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【7章連載中】ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する【アニメ化しました!】  作者: 雨川 透子◆ルプななアニメ化
〜6章〜

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234 変わる景色

本作ルプななのアニメ化が決定しました!

あとがきて、改めてお礼を申し上げさせていただきます。本当に本当に、ありがとうございます!



 アルノルトの言葉に、息を呑んでしまう。


 海の色をした双眸に、ランタンの灯りが映り込んでいた。アルノルトのまなざしと、睫毛をくすぐるように辿る指に、とてもやさしく甘やかされる。


「それ、は……」


 どう答えたらいいのか困ってしまい、リーシェは慌てて俯いた。心臓が早鐘を刻んでいて、頬が熱を帯びる。


(何よりも美しいのは、アルノルト殿下の方なのに)


 けれどもせっかくアルノルトが、美しいと評するものを見付けたのだ。

 それをリーシェに教えてくれた。そのことを喜びたい気持ちと、とても気恥ずかしい感情がぐちゃぐちゃに混ざってしまう。


「リーシェ」

「……っ」


 顔を上げられなくなったリーシェのことを、アルノルトは不思議に思っているらしい。リーシェを恥ずかしがらせるつもりではなく、恐らくは何気ない言葉だったのだ。


 耳まで熱くなっているのを隠すため、アルノルトと繋いでいない方の手で、片耳だけでも緩く押さえる。彼の所為でこうなっていることを伝えるため、リーシェはなんとか口にした。


「……顔が赤いので、見たら駄目です……」

「…………」


 必死の思いでそう告げると、アルノルトにじっと観察されている気配がする。続いてあろうことか、アルノルトの指先でふにっと頬を押された。


「ひゃ!」


 思わず肩が跳ねてしまう。顔が赤いのを見ては駄目なのだから、そうやって頬の温度を確かめるのも駄目に決まっていた。


「もう、アルノルト殿下……!」


 抗議の意を込めて見上げたものの、リーシェはそこで再び目を丸くすることになる。


「っ、は」

「!」


 リーシェの熱を確かめたアルノルトが、楽しそうに笑ったのだ。

 いつもより少しだけ幼く見える、機嫌が良さそうな表情だった。それから何処か意地悪な声で、再びリーシェの頬に触れる。


「――……確かに赤い」

「〜〜〜〜……っ」


 きゅうっと胸が苦しくなる。アルノルトがこんな笑い方をするのは珍しくて、今度こそ直視できず俯いた。


 心臓が跳ねるのと同時に言葉を失い、思考が熱くてぐずぐずに溶ける。アルノルトの手に触れられると上手に息が出来ないのに、離れてほしくなくて困った。


 いっそのこと背を向けたいくらいだが、指同士を絡めるように手を繋がれているので、リーシェからは逃れようがない。


 もちろんのこと、自分から解くことだって選べないのだ。


(……好きな人がいるって、大変……!)


 途方に暮れて、ぎゅうっと目を瞑る。するとアルノルトが、俯いたリーシェの頭をぽんぽんと撫でてくれた。


(けれど)


 アルノルトに与えられるものを前に、きちんと分かっていることがある。


(この感情を、いまは押し殺さないと駄目)


 自分に言い聞かせ、リーシェはひとつ吐息を零した。


(アルノルト殿下をお止めするために。それから、あのときに立てた誓いのために……)


 自身の左胸にそうっと指を置く。かつてアルノルトの剣に貫かれた心臓は、この人が恋しいと疼いていた。


(きっと少しずつ世界は変わっている。アルノルト殿下に生まれた変化が、必ず新しい未来を形づくる……)


 ゆっくりと目を開き、アルノルトの手を繋ぎ返した。


「……これからも少しずつ、教えていただけますか?」


 とても恥ずかしかったけれど、勇気を出しておずおずと顔を上げる。


「アルノルト殿下が、私に見せたいと思って下さったものを」


 そう願うと、アルノルトは世界で一番美しい色の双眸でリーシェを見据え、約束をしてくれた。


「――ああ」

「……っ」


 リーシェがどれほど嬉しいのかを、形にするための言葉が見付からない。震えそうになる声を誤魔化して、泣きたくなるほどの喜びの中で微笑む。

 そして、確かな希望に胸を弾ませた。


(いまのアルノルト殿下であれば、戦争以外の方法も選んでくださるかもしれない)


 アルノルトと婚約したばかりの頃は、途方もなく難しい方法に思えていた。けれどもいまは、あの頃とは変わっているはずだ。


(このお方にどんな目的があろうとも。お父君を殺すことなく、戦争を起こさずに世界を変える方法があるのだと、そんな考えをきっと分かっていただける……)


 リーシェはアルノルトと指を繋いだまま、再び運河のランタンを眺めて目を細める。


「この美しい祈りが、ずっと絶えずに続いてほしいです」

「…………」


 それこそ祈るような感情で、リーシェは呟いた。

 けれどもそのとき、ふとした違和感を覚えてしまう。リーシェがアルノルトを見上げると、彼の美しい横顔が目に入った。


 アルノルトは運河のおもてを眺め、静かな声で紡ぐ。


「――そうか」

「……………………」



 その瞬間、リーシェの心臓が凍り付いた。



(冷たい、まなざし)


 何気ないただの言葉であると、そう判断することが出来ていればよかった。


 リーシェの願いに対して、アルノルトが相槌を打っただけ。

 一見すればそれだけの出来事なのに、決してリーシェに同意することのないその返事と、彼の双眸に宿る微かな殺気で察してしまう。




『皇帝アルノルト・ハインは、国で最も大きな運河を、戦争に特化した構造に作り変えていたそうだ』




 アルノルトが未来で起こすことを、リーシェは確かに知っていた。


『父殺しの直前に。――世界中に、侵略戦争を仕掛けるために』

(アルノルト殿下の意志は)




 リーシェの中で、生まれた希望を掻き消すほどの強い確信が生まれる。


(父殺しと、その果てにある戦争の目的は。いまもまだ、なにひとつ変わってなどいないんだわ――……)






本作ルプななのアニメ化が決定しました!

夢のようで、今でもまだ信じられない気持ちでいっぱいです。応援してくださった皆さま、本当にありがとうございます!!


以下の公式X(Twitter)にて、リーシェとアルノルトの声優さんや、お声が聞けるPV、キービジュアルなどの最新情報が公開されています。


https://x.com/7th_timeloop



リーシェとアルノルトが動いて喋るPVです! 夢のよう……本当に本当に、ありがとうございます!

原作小説も、少しでもお楽しみいただけるようにもっともっと頑張ります。

これからも、よろしくお願いいたします!


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― 新着の感想 ―
[良い点] アニメ?!おめでとうございます
[一言] アニメ化おめでとうございます!! 楽しみにしています!! そして260部しょっぱなから甘っあまのアルリシェ!! きゃ〜!! (*≧艸≦) リーシェの嬉しい気持ち、たかまる想いがひしひしと伝わ…
[良い点] アニメ化おめでとうございます! リーシェとアルノルトの動く姿が見られる! めちゃくちゃ楽しみです! どの辺りまで映像化されるのかな。 是非2期、3期と続いて欲しいです。 [一言] 先…
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