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【7章連載中】ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する【アニメ化しました!】  作者: 雨川 透子◆ルプななアニメ化
〜7章2節〜

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281 ぜったい秘密にしたいです!


(昼間の謁見で、アンスヴァルト陛下がお尋ねになったこと。私とアルノルト殿下が、幼い頃に出会ったことがあるかという問い掛け……)


 その意味が、リーシェにはやはり気に掛かる。


(あのとき私が疑問に思ったことを、アルノルト殿下も察していらっしゃるはずだわ。どんな探り方をしたとしても誤魔化しきれるはずもない、それでも)


 リーシェは両手で小さな酒杯を持ったまま、アルノルトを見上げた。


「ザハド陛下と、たくさん一緒に遊びましたか?」

「なぜ」

「……小さな子供とは、同じくらいの年齢の子供と会えば、連れ立ってお出掛けをしたりするものなのです」


 アルノルトにそうした説明が必要なことを、リーシェはとてもさびしく思う。

 一方でザハドは笑い、アルノルトのことを親しげに親指で指した。


「夜に皇城を抜け出したときは、面白かったな。アルノルト」

「関わるなと言ったのに、お前が無理矢理についてきただけだろう」

「?」


 リーシェが首を傾げると、ザハドはくつくつと喉を鳴らし、悪戯を告白した。


「少年の時分、こいつが城下で身分を隠し、ならず者の中に出入りしていたのをご存知か?」

「以前、少しだけお聞きしたことがあります。十歳の頃のアルノルト殿下は、かなり大規模な大捕物を仕掛けられたとか……随分とやんちゃをなさいましたね?」

「あれは俺の判断ではない。オリヴァーが悪い」


 アルノルトはさほど関心がなさそうでありながらも、従者への抗議を口にする。これもザハドに対する振る舞いと同様に、ある程度の近しさを感じるものだ。


「奥方。アルノルトが子供の頃、市井の者のふりをして逮捕劇を繰り広げたのは、決して一度や二度ではないぞ」

「え!!」

「いや待てよ? 俺と盗賊狩りを行ったときは、立場を伏せていた訳ではなかったな」

「とうぞくがり」


 リーシェがぱちぱちと瞬きをすれば、ザハドは揶揄うようにアルノルトを見る。


「無言で俺のもとに馬を引いてきて、珍しく早駆けにでも誘われたのかと思ったが。森についてみれば、こいつは真顔で隊商に扮した賊を指差して、『十分で終わらせる。生け捕りにしろ』とだけ言い捨ててなあ」

「それは少なくとも、他国の王子さまをお連れして行う遊びではありませんね!?」

「他国の王子を無駄に滞在させているよりは、よほど有意義な活用方法だろう。騎士の兵力を割かずに済む」

「うむうむ。森での戦闘は新鮮で、実に楽しかった」


 ザハドは気品のある仕草で酒を煽りつつ、懐かしそうに頷いた。


(光景が目に浮かぶかのよう。アルノルト殿下は小さな男の子というよりも、その頃から『皇太子』で……ザハドだって、子供らしく無邪気に楽しみながら、統治者としての振る舞いを果たしている)


 子供らしく過ごすことの出来た時間など、ふたりには存在しなかったのだろう。


「愉快だった話といえば、ガルクハインで開かれた剣術大会だな。俺とアルノルトがそれぞれ勝ち残り、偶然にも決勝で戦うことになったのだが、直前でオリヴァー殿に見付かってしまい……」

「お待ちください、ひょっとしてそれもお立場を隠しての参加ですか!? しかもアルノルト殿下だけでなく、ザハド陛下まで!」

「なあアルノルト。あのときは結局、大会を采配する貴族の不正を暴くついでに、『今後もお前に剣術の師範は必要ない』という証明をしたのだったな」

「さあな」


 アルノルトは恐らく、自分の話をすることに一切の興味がない。

 それでも続けてくれるのは、リーシェが知りたがっているからだ。


(どのお話も詳しく聞いてみたいけれど、オリヴァーさまがお傍にいらしてからの出来事……。せっかく九歳より幼いアルノルト殿下のことを知るザハドが、ここに居るのだから)


 語らいの場を利用して、もっと踏み込んでみるべきだろう。


「ところでザハド陛下。お小さい頃の、アルノルト殿下は……」


 リーシェが探りたがっていることを、アルノルトに見抜かれているのは分かっている。


「ええと、その」


 それでも、純粋に知りたい気持ちも嘘ではないと伝えたくて、リーシェは素直に口にした。


「――――今と同じくらい、お可愛らしかったですか?」

「………………」

「は?」


 眉を顰めて尋ね返したアルノルトと、目を丸くして沈黙したザハドが、同時にリーシェのことを見る。隣に座ったアルノルトを見上げて、リーシェはきょとんと瞬きをした。


(……おふたりとも、どうしてそんなお顔で私を……)

「………………」


 物凄く物言いたげなアルノルトに、はっとする。


(……今も可愛いと思っているのが、ついつい口に出てしまったのでは!?)


 自覚して、一気に頬へと熱がのぼる。


「ご……ごめんなさい!! お嫌だったかもしれないですが、違うのです!! 決して生意気な意味で申し上げたのではなく、本心で……!! 人として、お可愛らしいと、そう思っていて……!!」

「リーシェ。分かったから、焦らなくていい」

「十九歳のアルノルト殿下も時々あんなに可愛いのですから、お小さい頃はどうだったのかが、気になってしまい……!! それだけで、本当に深い意味は無く!!」

「………………」

「ふっ、くく…………はははははは!! いいではないか、もっと聞きたい! 奥方こそ実に愛らしいお方だ、なあアルノルト!」

「お前は当分黙っていろ」


 アルノルトとザハドの会話を聞きながらも、自分自身に言い聞かせる。


(上手に振る舞わないと、私がアルノルト殿下を好きだってバレちゃう……!! 『あの約束』を果たすまでは、恋を表に出しては駄目だって誓ったのに)


 リーシェに救いの手を差し伸べてくれたのは、やさしく背中を撫でてくれるアルノルトではなく、大笑いしていたザハドだった。


「可愛かったぞ、アルノルトは。背丈などこのくらいの大きさでな」

「…………!!」


 床から一メートルくらいの高さを手で示されて、リーシェの左胸がきゅうっと締め付けられた。



「……かわいい……」

「…………あのな」

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著者名:雨川 透子


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― 新着の感想 ―
Hi! I've been reading this for very long time all the way from Turkey and I have to say these chapte…
可愛いし好きバレ隠すの無理よ 陛下は今も昔も可愛い
カワイイ1000%っすわ。
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