表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【アニメ化】ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する  作者: 雨川 透子◆ルプなな&あくまなアニメ化
〜6章〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
232/360

206 この再会は想定外ですが!?

(な、なんでこの人がこんな所に!? いえ、この街には居てもおかしくないどころか、目的のひとつはこの人に会うことだったのだけれど……!!)


 だが、考えるのは後だ。

 リーシェはその人物の頬をぺちぺちと叩き、過去人生と同じように声を掛けた。


「お……起きて下さい。おはようございます、朝です!」

「……朝……?」


 むにゃ、と眠そうな声がして、瞼が開く。

 一見すると茶色の瞳が、ぼやぼやとリーシェのことを見上げた。


 そしてその人物は、簡素なドレス姿でのそりと身を起こしながら、大きなあくびをして言うのだ。


「ふわあ……。ガルクハイン、もう着いた?」

「到着しています。していますし、詳しくお話を聞かせていただきたいのですが、いまはひとまず健康状態です! 痛むところや吐き気や不調は!?」

「んんん、無……。捕まってる間、暇で眠くて……」

(あ、相変わらずだわ……!)


 そのとき、ばたばたと荒い足音が聞こえてくる。


「あの黒髪の男は化け物だ、相手にするな!」

「船を捨てよう、ばらばらに散らばって逃げるぞ!! 『荷物』は置いて行け、どうせ先に着いた船が他の商品を準備している!!」


 船乗りたちの張り上げた声に、リーシェは顔を顰めた。


(いくらアルノルト殿下でも、別方向に逃げ出す敵を同時には相手にできない)


 それはリーシェも同じことだ。このような場では単純に、人手が必要となる。


 リーシェはドレスの裾に手を伸ばし、太ももにベルトで固定した短剣を抜いた。そして、目の前の人物に尋ねる。


「何処も痛むところは無く、眠くて寝ていらっしゃっただけですね? でしたらこれ、お願いします!」

「!」


 そう言ってその人物に手渡したのは、リーシェが持っていた短剣だ。


「……ねえ待って。君は」

「では、私はあちらのお方の援護に行きますので!」


 リーシェはそう告げて立ち上がると、急いで船室の外に出た。

 船倉から甲板に上がる階段は、この船に二箇所あるようだ。それからいくつかの窓があり、そこからでも河に逃げられてしまう。


(とはいえ、残りはたったのこれだけ……!?)


 船内に響き渡る足音は、十人程度といったところだろうか。船の規模からして、船乗りは少なくとも三十から四十人ほど居たはずだ。


「そこの女、どけ!!」

「――……」


 怒鳴りながら駆けて来た船乗りが、リーシェを排除しようと舶刀を振り上げる。リーシェはアルノルトの剣を鞘ごと使い、その攻撃を受け止めてから刃を流した。


「う……っ!?」


 力を分散させられた男は、何が起きたのか分からないという顔をしている。


 リーシェはそのまま船乗りの手首を掴み、人体の構造を利用して捻り上げると、床に崩れた彼の首裏に一撃を落とした。


(あと何人かしら……船の外には、逃がさないようにしないと)


