魔法学校の眠らない夜
気持ち新たに初投稿です。
「東の国・・・。」
俺達がいるのは地図から見て西側の地域だ。
ずっと夜なので正確なことは分からないが、事件が起こってからまだ一日もたっていないはずだ。
それなのにこの対応の早さ。このまま放っておけば他の国々もすぐにやってくるだろう。
「権丈院君、飯山君。頼みがある。」
山田さんが神妙な面持ちで俺たちの方を見る。
「分かってますよ。俺たちが塔に向かえばいいんですよね。」
「任せてください。すぐに大ババ様を見つけてきますよ。」
俺と飯山はほぼ同時に山田さんにそう告げる。
「うん。私はここで他国と交渉して時間を稼ぐ。ごめん。付いて行ってあげられなくて・・・。」
山田さんがうつむき、申し訳なさそうに俺たちにそう言う。
別に山田さんが悪いわけじゃない。彼女がここに残ることは理に適っている。
龍族も、魔法使いとも争いをせずに話し合いに持ち込んだ山田さんなら。安心してこの場を任せられる。
「すぐに戻ってきます。」
俺と飯山は覚悟を決め、銃を取り出す。
「危なくなったらすぐに戻ってきてね。無理だけはしないように。必ずだよ。」
初めて見る山田さんの不安そうな顔。俺たちはここで再会することを約束し、塔へと走り出す。
「彼らは希望だ。異世界から訪れた一つの希望・・・。」
ダフは祈るようにそう呟いた。
* * *
「なんなんだこれは・・・。」
マーレとシズクは高台を訪れていた。上から辺り全体を見ることで、どのくらい結界が広がったのか、今敵はどこにいるのかを探ることにしたのだ。
マーレは驚いていた。結界の広がり方が尋常じゃないぐらい早い・・・。
普通、大規模な結界というのは術式の完成のため、膨大な量の計算が必要になる。
そのため、完成するまでは時間がかかり術者にも隙ができる。
「おい、あれは何だ?」
シズクが魔法学校を指さし、マーレに尋ねる。
「あれは・・・大ババ様の魔法結界・・・。」
魔法学校にそびえる塔は、紫色の光に包まれていた。
「なぁ、あいつらは大丈夫なのか?少し前に龍族が魔法学校に向かったのも見えたぞ。」
シズクは焦っていた。戦車が使えるならともかく、生身のあいつらが影に勝てるだろうか。
魔法学校は影、そしてガクチョーの本拠地だ。何が起こるか分からない。
「やっぱり、私はイーヤマたちを助けに行く!」
我慢できなくなったシズクが走り出す。マーレは必死にそれを止めようとする。
「ちょ、待て!私たちだけで魔法学校に向かうのは危ないよ!一回里に戻ってこのことを報告しよう!」
「いーやーだー!」
マーレはため息をつく。こうなるとシズクは何を言っても聞かなくなる。
私だって権丈院たちのことは心配だ。だが、彼らにはしっかり者の山田さんもついている。無茶はしないはずだ。それに、魔法学校にいるのは大ババ様のような人だけではない。きっと、ワケを話せば彼らを助けてくれる人だっているはずだ。
「はーなーせー!」
「シズク、静かに。」
マーレがシズクの口を抑える。シズクも、何かを察したのか大人しくなる。
・・・影だ。はるか遠くにある木々の間を、影の大群が抜けていく。
里の方向でも、魔法学校の方向でもない。いったいどこに向かっている・・・?
シズクが弓を構える。マーレはそれを止める。
「今の私たちに適う相手じゃない。魔力の大きさも、数も、私たちが圧倒的に不利。」
シズクは弓をおろし、影たちの様子を探る。
「やけに数が多い。あいつらと一緒にガクチョーがいる可能性は?」
「分からない。とりあえず戻って里にこのことを伝えよう・・・。」
マーレが転移魔法を唱える。二人の体が光に包まれ、やがて消えた。
影たちはそれに気づく様子もなく、ただ一心にある方向へと向かっていた。
東の国には龍とか鬼とか天狗とか河童とか色々います。
適当です。




