真夜中にて
何故初投稿にこだわり続けるのであろうか・・・。
逃げ惑う人々の足元を、一匹の犬が駆け抜けていく。片方だけ靴を履いた守衛がそれを追う。
田辺犬の役目。それは守衛をできるだけ門から引き離し、権丈院たちの侵入を手助けすることだ。
「やっと、追いついた・・・。」
角に追い込まれた田辺犬は守衛に捕まった。だが焦る様子はない。役目は果たした。
あとは奴らがうまくやってくれるだろう。
首根っこをつかまれ、守衛に連れていかれる一匹の犬。その顔はどこか誇らしげだった。
* * *
「止まって!」
山田さんが俺たちに指示を出す。俺たちは山田さんの指示に従い、足を止める。
眼前の空間が裂け、中から二人の魔法使いが現れる。漆黒のローブに身を包んだ老年の魔法使い。
もう一人は青いローブを着た女性の魔法使い。見た感じ山田さんと同い年ぐらいか。
二人とも明らかに生徒ではない。熟練の魔法使いといった雰囲気だ。
「お前たちは何者だ。魔法学校に入り込み、何をしようとしていた・・?」
老年の魔法使いが俺たちに尋ねる。
口調からして怒っているというよりも戸惑っているという感じだ。
もしかして、今回の出来事は魔法学校内部にも伝わってないのか?
大ババ様とこいつらが組んでいないなら戦わずに済むかもしれない。
だが、なんて説明すればいい・・・?
「我々は異世界の者です。どうか話を聞いていただきたい。」
山田さんが前に出る。俺と飯山は黙って状況を見守ることにした。
銃は持ったままだ。いつ戦闘が始まってもすぐに対処できるように構える。
「異世界の者・・・!」
若い方の魔法使いが杖を構え、俺たちを睨む。俺達も咄嗟に銃口を向ける。
「待て・・・。」
老年の魔法使いがそれを制止する。
「異世界の方々。我々は今、混乱している。
突然張られた結界。大ババ様は姿をくらまし、我々だけが取り残された。
民は戦争の始まりに怯え、もはや誰も、崩壊を疑わない。」
大ババ様がいない?どういうことだ。この結界が張られた訳は?
とりあえず今分かったのは、結界が張られた理由は大ババ様しか分からないということだ。
だったらこんなところで争っている場合ではない。大ババ様を探さなければ。
「ダフ様、大ババ様は仰っていました。異世界の者が、いずれ災いをもたらすと!」
若い方の魔法使いが、ダフと呼ばれた魔法使いに訴えかける。
「我々はエルフの里の危機に森を訪れ、その原因がここにあるのではないかと調べに来たのです。」
「エルフの里?お前たちか・・・マーレの言っていた異世界の旅人というのは。」
老年の魔法使いが杖を収める。
「ダフ様!何故です!この者達は・・・。」
「杖を収めろ、シンディ。この者たちはマーレの恩人だ。」
「くっ・・・!」
若い方の魔法使いは杖を収める。俺達も銃口を下す。
「私の話を聞いてくれないか。異世界の者よ。」
老年の魔法使いが語り始める。
彼の名はダフ。魔法学校の中でもかなりの実力者のようだ。
隣の若い魔法使いはシンディ。教授を務めており、俺たちが受講した近世魔術史Aを担当していた。
そういやどこかで見たことあるなと思ったらあの時の教授だったのか・・・。
彼らは愛情を持って生徒を育て、数多くの偉大な魔法使いを輩出してきた。
マーレも生徒の一人として彼らを慕っており、色々相談をすることもあったようだ。
「我々は幸せだった。生徒たちは皆優秀で、教授としてやりがいを感じたよ。」
しかし、数年前から学長、つまり大ババ様の様子がおかしくなる。
彼女は周囲の国に対して敵意を見せるようになった。
力を欲し、権力を欲するその姿は、かつて森を切り開き、不干渉主義を結んだ頃の初代学長に戻ったようであった。
「とにかく、何かに焦っているようだった。そんな中、あの事件が起こった。」
その日は朝からマーレの姿を見なかった。
彼女は毎日しっかりと講義に出席する真面目な生徒だったので、違和感を覚えた。
夜には学外から爆発音のようなものも聞こえた。何が起こっている・・・?
「不安になった私が街に出たときには、もう戦いは終わっていたようだった。」
「その数日後に、マーレが私のもとを訪れ、急に魔法学校をやめると告げてきた。
全てのことを話してくれたよ。そうか、君たちが・・・ありがとう。マーレを助けてくれて。」
ダフが頭を下げる。マーレは大切にされていたんだな・・・。
「どうか、エルフの里を・・・罪なき人々の命を守るため、我々に力を貸していただけませんか?」
山田さんはダフの目をまっすぐ見据えたまま、交渉を始めた。
一話の文字数は1000文字から2000文字の間に収めること。
大分幅が広いですね。今回は1800文字近くあります。