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【コラボカフェ開催】ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する【アニメ化しました!】  作者: 雨川 透子◆ルプなな&あくまなアニメ化
〜7章3節〜

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290 恐れながらも申し上げます!

本日12月28日は、アルノルトの誕生日です!

 アルノルトの率いる軍勢によって、リーシェの守るべき国が蹂躙された。

 王は討たれ、目の前で両親を喪った王子たちを逃がすために、なんとしても守らなければならなかった。


 あのときリーシェが狙ったのは、アルノルトの首と心臓である。

 けれど、そんなことを顔に出すつもりは毛頭ない。


(フロレンツィア陛下は、本当に『アルノルト殿下を殺したいか』とお尋ねになりたい訳ではないわ。なんらかの意図をお持ちの上で、私にこの刃を突き付けた)


 フロレンツィアは相手を見定めている。

 どうすれば効率的に他者を揺さぶり、自分の望む結果が得られるのか、それを奥底まで見通しているのだ。手のひらに乗せ、指先でつついて、美しく鮮やかに微笑んでいる。


 それならば、リーシェの返し方は決まっていた。


「……三ヶ月前、故国で初めて殿下とお会いしたあのときから、とても大切にしていただいています」


 リーシェはカップをテーブルに置いて、膝の上にそっと両手を重ねる。

 口にするのは、心からの言葉だ。


「『求婚の日から』今日までの間、アルノルト殿下に無体を働かれたことも、ひどい意地悪をされたこともございません。……やさしすぎて、怖くなってしまうくらいに」


 少しだけ目を伏せて、彼の指に触れられる瞬間を思い出す。

 リーシェが泣いてしまったとき、アルノルトは親指でまなじりを撫でて、泣くなと願い、あやしてくれた。


 アルノルトのことが、リーシェはとても愛おしい。


「アルノルト殿下に二心を抱く、そのような動機すら持ち合わせておりません。私があのお方を殺めたいと、そう希うことがあるとしたら、たとえば」


 フロレンツィアは、アルノルトの幼い頃を知っている。


(私に、こんな疑念を抱かせたいのだわ。このお方も……)


 アンスヴァルトとザハドに問われた言葉を思い浮かべながら、リーシェは挑むように微笑んだ。


「『実は殿下と求婚以前に出会っていた』と、そんな事実が隠されていた場合でしょうか」

「――――……」


 フロレンツィアが、その双眸を僅かに眇める。

 彼女のささやかな変化を前に、リーシェはすぐに冗談を翳した。


「なんて。有り得ない仮定を想像する遊びは、胸が躍りますね」

「……ふふ」


 フロレンツィアは、機嫌が良さそうにくちびるを動かす。


「やっぱりあなた、楽しい子ね」

「まあ。勿体無いお言葉です、陛下!」


 その鮮やかな笑みすらも、場の空気を掌握するための武器なのだ。

 リーシェは再びカップを手に、敢えて素知らぬ顔をする。


「先ほどのご質問は、戯曲か何かの一節ですか? 何らかの比喩表現だと分かっていても、どきどきしてしまいました」

「驚かせたかしら。だけど、あなたのような目をした子には、取り繕う意味があまり無いものだから」


 フロレンツィアは、美しい所作でお茶を飲み干す。


「私ね」


 そして、柔らかな声で言った。


「この国に嫁いですぐ、自分の子は成さないと決めたの」


 その言葉に込められた意味を測るため、リーシェは静かに傾聴する。


「もちろん故国は、私が皇位継承権を持つ男児を産み、ガルクハインに於ける地位を盤石にすることを望んだ。けれど、無意味でしょう?」

「無意味、とは……」

「だって一目で分かったわ。……幼い子供とは思えない聡明さ、素養と胆力。その振る舞いのすべてが、物語っていたもの」


 フロレンツィアのまなざしが、リーシェのことを真っ直ぐに射抜いた。


「――アルノルト皇子以外の『次期ガルクハイン皇帝』など、存在しない」

「…………」


 アルノルトが皇帝の後継者、つまりは皇太子であることに決まったのは、フロレンツィアが嫁いだ後なのだ。

 彼女が口にした『皇子』という呼び方に、リーシェはそれを窺い知る。


「だからこそ、正妃である私が他に男の子を産めば、複雑な問題が出てくるでしょう? 争いの火種を消すためにも、母にはならないことを選んだわ」

(……本来なら)