 ひとり、ふたりと倒しているうちに、アルノルトが大方を片付けて行く気配がする。だが、そのときだった。


「何やってんだ、『荷物』は置いて早く逃げるぞ!」

「待て待て、いくらなんでもひとりかふたりは確保できんだろ! どの女でもいい、引き摺ってでも連れて行くぞ!」

「!」


 アルノルトとリーシェの間にある船室へ、ふたりの男が入っていく。


 そこは、女性たちが捕らわれている部屋だ。


 手近にいる最後のひとりを気絶させたアルノルトが、船室を振り返って舌打ちをする。


 だが、アルノルトが間に合わなくても問題がないことを、リーシェはきちんと知っていた。


「きっと大丈夫です、アルノルト殿下!」

「……?」


 アルノルトが目を眇めたその直後、女性の悲鳴が響き渡る。


「きゃああああっ!!」


 そのあとに、船室から何かが倒れるような音がした。

 同時に船室についたアルノルトとリーシェは、ふたりで中を改める。


 室内に立っていたのは、赤いドレスを身に纏い、先ほどリーシェが短剣を渡した人物だった。


「……あーあ、全部面倒臭い……」


 足元には、大柄の船乗りたちが蹲って倒れている。


 赤髪の人物は、ドレスの裾を鬱陶しそうに掴んだかと思えば、同じくぞんざいに長い髪を掴んだ。


「ドレスも邪魔。髪も邪魔。はあ……海賊野郎は結局ボコっちゃったし、これもういいよね……」

「……あれは」

「お察しの通りです。アルノルト殿下」



 長い髪に見せ掛けられた(かつら)が、ずるりと床に落ちる。


 鬘の中から現れたのは、鬘と同じ赤髪だがとても短い、ふわふわとした癖毛だ。



「あのお方は、女性の格好をして潜り込んでいらっしゃった――男性のようで」

「……」



 その人物は、自身のドレス姿を邪魔そうに見下ろすと、適当な所作でそれを脱ぎ落とす。


 ドレスの下には、薄手のシャツとズボンを身に着けていたらしい。


 こうしてみると、最初に女性としては長身に感じたその体躯も、男性にしては細身の体型だ。


「ふわーあ……ねむ」


 気怠げな雰囲気を纏ったその人物は、くっきりとした二重の瞳を眠そうに緩めた表情で、長い睫毛に縁取られた目を擦っていた。


(相変わらずね。この表現が、正しいのかどうかは分からないけれど)


 彼のいまの年齢は、リーシェのひとつ年上である十七歳のはずだ。


 青年と呼べる年齢であるものの、どこか線の細い印象があり、女性たちからは美少年めいた顔立ちだと評判だった。


 瞳の色は一見すると茶色だが、それは彼がいつも眠そうに俯き、瞳に光が当たらないからだ。


 明るいところで見る彼の瞳は、輝くような金色であることを、リーシェはよく知っている。


(騎士人生で、私はずっとこの人と同室で過ごしていたんだもの)


 気絶した船乗りは、彼の操る短剣によって倒れたのだ。


 アルノルトもそれが分かっているからこそ、静かに彼のことを見据えている。


(島国シャルガの天才剣士。騎士人生最期の戦いのとき、アルノルト殿下から私を庇って命を落としたお方……)


 茫洋とした金茶色の瞳が、アルノルトの方へと向けられた。




(……ヨエル先輩……)




 短剣を手にしたままのヨエルは、リーシェの前に立つアルノルトの方に踏み出す。

 彼の過去の言動をよく知るリーシェは、ぎくりとした。


(駄目! いつものヨエル先輩なら、間違いなくアルノルト殿下を挑発してしまうはず……)

「……そこの黒髪のお兄さん」


 そう危惧したリーシェの予想に反し、ヨエルは眠そうな声のまま口にする。


「後ろに居る珊瑚色ふわふわの女の子と、どういう関係?」

(え、私?)


 その言葉によって初めて気が付く。

 アルノルトがいつのまにかリーシェの前にいるのは、恐らくヨエルから庇うためだ。


「あ、あの。アルノルト殿下」

「……」

「……まあ、今はなんでもいいや……。それより、やっぱ、眠……」

「!!」


 その直後、ヨエルがどしゃりと床に崩れ落ちる。


 怪我をしたのかと驚いたが、どうやらそれは違うようで、ヨエルはそのまま寝息を立て始めた。


「……」


 アルノルトがいささか不機嫌そうに、ぽつりと低く言葉を漏らす。


「……なんなんだ、この男は」

「く、薬の影響かもしれませんし! ひとまず錨を下ろしましょう、船を停めてこの方々を手当てしませんと……!!」


 そしてリーシェは、思わぬ形での邂逅について考える暇もなく、しばらくのあいだ忙しく動き回ることになるのだった。




----------

6章2節へ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 遂に!ヨエル先輩登場です! ワクワクが止まりません!(✧∇✧) これからの展開を楽しみにお待ちしております!
[良い点] ヨエルのキャラが好きです! [一言] 先生の小説の更新が楽しみで、毎日のちょっとした幸せです。ありがとうございます!
[良い点] ドストライクなキャラな予感しかしない… こういうときはアルノルト殿下を思い切り魅力的にかいてほしい…好きになっちゃう…(黙れ)
2022/09/24 16:38 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