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アルフィーナの探偵事務所  作者: 胡桃リリス
第二章 迷子のハーフエルフ
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ハーフエルフの思い出

今回はソレイユ視点です。

 最初にこの街に飛ばされた時、見知らぬ土地で、誰にも声を駆けることができず、泣きそうだった私の目に留まったのが、サエさん、貴方です。


 私はハーフエルフだからという理由で、故郷でもあまりいい目では見られませんでしたし、両親や親切な人たちからも、エルフ種は悪い人に目をつけられやすいから気を付けなさいと言われていました。

 だから一目見て、この人は優しそうな人だな、と思っても、声を掛けようとしたときは不安だったんです。


 ですが、貴方はいい人でした。

 言葉は通じませんでしたが、力になってくれようとしたことが、あの時の私にとっては大変な出来事でした。嬉しかったんです。


 大森林のエルフ語をしゃべられるアガットさんと会えた事も幸運で、安心できました。この人も、優しい人だと、何となく思いました。


 この街のハーフエルフの共同体に入って、まず故郷の両親や友達に無事を伝えて、それからこれからの生活を考えようと、前向きに考えられるくらいに、私の心は安心しきっていました。

 けれど、迎えに来たハーフエルフの冒険者のお姉さんは、優しい人でしたが、何か隠しているような、言葉にできないもどかしい感じがありました。それが一体何を示しているのかを知るのはすぐのことでした。

 お母さんから、魔法障壁の作り方を教わっておいて、咄嗟に使えるくらいに練習しておいてよかったと、初めて思ったとても怖い出来事です。

 同じハーフエルフなのに、とても怖い目と顔をした男の人たちが、怒鳴り散らしながら血を寄越せと障壁を叩いてくる光景は、現実ではないような感覚がして、怖くて怖くて仕方ありませんでした。故郷の村で、私にあまりいい感情を向けない男の人でも、こんな顔はしていませんでした。

 攻撃魔法を使って追い払おうとしても、焦って上手く出すことができず、ついに壁に追い詰められてしまいました。


 もうダメかもしれない、そう思った時、天上からサエさんが現れて、私が状況を飲み込む前に、あっという間に怖い人たちを倒していきました。

 見たこともない魔法で戦うサエさんでしたが、残っていた男の人に腕を撃たれ、くぐもった呻き声を上げた時、私は目の前の優しい人が傷つくのがとても怖くなりました。

 どうか、この人を助けたいと、咄嗟に魔法障壁をサエさんの前に張って、どうにか新たな脅威から守ることができました。

 サエさんが相手の拳銃だけを跳ね飛ばしてすぐ、メイルさんたちが部屋に入ってきて、私たちは助かりました。


 この地下室の出来事で、私は男の人が怖くなっていました。床に倒れている人たちを見て、先ほどの光景を思い出して、震えてしまったのです。

 それはサエさんにも……うぅん、サエさんは悪くない! この人は私を守ろうとしてくれたのに! そんな思いとは裏腹に私は彼に怯えてしまっていました。いいえ、あれは彼に怯えていたのではなくて、彼が腕に負った傷と、そんな風になってまで私を助けようとしてくれた彼に萎縮してしまっていたのかもしれません。


 フィーナさんの言う通り、無鉄砲な行動でしたが、彼の行動がなければ、私の今の生活はなかったように思います。

 メイルさんから、後で聞きました。

 フィーナさんと言う人のこと、その助手をしているサエさんの様子。

 事件から数日経った頃、私は決心して、メイルさんに就職先を頼みました。一生懸命言葉と文字を覚えて、魔法もメイルさんに見てもらって、新しい種類を使えるようにして。


 数日振りに会ったサエさんに、私は怖いと思う気持ちは抱きませんでした。

 彼は私に気を遣っていましたが、私が大丈夫ですと伝えると、安どの笑みを見せてくれました。

 私がつられて笑ったら、居心地が悪そうにしていましたけれど、照れていたことは、日記を読んで初めて知りました。


 サエさん、貴方が『アイツ』さんと一緒に来たことは、貴方にとってはよくなかったことかもしれません。

 けれど、私と出会ってくれて、助けてくれたことは事実です。フィーナさんや『アイツ』さんがどう言おうと、私の今は貴方が守ったんですよ。


 ねぇサエさん。

 あの時、最初に出会えたのがサエさんでよかった、今でも私はそう思っています。


お読みいただき、ありがとうございます。

今回で<迷子のハーフエルフ>は終了です。

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