 フロレンツィアが簡単に口にした事実は、とても考えられないことだ。


(アンスヴァルト陛下の『人質』である花嫁に、そうした選択権は与えられない。……フロレンツィア陛下だけは、規格外だということ)


 ガルクハインに並ぶ軍国の、王女だった女性。

 フロレンツィアは優雅に微笑み、リーシェに告げる。


「代わりに私が果たすべき役割のひとつは、城内の平穏を監視すること。たくさんの人を見てきたから、ここをめちゃくちゃにしちゃいそうな女の子が嫁いでくれば、すぐに分かるのよ」


 空になったティーカップを、美しい指先が摘み上げる。

 そうしてフロレンツィアは、その手を宙で離すのだ。


「あなたはきっと……」

「!」


 ぱりん! と高い音が響く。



「この国を傾かせてしまえる、そんな花嫁だわ」

(あ……)



 石畳に落ちたティーカップが、呆気なく割れて転がった。


 それを見下ろしたリーシェの向かいで、フロレンツィアはゆっくりと扇子を広げる。


「誤解しないでね。私、傾国(それ)を悪いことだとは言っていないの」


 フロレンツィアの胸元で、眩い光が瞬いた。

 その光は、周囲のあらゆるものを飲み込んでしまいそうなほどの輝きを放つ、大粒のダイヤモンドによるものだ。


「だから聞かせて。望んでいることは何かしら? 可愛らしくて、恐ろしいお嬢さん」

「……陛下」

「私に出来ることならば、叶えてあげたって構わないのよ」


 リーシェは、ゆっくりと立ち上がる。


「……それでは、お言葉に甘えさせてください」

「いいわ。なあに?」

「いまの私が欲しいものは……」


 ドレスの裾を束ねながら屈み、にこりと笑ってフロレンツィアに告げるのだ。


「こちらの割れた、ティーカップです!」

「………………」


 ぱちりと瞬きをしたフロレンツィアが、その笑顔を初めて少しだけ崩す。


「……なんですって?」

「早速こちらを頂戴しますね。続いてお許しいただけるのならば、恐れ多くも陛下に進言させていただく栄誉を」


 リーシェは大きな破片の上に、小さな破片を重ねてゆく。後で誰かが怪我をしないよう、慎重にすべてを拾い集めた。


「このように物を壊してしまわれる演出は、お勧め致しかねます。せっかく武器の持ち込みを禁じられ、陛下の安全が保たれている場所ですのに……」


 立ち上がり、大きな破片を一枚選ぶ。

 そしてリーシェは、その尖った一角が分かるよう、自身の前に翳してみせた。


「――このような『凶器』を、ご自身で作り出されるなんて」

「…………」


 人を傷付けられる欠片を手に、リーシェはにこりと微笑んでおく。

 心の中に満ちるのは、フロレンツィアへの大きな不服だ。


(私への警告をするために、美しいティーカップを壊す必要などなかったわ!)


 端的に言えば、リーシェは少し怒っている。

 それは、フロレンツィアからの尋問めいた問い掛けにではなく、カップがわざと割られたことにだった。






挿絵(By みてみん)

ルプななコラボカフェ開催決定!

2026年2月4日〜2月23日まで、東京池袋にて開催です!


詳細▶︎

https://emocafe.jp/collaboration/rupunana/

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― 新着の感想 ―
やはり肝が座っているリーシェ
Hello, I am writting in english because I am not able in japanese. I want to thank you a lot for th…
  【謹賀新年】 明けましておめでとうございます。 今年も宜しくお願いします。        2026/1/1・元日(09)
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