少女の過去、青年の過去
「俺たちも『人間』って言うんだぞ?」
吐き気がしてきた。趣味が悪いっていうレベルじゃない。あれを人間って呼ぶ理由なんてひとつしかない。
「恐らくだぞ?あくまで予想でしかないが・・・聞くか?」
一応確認をしておく。これをはかなりショッキングな真実だ。とんとん拍子でこんな真実を知ってしまってかなり混乱している。そのせいでいつもならこんな気配りなんてしなかったのに確認を取っている。
「何よ。もったいぶらないで早く言ってちょうだい」
少女は平静を装っているが、混乱を隠しきれていない。
「あの生命じゃない『何か』は、『ニンゲン』はおそらく、俺たちと同じ種族だ。俺たちは『人間』って呼ばれている。恐らくお前には常識が無い。普通なら知っていることが知らないから分らなかっただけで、『ニンゲン』っていう名前にはそういう由来があるんだと思う。」
「それじゃあ、私達と同じって言うなら、何で意思疎通出来ないのよ!?」
少女は必死に聞き返してくる。恐らく薄々気付いていたんだるうが、それを認めたくなくてこんなに必死になっているだろう。
「魔女さんが生命が無いって言っていたんだろ?ならゾンビとか幽霊とかそんな類なんじゃないのか?」
「それは・・・」
これも薄々気付いていたらしい。
「やっぱりそうなのね・・・」
やっと認めたみたいだ。
「それはゆっくり飲み込んでいくわ。でも、私が聞きたいことはこれだけじゃないのよ。あんたが思い出したあの『体術』は誰から教わったの?体術の事はあらかた思い出したんでしょ?教えなさいよ。」
「分かった。分かったから落ち着くんだ。」
そう言いながら少女をなだめる。
「俺はこの体術を『かいと』っていう人に習ったんだ。お前がさっき言った格言は俺が『かいと』から習っている時に思い知ったことのはずなんだけど誰がその格言教えたの?」
そう聞き返す。そうすると少女は
「『かいと』から習った・・・じゃああいつは魔女の師匠に当たる人?・・・魔女は確か弟に教えてもらって・・・その師匠が『かいと』・・・じゃあ名前は『ユウヤ』?」
なんかぶつぶつ言い始めてしまった。声が小さくてあまり聞こえない。
「いえ、気にしないで。今、あなたの本名が分かったから言わないことにしたのよ。」
「はよ教えろ。」
タイムロスゼロ秒のツッコミ。
「いやよ!!何で『蒼』が定着する前に本名おしえなきゃならないのよ!?」
絶叫をしながら後ずさる。おい。なんか忘れているみたいだけど会ってまだ一時間も経っていなんだぞ?そんな奴に突っ込み任せるんじゃない。俺はどっちかって言うとボケなんだ察しろ。
「まあいいや。もう蒼以外に名前が増えたら混乱するだけだからな・・・」
「そうよね!!やっぱり混乱するのは良くないから蒼のままでいいじゃない!!」
何故か全力で肯定する少女。目が凄くきらきらしている。
「なあ、聞きそびれてたけどお前の過去ってどんなものなんだ?ニンゲンっていう単語を知らないなんてちょっとおかしいぞ?」
さっきからの疑問をぶつけてみる。話題を変えてやろうというちょっとした感覚で聞いてみたんだが思ったより重い反応が返ってきた。
「いいわよ。教えてあげる。私の過去を」