蒼の知らない人、裕也の知っている人
「『あー。あー。マイクテスト、マイクテスト。OKOK。ちゃんと動いてるな。』」
私は蒼の当然の奇行に驚き、声をかける。多分今、アホみたいな顔をしているんだろうなと思った。
「ん?君は・・・ああそうか。そんなに大きくなったんだね。私はきっちり君が育ってくれてとても嬉しいよ。」
そう、蒼の『口』が動く。
「あなたは誰なの?」
まずこのセリフを言った蒼は蒼じゃないのだろう。新手の魔法だろうか。
「私か?そうだな・・・いや、私に名前はない。実際にはあるが今ここでは名乗ってはいけない。じゃあ、私の名前は君たちが呼びやすい呼び名で呼んでくれ。」
『君たち』なのか。
「今、『君たち』って言ったけど、もう一人の方はあんたに体乗っ取られてさっきから何も話さないんだけど。」
そう、牽制のような、低いトーンで話しかける。
「ああ。そうだったな。この魔法では最初に誰かに憑依しないといけないから使いにくいんだ。今この少年を開放するよ。」
そう言って、蒼の中から一人の、私くらいの年の少女が出てきた。それと共に蒼は糸が切れた操り人形のように崩れ落ちた。しかし蒼の反応はない。
「ちゃんと感覚を戻しなさいよ」
私はその少女をにらみつける。
「そうだね。この青年にも聞いてもらわないとね。」
そういうと突然蒼が苦しそうな顔をし、呻き始めた。
そうしたらすぐに飛び起き、顔を青くして息を荒げた。
「蒼。大丈夫?そんなに五感が途切れたのが怖かったの?」
と、私が心配していると、蒼は
「この会話はもう前話で話したからカットだ。」
あっはい。
「楽しく雑談しているところいいかな?大切は話があるんだよ。」
少女は少しむくれながらそう言った。
なんか子供ぽいなと思うと、なぜか親近感がわき敵対心が少し薄れた。
「なんか君の声を聞いた声がある気がするんだけど、気のせいだったりするかな?」
蒼は何故かそんなことを唐突に言い出した。
「・・・なるほど。裕也。お前のトラウマに紐つけて記憶を封印したんだが、完璧じゃなかったという事か。・・・ああ、すまない。君の名前は蒼だったな。」
私が『裕也』という単語に反応し睨んでいることに気づいて修正してくれたようだ。
「ユウヤ?それって俺のな
「蒼!!こいつが記憶を奪っているって自白したわ!!今から二人でこいつをぶっ飛ばすわよ!!」
蒼の言葉を大声で遮ると「お・・・おう」とぎこちない返事をしてくれた。
多分はぐらかせれただろう。
「残念だが私に物理攻撃と魔法は効かないんだ。私が今、ここに来た理由は君たちに話さないといけないことがあるからだ。」
私が幾度か攻撃したが、攻撃は当たらず、まるで自体が無いかのように攻撃が当たらなかった。
というか少女の体をすり抜けた。
少女がもう満足しただろう。と言い、本題を切り出した。
「蒼。君が記憶を戻したら、世界はまた終わるんだよ。」