異世界は俺には難しい ~少女と爺やとおっさんと~
4話目なので初投稿です。
「は?働く?なんで?」
屋敷に住むことが決まった俺は、代わりに労働を求められた。
やっぱり異世界生活は俺の思い通りにはならない。
家事なんてもちろんやったことない俺は、皿を割り、絵画を落とし、床を水浸しにした。
自分のふがいなさに涙が出る。
爺やはそんな俺を容赦せず叱った。俺は野球部の顧問を思い出し、よけいに惨めな気持ちになる。
あいつ・・・ジャスミンは円卓の騎士とかに選ばれるだけあって忙しいらしい。
俺は爺やとバカみたいに広い屋敷の掃除をするだけの毎日を過ごしていた。
はぁ・・・もう帰りたい。これから先、俺はどうなってしまうのか・・・。
そんなある日のことだった。
「あの、すみません・・・。」
屋敷を訪れた少女はいつもの郵便配達でも、使用人でもない。
久々の来客であった。
小柄で、おどおどした・・・ジャスミンとは正反対といった感じだ。
でも、容姿はジャスミンに負けず劣らずの美人。
「はいはい、何か用でしょうか?」
使用人生活に慣れてきた俺は爺やからある程度の信用を得ていた。
来客が訪れた際の対応も今では俺の仕事の一つだ。
「あの、このお屋敷に妙な力を使う男の人がいるって聞いてて、あ・・・すいません。
自己紹介がまだでしたよね・・・。私の名前はニーナと言いまして・・・。
あ、ニーナ=グレイクルス・・・です。あの、話というのはですね・・・。」
こいつめちゃくちゃ話すのが下手だな・・・。
俺は自分のコミュ力のなさを棚に上げ、目の前の少女にあきれていた。
緊張しているのだろうか?話しているうちに涙目になってきた少女は、いつの間にか自虐と謝罪を
繰り返している。
「とりあえず、上がってください。玄関で立ち話もなんですから・・・。」
自分よりコミュ力が低い人を見ると安心する。俺はこの少女に、親近感と庇護欲を抱いていた。
「ごめんなさい・・・。いつもこうなんです・・・。」
彼女は俺が怒らないことに安心したのか、少しずつ落ち着いてきたようだ。
「先日異世界?から来てジャスミン様を救ってくれたのって・・・もしかして」
「俺だね。」
「やっぱり!あの、ありがとうございました。ジャスミン様を助けてくれて。」
これだよこれ!俺は異世界に来てから初めて誰かに感謝されたことに感動を覚えた。
「いやいや、全然。やっぱり困ってる人は放っておけないからね!で、話とは?」
上機嫌になった俺は、食い気味に質問する。
もしかしてあいつも考えを改め、俺に褒美を与える気になったのか?
「その、王様が話があるそうで一緒に来てくれませんか?」
ま た あ の お っ さ ん か 。
でも、そろそろ家事にも飽きてきたし。おっさんも今度は俺に優しくしてくれるかもしれないし。
せっかく異世界?に来たのならなにか特別なことを成し遂げたい。
そう考えた俺は、再び王国へ向かうことにした。
王国まで体感で2kmです。遠い。