっぱりまだ、守りながらの戦いが……)


 ザハドの位置は、リーシェの数メートル前まで近付いている。ガルクハインの騎士が迫るも、ザハドは豪胆な太刀筋でそれを払い、楽しそうに笑った。


「失礼する、リーシェ殿!」

「!!」


 反射的に日傘を構えそうになる。けれど、ここでリーシェが抵抗することは出来ない。


(獲られ…………っ)


 ザハドに手首を掴まれると覚悟した、そのときだ。


「…………!!」


 風を切る、短い音がした。

 それと同時、誰かに腰を強く抱き寄せられる。顔を上げれば、右腕の中にリーシェを抱き留めたアルノルトが、左手に木剣を構えていた。


「…………ははっ」


 アルノルトの剣尖は、ザハドの眼前に突き付けられている。


「まさか、あの距離を一気に詰めてくるとはな」


 リーシェが落としてしまった日傘が、風に煽られて転がった。

 アルノルトは、そこでぐっと一層強くリーシェを引き寄せて、ザハドを見据える。


「――――……」

「見事だ。アルノルト」


 その敗北を受けたザハドが、心から楽しそうに目を眇める。

 リーシェという『戦果』は、文字通り、アルノルトの手中に入ったのだ。


(まったく、動きが読めなかった……)


 目の前で起きたことを呑み込んで、リーシェは短く息を吐いた。


(アルノルト殿下は、本気を出された訳ではないわ。それでもたった一瞬、攻勢に転じられただけで……)


 ザハドよりも先んじて、リーシェに触れたのだ。


「アルノルト殿下……」

「…………」


 傷の痛みは、大丈夫だっただろうか。

 そんな想いを込めて名前を呼べば、木剣を放ったアルノルトが、想像もしていない行動に出る。


「え……」


 リーシェの首元に揺れるエメラルドの首飾りを、指で掬った。

 そうして手繰り、中央にあるエメラルドの飾りを、アルノルト自身の口元へと寄せる。


「!?」


 そうして、小さくキスを落としたのだ。


「…………ちゃんと触れたぞ」

「あ、あの、アルノルト殿下……っ」


 アルノルトの腕の中に隠されている所為で、他の誰にも見られていない。

 リーシェの瞳にだけ映る光景の中、リーシェの首飾りにくちびるを淡く触れさせたまま、アルノルトが上目遣いで宣言してくる。


「――――俺の勝ちだな?」

「〜〜〜〜〜〜……っ!?」


 ようやく事態を飲み込んで、耳まで熱くなるのを感じた。

 アルノルトは、そのままリーシェのうなじへと両手を回すと、ザハドの着けた首飾りの留め具に触れる。何をしようとしているのか察して、慌ててアルノルトを間近に見上げた。


「首飾りへのキスも、外していただく必要も無いのですが!?」

「そうか」

「ひわ……っ」


 アルノルトの指が、首筋に触れるのがくすぐったい。

 リーシェが身を竦めている間に、アルノルトは細い鎖を外してしまった。そうして、今度は手の中に握らせてくる。


(勝利条件の説明が、伝わりにくかったのかしら……!!)

「……それで?」


 アルノルトが、当然のように尋ねてきた。


「今度は、何を企んでいた」

「!」


挿絵(By みてみん)

ルプななコラボカフェ開催中!

2026年2月4日〜2月23日まで、東京池袋にて開催です!


詳細▶︎

https://emocafe.jp/collaboration/rupunana/

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― 新着の感想 ―
ちょっと前まで不機嫌だったのに、リーシェをからかうことで機嫌持ち直すアルノルト好きです(笑) リーシェは良い意味でも悪い意味でもダメージと羞恥が凄そう(笑) ふたりの世界状態をザハドは面白がって見てそ…
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