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アルフィーナの探偵事務所  作者: 胡桃リリス
第二章 迷子のハーフエルフ
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迷子のハーフエルフ⑧

△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△




 ――――とまぁ、こんな感じでその日の日記は終わっているね。

 どうだいアルト。何か感想はあるかい?


「色々あるけれど、とりあえず、サエって自分の事を僕って言ってなかった?」


 はっはっ、まずはそこからかい。

 それは私が教材に与えた絵本や子ども向け小説の影響だね。どうやら、彼は自分の事を俺って呼んでいたらしい。


「ふぅん? ちょっと意外だったけれど、そっちの呼び方のサエもいいかもしれないわね」


 同感だ。

 他に感想は?


「あの事件については、貴女たちから聞いた通りだから、特に驚きはなかったわ。でも、サエの力と、また出てきた『アイツ』っていうのが気になるわね」


 それについはここにいる全員が同じ事を考えた。

 聞いてもらった通り、性別不詳のX氏は常日ごろからサエの近くにいたようなんだけれど、私たちは誰もその姿を見ていないんだ。


「まさか、古代魔法の使い手が近くにいたっていうの?」


 それも考えたけれど、四六時中、サエの傍にいながら発動してはいられない。魔力をかなり使うからね。ソレイユを迎えに来た元研究者のハーフエルフだって、ギルドを出てから少し歩いたところにある、連絡窓口の建物の中で姿くらましを使って時間を稼いだくらいさ。魔法石強盗だって、実に手早く、素早く犯行を完了して逃走していただろう。


「つまり、X氏は怪人ってところね」


 敵か味方か、謎の怪人X。こいつはいい、今度、小説にまとめて新聞社に売りつけてやろうか。


「心にもないことを言わないの。X氏には興味があるけれど、まだ正体を明かしてくれないんでしょう」


 その通りさ。


「じゃあ、疑問は置いておくわ。感想は、結果的に皆無事でよかったわ、ってところで」


 そうかい。じゃあ、このお話しのオチと行こうか。




△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△




 事件から数日経ったある日の昼頃。

 サエに新しい従業員を追加で雇った事を発表したんだ。今回のような事件が起きた時のために、屈強な魔法の使い手を雇ったってね。


 そうしたらサエは、屈強な魔法使いを想像したらしくて、苦笑いを浮かべていたよ。筋骨隆々の軍人みたいなのを思い浮かべていたんだそうだ。


 そんなやり取りをしていると、メイルがやってきた。

 玄関先で、事件解決に関して色々と謝罪や礼を言われ、サエが立ち話もなんですからと奥へ招こうとしたところで、メイルの後ろから人影が顔を出した。


 そう、ソレイユだ。

 目を丸くして言葉を失ったサエに、私は言った。


「彼女が、今日から事務所で雇う事になった、ソレイユ君だ」


 ってね。


「ですが、その、彼女は……」


 サエはソレイユに自分が見えないように引っ込もうとしたんだけれど、私はそれを許さなかった。腕を掴んで引き留めて、しっかりとソレイユの前に立たせた。

 するとソレイユ、君は彼に言ったね。


「あの時は助けていただき、ありがとうございました」


 そうだね、ソレイユ。君はあの時、サエから顔を背けなかった。だからサエは変に遠慮することもなかったんだ。

 サエは安堵したように笑った。君があの時も、今も無事でよかったってね。


「はいっ!」


 知っているかい、ソレイユ。

 君がヒマワリのような笑顔を見せた時、サエの奴は少し照れていたんだ。


「えぇっ? そうなん、ですか?」


 ふふっ、今更、君も照れるのかい?

 まぁそんなわけで、従業員二人が早速仲良くなる様子を私とメイルはにこやかに見ていたんだ。


 ところで、その日の朝刊の一面記事について、アルト、覚えているかい。

 ハーフエルフ共同体が冒険者ギルドと共に、ハーフエルフへの偏見や迫害をなくすため、国と会議することを発表した、という一大ニュースだった。

 誰もが驚き、夢物語だと笑う者もいたけれど。

 サエとソレイユの様子を見ていたら、少しでも明るい未来へ歩む可能性を示すそんなニュースも、それほど遠くないうちに実現しそうだなんて、そう思ったんだよ。


お読みいただき、ありがとうございます。


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