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すでに終わった世界  作者: 榮 裕也
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灰色の空、蒼い空

悲しい。

そんな感情はとっくの昔に失くしている。

寂しい。

三年くらい前からずっと感じ続けている。

ずっとずっと暗い道を歩いている気分だ。明かりは三年くらい前に消えてしまった。

何かできるわけでもない。何をしたいわけでもない。

ずっと一人で何もせず。ずっと歩き続けている。

暗い道を。


目が覚めた。

「いやな夢だな。」

簡易的なベッドから立ち上がる。

いつもと変わらない朝。相変わらず灰色に染まっている空。

いつもの習慣で神経を研ぎ澄ませる。

「生存者・・・なし。」

ここの近くには人間はおろか生物さえもいないようだ。何とかして生存者を探そうとした日は何でこんなことを考えたんだろうと後悔したくなった。半径十キロ以内には生物が存在しない。南西十キロの所にかろうじてミミズを発見した程度だ。まあ、恩師だった魔女が言っていたことだが神様が根こそぎ生命を枯れさせたらしいから私やミミズが生きていること自体が幸運なんだろう。

「今日も頑張るかな。」

誰かが反応することもなく、生き物が声に反応することなく(反応する生物がいない)、勿論そんな期待はせずに呟いた。一人暮らしは独り言が増えるのは本当らしい。

恩師の魔女がいたなら二度寝をかましていただろうが、そんなことしたら朝ご飯は出てこないし昼ご飯も出てこないし夜ご飯も出てこない。さっき神経を研ぎ澄ませたおかげで眼も覚めたし食料になる野草の位置も把握した。人間離れした技術だが恩師の魔女と一緒にいたせいでこれがあまり凄くないことに思える。

あの人ならふとした瞬間に海を蒸発させて見せるだろう。

勿論私には出来ない。

もう一度集中して正確な野草の位置を探ろうとすると、

「!?」

生存者一名。

位置、空の上。ここから西に五十メートル、高さ八キロ。このままここに落下したらその人間は死ぬ。

どうやってそんなところに行ったのか、どうして生きているのか、その辺の疑問はさておいて、生き残れる可能性のあるやつはなるべく生かしておくに限る。そして何より、

「そこに落ちたらこの家吹き飛ぶじゃん。」

どんなに建前を並べようと、やっぱり一番初めに考えるのは自分の事だった。それが恩師の魔女との思い出の場所だということも重なり、優先順位の一番高い所に来る。

「第一にこの家の安全の確保、第二に人間の救出、第三にこの現象の黒幕の捜査・・・ってところか。」

こんなに異常な状況なのに冷静な判断が出来ている自分に驚いているがそこは今は気にしない。

玄関をくぐり、外に出る。


そこには一つの点を中心に広がる、蒼い、本当に限界のないような蒼い空だった。


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