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出会いと再会


私……実はポルトガルとサントメ・プリンシペに行ったこと無いんですよねぇ……(小声)



シーナと僕が出会ったのは僕が通っている大学のキャンパスだった。

今でもあの時の事は昨日の事の様に思い出せる。


シーナは当時、日本に語学留学をしに新生アルメルクン共和国から派遣されてきた少女だった。

僕の通っている学校はたいして偏差値も高くないレベルの低い大学だ。

彼女を最初見たとき感動と一緒になぜ?という感情を抱いたのは覚えている。


後で聞くとこれは僕の通っている学校の語学の教授がなんと日本で一番アルメルクン語に精通しているからだというのだ。

そんな話は初耳だったが僕はこの大学を選んだ昔の自分に心の中でグッジョブと言いたくなった。


シーナは最初に教室に入ってきたときはその姿から異様の目線を学校中の生徒に送られていた。

ただでさえシーナは獣の姿なのにその上に着ている服は威圧感のある軍か何かの制服だしその眼光も鋭く人を近づけさせないオーラをかもし出していたからだ。


シーナにとっても人間にここまで囲まれるのは初めてのことだっただろうし当時は政治的なことで色々あったからそれもあったのかもしれない。


とにかく、学校中の生徒はシーナを異物として見ていたのだ。

それは普段、ファンタジーアニメを見ている生徒も同じだった。


だが、そんな中で僕は好奇心が抑えられなかった。

僕以外にも好奇心を抑えていた人はいただろうが僕は最初に好奇心が爆発した。


シーナが学校にやって来てから3週間がたった頃、僕は居ても立ってもいられなくなり授業の終わった後、僕は廊下で今にも帰ろうとしているシーナに話しかけたのだ。


「や、やぁ!き、君がシーナさん……だよね!?」


確かこんな事を第一声で言った気がする。

今思うと不審者極まりない挙動不審野朗に見えていたんだろうと思うが、シーナからのこのときの反応は「なんですか?あなたは……」だった。


結局このときは無視されて帰ってしまったが一度、たがが外れてしまった僕の好奇心は暴走し続けた。

僕は普段は根暗で空気なヤツだがこの時ばかりは違った。

僕の乏しいコミュニケーション力を全快に3日間ほど授業終わりにシーナに話しかけた。

そして、4日目、彼女は僕の言葉に答えてくれた。

午前の授業の間の休み時間になんと彼女から話しかけてくれたのだ。


それから、僕とシーナは毎日のように話す仲になった。

そしてついには二人で街へと遊びに行く仲にまで発展したのだ。


僕はシーナはお互いに好奇心の花を咲かせた。

お互いの国について話をして文化の違いや科学技術など様々な話題を盛り上げた。


そして、シーナが国に帰るとき僕はシーナと約束した。

いつか絶対に君の国に行くと。


まさかそれが約束から僅か1年で達成されるとは夢にも思わなかったが……。






「ひさしぶりですね!七海先輩!!」


駆け寄ってきたシーナは尻尾を大きく振りながら僕の手を握りピョンピョンとジャンプしながらうれしそうな声を上げた。

僕もその姿に懐かしさと嬉しさが胸から溢れる。


「おお!シーナ!ひさしぶり!かっこよくなったなぁ!!」


「そういう先輩は全然変わりませんね!」


互いの顔が笑顔になる。


「それにしても本当にかっこよくなったな!学校に来てた時より制服が全然違うじゃん」


「ふっふーん!私、今では武装親衛隊の少尉なんですよ!」


シーナは自慢げにそう語ると僕の前でローマ式敬礼をした。


「まぁ、正式には武装親衛隊外国人観察局なんですけどね」


「少尉か……なんかそういう階級とかアニメとか小説でしか聞かないけどいざ聞くとすごそうだな」


「だから、すごいんです!まさに私の才能が開花した結果ですね!七海先輩も私に感謝してくださいよ?普通は観光目的で観光ビザなんて発行してもらえないんですからね!」


「あはは……その点は本当にシーナに感謝してるよ。シーナがいなかったら僕がシーナの国に行く事なんて出来なかっただろうからな。本当にありがとう」


僕は素直にお礼を言った。

実は今回の旅行が実現したのはシーナのおかげなのだ。

僕とシーナは一ヶ月に一回ほど文通をして連絡を取り合っていた。

