異世界DEアルバイト!
立春を過ぎてもなおきびしい寒さが続いていますが、初投稿です。
「起きろ、柊。もう昼だぞ。」
私はナレガに起こされ、辺りを見回す。いつの間にか寝ていたらしい。
「ここは・・・?」
「着いたぞ。ここがカレーダルトだ。」
たくさんの馬車が並んでいる。駐車場のようなものだろうか。
中には豪華に飾り付けられた高級馬車みたいなのもある。
「よっと!」
寝起きの目をこすり、外に出る。
相変わらず空は赤い。この世界では日が出てる間はずっとこうなのだろうか。
「空の色、太陽が出てるときはずっと変わらないんだね・・・。」
「昔は違ったんだけどな。世界が崩れてからはずっとこんな感じさ。」
ナレガはどこか悲しそうだった。
世界の崩壊・・・それを引き起こしたのは異世界の旅人・・・。
「ナレガ・・・。その。」
「お前が気にする必要はねぇよ。異世界の旅人だからって、そいつが全員悪人とは思わん。」
「うん。」
一体どんな人なんだろう。想像もつかない。
皆が生きていた平和な世界を、崩してしまうような人・・・。
そんな人と同じ世界で生きていたなんて、考えるとゾッとする。
一人悩んでいる私の肩に、ナレガが手を置く。
「さて、そろそろ仕事だ。お前にも働いてもらうからな。」
「え・・・?」
「飯も寝床も用意してやってんだ。少しは働け。」
ごもっとも。でも私にできることってなんだ?そもそも行商って何を仕事にしてんの?
「いや、私接客とかやったことないよ?」
「んなこと頼まねえよ。お前に任せると不安だし・・・。」
ホッとしたけどなんかムカつく。私のことを信用しているのかしていないのか。
* * *
結局私に頼まれたのは旅に必要な道具の買い出しと、行商の宣伝だった。
ナレガから何十枚ものビラをもらう。
「これを配れってか・・・。」
ビラの内容は商品の紹介がビッシリ。
あ、買取もやってるんだ。意外とお金あるのかな・・・。
端の方には手書きの狼のイラスト。絶妙に下手だ。
「これ、微妙に見づらいな・・・。狼の絵も可愛くないし。」
私がもっと良いものにしてやるか!貰ったお金でペンを買い、私は早速手直しをしていく。
表面に大きくバツを書き、裏の白紙に内容を写していく。
私は夢中で描き続けた。美術の成績は結構良い方だ。賞を取ったこともある。
「これでよし・・・と。」
終わるころには結構な時間が経っていたと思う。
だが、納得のいくものができた。自信作だ。これなら繁盛間違いなし!
私は急いで買い出しに向かう。出会った人には全員にビラを渡した。
お店の人にも、町を警備している騎士みたいな人にも。
異世界の人も話してみると、元の世界の人とあまり変わらない。
ビラ配りもアルバイトみたいで結構楽しかった。
* * *
買い出しも終わり、ビラも全部配り終え、私はナレガのもとに向かう。
いやー、働いた働いた。これなら文句ないだろう。
「買い出し、終わりましたっ!」
満面の笑みで帰ってくると、ナレガは神妙な面持ちで私を見てくる。
「なぁ、これお前が書いたのか?」
ビラを指さし、尋ねてくる。
あれ、もしかして余計なことした・・・?
この世界の人達のセンスは私たちのセンスとは全然違うとか?
ナレガが私に近づいてくる。ヤバい、怖い。怒っているのか・・・?
私が覚悟を決め、そっと目を閉じた瞬間だった。
「やるじゃねぇか!お前にこんな才能があったとはな!」
ナレガが私を強く抱きしめてくる。ぐえ、獣臭い。
私の作戦はどうやら功を奏したようだ。
話を聞くと、異世界では珍しい奇抜なデザインに惹かれ、今日はたくさんの客が集まったという。
馬車の中はやけにスッキリしていた。確かによく売れたみたいだ。
ん・・・?
奥の方を見ると、なにやら白いものがもぞもぞと動いている。
「あれ何?」
「あぁ、物を売ってるときに寄ってきてな。懐いちまって・・・仕方なく馬車においてる。」
恐る恐る近づいてみると、それは見覚えのある生き物だった。
「犬・・・?」
そこには微妙に可愛くない、犬のような生き物が座っていた。
カレーダルトはインドみたいなイメージ。おそらく「カレー」という単語に影響されてます。




