真実の時間 空白の時間
「いいわよ。教えてあげる。私の過去を」
私は語りだす。自分の過去を。
「私はとある神社の跡取りとして連れてこられたのよ。
「『連れてこられた』というのは、私はどこかの世界から無理やりこの世界に連れてこられたって事。
「え?重い話なら結構?・・・最後まで聞きなさいよ。
「いいの?わかったわ。
「私はこの世界を守ることのできる素質があったらしい。
「それで私が連れてこられた時から修行の毎日だったわ。
「そしてそれから一か月くらいたったころかな・・・大人の人が二人の子供を連れてきて、『この子たちが遊び相手になってくれるよ。』と言ってきたんだ。
「そこから記憶が一旦終わる。
「ん?そうそう。そこからの記憶がすっぱり無くなってるのよ。
「そして次の記憶は灰色の空を見たという感じなのよ。その時にとある魔女が私を拾ってくれてそこからは二人暮らしだったわ。
「そこから七年・・・正確には2571日後に魔女が死んだ。
「理由は簡単。あの『何か』に襲われたのよ。
「襲われたっていう表現は正しくないけど訂正してもあんまり意味ないからとりあえずそういう感じで覚えていて頂戴。
「その時に魔女が言った言葉があるの。
『この世界は間違っている。なあ、ひとつ我儘を聞いてくれないか?・・・この間違った空を、大地を、生き物を、・・・人間を正しい形にしてくれないか?』
「以上よ。」
私が分かりやすく簡潔に説明してやると苦い顔をしながら
「うん・・・うん。」
と返事をした。
「何よ不満かしら。」
「いやさあ。なんかこう、ボケキャラが壮絶な過去を辿ってると・・・ねえ?」
ちょっと意地悪で聞いてみたのだが、この男は全く違う視点から苦情を出していたようだ。そんな感じで何度か同じようなやり取りをした後、蒼はこんな質問をしてきた。
「ん?そいえば記憶が途切れているってどうして気付いたの?いきなり体が五歳分成長していたとか?」
そう言えば言っていなかったなとばかりに説明を始める。
「いやそうじゃないのよ。体も何も変化はなかったし変な記憶もないわよ。・・・だけど残っていた書物を読む私がここに来たのとこの世界が終わったのには十年のタイムラグがあるの。だから私が眠っていた時に知らぬ間に終わっていたんじゃなくて私の記憶の方に空白があるんじゃないかと思うようになったのよ。」
「なら逆に体が何も成長していなかったのが不自然だよな。」
逆転の発想!と言いながらどや顔で言ってくる。
うぜえ。
でも確かにそうだ。私も幾度となくそのことを考えていた。
「例えば・・・魔法とか?ほら、さっき魔法使っていただろ?あれで色々出来るんじゃないのか?」
「いえ、記憶を消す魔法や身体を成長させない魔法なんて・・・」
そう言いかけて思い出す。あの魔女にも知らないことがあった。(具体的にはあの体術の上位奥義とか。)
「ということはまだあの魔女が知らない魔法とか?」
そう言うと蒼は呆けた顔でこう言った。
「『あー。あー。マイクテスト、マイクテスト。OKOK。ちゃんと動いてるな。』」