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(仮)①
☆ローバーミニのシートに座り、ドアを閉め、車を走らせる。
独特のエンジン音と走行感が全身に伝わってくる。
いつもの風景。
いつもの道。
マンションに向かっていく。
俺の‥‥‥‥ではない。
誰かの所有物であるマンションに、だ。
その一室に真田凛子が住んでいる。
いつもそこに向かって車を走らせるのだ。
ちなみに、だが‥‥‥‥ペーパードライバーだ。
わかるよな?
ここまで言えば、わかってるよな??
そうだ。
車を。
ローバーミニを。
走らせているのは‥‥‥‥俺、ではない。
野暮なことは聞くな。
え?
「女に運転してもらって、女のマンションに向かっているのか??」
「男の矜恃とかないの??」
だって??
‥‥‥‥‥‥‥‥。
もう一度‥‥‥‥。
もう一度だけ、言うぞ?
野暮なことは‥‥‥‥聞くな。
聞くんじゃねぇ‥‥‥‥。
あの‥‥‥‥聞かないでくれます??
①(仮)