そんな今年のある日、シーナからの手紙で僕の観光ビザが取れるかもしれないという話になりその後シーナの尽力で観光ビザを取得できたのだ。


「そ、そんな真顔でお礼なんて言わないでくださいよぉ……そ、それで?七海先輩は?今何してるんですか?」


僕のお礼に急に恥ずかしそうなしぐさをしたシーナは話題を変えてきた。

僕はまぁいいかと話題に乗る。


「ああ、僕は今もちゃんと大学に行ってるよ。もうじき卒業だけどな。それに――」


その後、僕は受付のある建物の前でシーナと立ち話を20分ほどシーナがいなくなった後の学校の事や最近のアニメや漫画の話をした。

その間、シーナは僕の話を結構、楽しそう懐かしそうに聞いていた。

やはり、日本に三年近くいた訳だから思い入れがあるのかもしれない。

それにシーナの住んでいるお国柄を考えると日本には気軽に行けるような国ではない。

もしかすれば日本の地を踏む事はシーナにとってはもう二度とないかもしれないのだ。

そうなると僕の話にここまで聞き入るのも納得できた。


「――確かシーナ、ノートパソコン持ってたよな?あとでアニメを録画したディスクあげるよ。俺が面白いと思ったアニメしか入ってないけどな」


「本当ですか!?ありがとうございます!こっちネット使えないから助かりますよ――って、そろそろ良い時間ですね」


シーナは思い出したように胸ポケットから懐中時計を取り出し時間を確認した。

僕もそれを見て腕時計の時間を確認する。


「そうだな……そろそろ、手続きに行くか」


「私もお供しますよ!」


「本当に!?助かるよ!!ポルトガル語ぜんぜんで大変だったんだ!」


「ふふっ、七海先輩ならそう言うと思ってましたよ」


ありがたい後援を受けた僕はシーナと共に受付がある建物の正面玄関ドアを開け中に入っていったのだった。


建物の中は外見と同じくらいおしゃれな洋風の内装だった。

廊下にはシャンデリアがあり床は大理石で出来ているなどかなり豪華な印象を受けた。

シーナによればこの建物はサントメ・プリンシペと新生アルメルクン共和国が国交を結んだ時に両国の友好の証として両国が共同で建設した建物なのだそうだ。

僕は感心しながら建物を歩き受付のある2階に行った。

受付でシーナのポルトガル語の翻訳による補助を受けながら僕はサントメ・プリンシペからの出国手続きを進めた。

パスポートの提示や新生アルメルクン共和国発行の観光ビザをサントメ・プリンシペの入国管理員に提示する。

最初は観光目的の出国ということで少々、入国管理員とひと悶着あったがシーナのおかげでそこは何とか切り抜けることが出来た。まさにシーナ様様だ。

最後に入国管理員からサントメ・プリンシペ発、新生アルメルクン共和国行きの国際フェリーの乗船チケットを受け取り建物を後にする。


僕とシーナはそのまま国際フェリー乗り場へと向かう事にした。

チケットのフェリーが出航する時間は4時30分。

今が3時45分だからあと、一時間もない計算だ。


歩きながら僕とシーナは会話をする。


「……本当に何から何まで、ありがとなシーナお前がいなかったらきっとここで足止めくらってたよ」


「いえいえ、そんな顔しないでくださいよ七海先輩。日本では私がお世話になったんですから、お相子ですよ」


シーナは僕の顔を覗き込んでニィっと笑った。

僕もその笑顔を見て笑みを浮かべる。


「そうだな……お相子だな」


そう言うと僕とシーナは互いにおかしくなって笑いあいそのままフェリーの待合所に行きそれから、およそ45分後、僕とシーナを乗せたイタリア製の全長100m超えるか超えないか位の大きさのフェリーはサントメ・プリンシペの港を出港したのだった。


僕とシーナを乗せたフェリーが大西洋の海の波をかき分け力強く前へと進む。


僕はそのフェリーの甲板で離れ行くサントメ・プリンシペを眺めその後に船の進行方向を見つめた。


「……この先に……あるんだな……異世界が……」


この先に僕が今まで夢にまで画いていた本物の異世界が存在する。


今から11年前に異世界から突如として僕たちの地球へとやってきた異世界国家、新生アルメルクン共和国が存在するのだ。


僕は胸の高鳴りをただただ感じていた。


 

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