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すでに終わった世界  作者: 榮 裕也
3/12

よぎる記憶、確かな記憶

「蒼にしましょう。」


何言っているんだこの女。

いや、名前が自分でも分からないのが悪いのは分かる。

名前が無いと呼びにくい事も分かる。

だけど命名はないだろう。本人に決めさせてくれ。しかも青って。絶対この空を見て決めただろ。感動したんだろうな。青い空を見るのが久しぶりだったんだろうな。だけど命名はないだろう。

「簡単な方の青じゃないわよ?草冠に倉の蒼よ?」

知らないよそんなこだわり。

「俺に拒否権は無いのか?」

「ないわ。」

即答なのか。そうなのか。

もうあきらめよう。記憶が戻るまでとりあえず、蒼と名乗らせてもらおう。それで、この目の前にいる女は一体誰なんだ?服というか使われ過ぎてただの布のようになってしまっている。

「何よ。私の格好がそんなに気になるの?」

ニヤニヤしながらそんな風に聞いてくる。別にやましいことはないが一応断っておく。

「いや、このズタズタの服を着ている女は誰だろうと思っただけだ。」

わざわざ貶した言い方をした理由はやましいことがない事を強調するためだ。本当にやましい事なんてない。

それにしても若いように見える。十五か十六くらいか。黒髪黒目で一般的な日本人のようだ。

「それにしても騒がしいわね。やばいのがいたみたいだわ。」

少女がそんなことを言い出した。騒がしい?音なんて一切聞こえないって言うのに何が騒がしいんだ?

「ああ。貴方には聞こえないはずよ。聞こえるのは一部の人間だけだから。」

俺の意図を察したかのようなセリフか帰ってくる。霊感的な奴なのか。

そう思ったらそんなことはなかった。やってきたのは、『何か』だった。生き物とは到底思えないけど、しかししっかりと動いている『何か』。

「あれは生命じゃない『何か』よ。私みたいに極めた人なら音が聞こえるようになれるわ。あの『何か』は生命を探知して寄ってくるわ。私は体術で応戦出来るけどあんたは無理でしょうから下がってなさい。」

RPGのような解説どうも。

何でそんなものがいるのかは後々聞くとしてここはやばそうなので下がっておこう。


戦闘開始。

少女は慣れた動きで次々と『何か』をさばいていく。『何か』は少女が触れたらすぐに空気のようにすっと消えていく。生命じゃない『何か』は生命に触れると消えているみたいだ。正確には消えるだけじゃないと思うけどこれも後々聞くとしよう。

「さすがにきついわね。こんな量が集まったのは一年ぶりよ。」

そうなんだ。なんてことはもう考える余裕はなかった。今は違うことで頭がいっぱいになっている。

あの少女の体術。見覚えがある。自分がしたこともある。これは無くなった記憶と関係があると強く感じた。

「なあ!その体術で知っていることを何でもいいから話してくれ!」

「そんな余裕は・・・分かったわ。やってみる。」

少女は俺の意図を察したかのように受け入れてくれた。

「一つ!師匠には逆らってはいけない!逆らったら命がいくつあっても足りない!」

「一つ!絶対に人前では稽古をするな!かっこ悪いだろ!」

「一つ!無手であること!無手じゃない場合派生流派となる!」

知っている。すべて。

「一つ!じ

「もういい!」

一部、正確には体術の部分を思い出した。なぜこの少女がこの体術を知っているのかを後で聞くとしてまずはこの『何か』を蹴散らさないと。

「『突』ッ!!」

予備動作なしの直進+打撃。この体術の中の奥義の一つ。

一気に正面にいる『何か』を五体ほど蹴散らした。


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