更に闘う者達
誰が何と言おうが初投稿です。
だーくえるふ【dark elf】
ごく稀に誕生するエルフの変異種。
皮膚の色が褐色に近くなる他、体術、魔法を操る力にも長けているという点で通常種とは大きく異なる。
しかし、通常種に比べ魔法に対する耐性が著しく低い。
また、寿命に関しても通常種の約半分ほどしか生きられない。
耳が長い、視力が良いなど通常種に共通している部分もある。
近年、変異の条件として誕生時の環境における魔力の濃度が関係していることが分かってきた。
ここでの魔力の濃度とは空気中に漂うあらゆる魔力を含むものとする。
【魔法学校生物種族史A 使用書物 世界の起こりと種族の起源 より】
街中を爆走する一両の戦車。静寂を切り裂くように爆音がこだまする。
「建物には当てるなよ!」
「誰か歩いてたらどうする?軽々しく撃てねぇよ!」
俺と飯山はパニックに陥っていた。
いきなり襲われるなんて訳が分からない。
「いや、たぶん大丈夫だと思う・・・。」
一人冷静な山田さんが辺りを見渡しながら呟く。
「建物とか・・・周りをよく見て。」
俺達は言われるがままに車内から外を見る。
そして違和感に気づく。
暗い。
真夜中だから暗いのは当たり前であるが、それにしても暗い。
こんな時間でも起きている人がいるかもしれない。夜道を散歩している人がいるかもしれない。
それなのに、町は死んだように静かだ。
窓からは一筋の灯りも漏れず、どの家も廃墟のような暗さがある。
昼とは大違いの、ゴーストタウンのような不気味さがあった。
「まるで初めから、この場所には私たちしかいなかったみたい・・・。」
大ババ様は俺たちに明確な敵意を見せた。きっとこれも、あいつの仕業だろう。
だが、人がいないなら周りに被害が及ぶこともない。
まだいないと決まったわけじゃないが・・・。
「撃つか。撃っちまうか?撃っちゃいましょうよ!」
俺と飯山は砲塔を回転させ、狙いを定める。
砲撃手の田辺がいないなか、俺達は何とかして戦車砲を有効活用しようとする。
「山田さん、もうちょいゆっくり走れない?距離感が難しい!」
「田辺君だったら当てられる距離だよ。」
田辺ってすごかったんだな。
「ファイアー!」
半ばやけくそで撃った砲弾は民家に直撃し、壁を粉々にした。
「あーもうめちゃくちゃだよ。」
衝撃でマーレが起きる。
「おい、起きて大丈夫なのか?まだ寝てたほうが・・・。」
「大丈夫・・・。私も手伝わせて・・・。」
戦車は街を抜け、森に入る。
目的地は遠くに見える炎の先、きっとそこにエルフの里がある。
「でな、これをこうすると・・・。」
飯山がマーレに構造を説明している間、俺は機関銃を打ち続ける。
奴らの攻撃は戦車には一切通らない。だが、大ババ様のことだ、追手がこれだけとは思えない。
不安要素はできるだけ早く取り除きたかった。
「ん?」
影同士の距離がだんだんと近くなっていく・・・。
次の瞬間だった。影は今までの倍以上の大きさになり、俺たちの戦車に突っ込んできた!
ガァン!
「うわっ!
「きゃっ!」
鈍い音が響き渡り、戦車が揺れる。
このままじゃマズい・・・。
俺は必死に機関銃を撃ち続ける。だが、当たらない。
大きくなった影は今までの影と比べてスピードもパワーも段違いだ。
「私に任せて!」
マーレが砲撃手!?
「無茶だ。初めての砲撃なんて俺みたいになるに決まっている!ここはおとなしく飯山に・・・。」
必死に説得する俺の言葉を飯山が遮る。
「いや、きっと大丈夫だ!だって彼女もエルフなんだろ?」
「まだ、まだ、今!撃つよ!」
次の瞬間。戦車が揺れ、砲弾が放たれる。
聞こえてきたのは断末魔のような叫び声。
「何があった!?」
俺は驚いて外の様子を見る。遠くのほうで影が蒸発?離散?していくのが見えた。
「よし!当たったよ!」
すげぇ・・・。俺は素直に感心した。
戦車は森の中を走っている。
ぐらつく車体、目標を遮る森の木々、そもそもあの速さで動く敵に・・・よく砲弾が当たったな。
「遠距離からの攻撃なら、エルフはすごいんだぜ!」
飯山が誇らしげに言う。まるで自分の手柄のように。
「とにかく・・・これなら奴らを全滅させることができる!」
「よし、反撃開始だ!」
赤と黒に染まっていく森の中を、緑の戦車が走り抜けていく。
弓術がうまい人は砲撃手もこなせます。常識ですね。