迷子のハーフエルフ①
第二章です。
「でも驚きね。サエがそんな予知じみた力を持つ人物と知り合いだったなんて」
あぁ、私もソレイユから教えられた時は驚いた。そして、色々と納得できた。
「後のお楽しみってところかしら。随分ともったいぶっちゃって」
全部終わったから、もったいぶっているだけさ。でも、もし当時にこの話を知っていたとしても、君に伝えた可能性は低いね。
「まぁいいわ。それで、サエとの出会いの次は、ソレイユってところかしら」
「え、私ですか?」
そうだね。ソレイユ、エル、良ければ君たちも一緒にお茶にしよう。
「けれど、いいの? ソレイユ。貴女にとって、辛い事もあった事件よ?」
「確かに辛い事もありましたけれど……皆さんが助けてくれましたから、こうして無事に過ごせています。それに悪い事ばかりじゃありませんでしたから」
「そう……そうね。フィーナとサエがいたんだものね」
それに、メイルも手を打ってくれた。サエのおかげでソレイユは無事だし、ハーフエルフへの偏見も以前よりも薄れて、結果的にハッピーエンドだ。
「でも、今の貴女はそうでもないのでしょう」
それは、私たち事務所のメンバーだけさ。世間一般的にはハッピーエンド。これ以上ないくらいの大団円だ。
「わかったわ。最初からそのつもりだったけれど、貴女の心の整理にとことん付き合ってあげるわ」
少し見当違いだけれど、ありがたく話には付き合ってもらうよ。
と言っても、この話に関しては、サエの日記を中心に進めることになるけれど。
「任せるわ」
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前の事件から半月近くが経った頃には、サエは簡単な日常会話や読み書きができるようになっていた。日記にも、毎日のように自分の成果について書かれている。微笑ましいよ。
さて、その日、サエは私に頼まれた買い物を終えて、真っ直ぐ事務所へ帰ろうとしていた。
けれど、道端で外套を頭から被った小柄な人物が右往左往しているのが目についた。周囲の人はあまり関わらないようにしているし、自分も下手に怪しい奴に近づかないようにしているから、無視して通り過ぎようとしたらしい。
でも、この街に来て困り果てていた自分が助けられた事を思い出して、声をかけてアルト、君たち警察のところへ連れて行ってあげるくらいはした方がいいかもしれないと思ったそうだ。
そこで声をかけようとしたら、同じタイミングで困り人の方も声をかけてきた。二人とも、どうぞ、そちらがお先にと言う動作を繰り返していたらしい。
まぁそれは置いておいて、それで、少し怯えた様子の相手が、自分よりも年下らしい少女だということがわかった。しかし、彼女が喋っている言語が全く分からず、けれどジェスチャーで意思疎通を試みて、迷子だということを知った。
その時、フード部分が少しずれかけて、彼女の耳が見えたそうだ。その時、サエにはエルフとハーフエルフの違いは耳の長さだという事を教えていたから、彼は彼女の耳の長さから、ハーフエルフだと察したようだ。
先ほどよりも縮こまるハーフエルフの少女……そう、ソレイユだ。
ここからは、彼の日記とソレイユの記憶を合わせて補完した内容を話していこう。その方がわかりやすいからね。
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お読みいただき、ありがとうございます。
次回はサエ視点です。