仕組みが分かっていてもうまくいかないのが人付き合いの難点です。
1月も半分が過ぎたので初投稿です。
「貴様が騎士団に・・・そうか。」
「なんだよ・・・?」
「いや・・・。」
相変わらずこいつはワケが分からない。
宿を貸してくれたことには感謝するが、それ以外はどうも気に入らないというか・・・。
「とにかく、騎士団に挨拶に行くのだろう。今日は早く寝て明日に備えるようにな。」
保護者か。どうも俺はなめられてるというか・・・。誰がお前を助けたと思っているんだ。
「・・・あと、すまなかったな。王宮ではひどい扱いをしてしまった。
あの時、危機的状況にあった私を救ってくれてありがとう。おやすみ。」
どうも調子が狂う・・・。本当になんなんだこいつは・・・。
翌朝、俺は爺やにたたき起こされ騎士団に挨拶に行くよう命じられた。
着実に屋敷内での俺と爺やの上下関係ができつつある。仕方ない。爺やは怖いし、逆らうと面倒だ。
しかし、今何時だ・・・?体感で朝6時ぐらいか?
壁にかけてある時計を見ると数字がめちゃくちゃに並んでいる。
異世界の時計は元の世界の時計とは異なるようだ。帰ってきたら爺やに教えてもらおう。
ジャスミンはすでに家を出ていた。てっきり一緒に行くものだと思っていた俺は不安になる。
よくよく考えたら王宮には一人で行ったことがなかった。
どうしよう・・・。
たどり着けるかどうかも不安なのに挨拶回りなんてどうすればいいのかさっぱりわからない。
そもそもコミュ力が不足している俺にソロで挨拶回りなんてできるわけがない。
なんて不安は玄関で待っていたニーナの姿を見て吹き飛んだ。
昨日はあんなに頼りなく見えた彼女の姿が、今日はすごく頼もしく見える。
「いってらっしゃい、寄り道せずに帰ってくるんだよ。」
保護者か。こいつらは本当にもう・・・。
俺はニーナとともに王宮を目指し、朝の町を歩く。
「おはようございます。昨日はよく眠れました?」
「いまいち・・・。」
「やっぱり緊張してます?」
「まさかこんなことになるとは思ってなかったからね・・・。」
他愛ない話をしながら王宮に向かう。やっぱりこいつと話すのは楽しい。
心を開いてくれたのか、俺に話題を振ってくれる。会話が途切れることがない。
「お前、寝癖すごいな・・・。」
ただ、どこか抜けているというか・・・。
なんとなくこいつのダメ人間さが分かってきた。俺と同じ匂いがする。
「そういや、お前は騎士なのか?」
「えぇ、こう見えて私、結構強いんですよ。」
得意げに話すその姿を見て、俺は考えた。
(こいつでも馴染める騎士団・・・。余裕じゃね?俺にはアサルトライフルもあるし。)
こいつが嘘をついていなければの話だが。
しかし、そんな俺の予想を裏切るような地獄の挨拶回りが待っていたことを俺はまだ知る由もなかった。
体感で朝6時ってどんな表現だよ。