DEAD or ALIVE
気持ちだけは初投稿です。
「きっったな!」
ビショビショになったままの俺は、どうにかして戦車に戻ろうとするも、靴に水が溜まってうまく歩けない。
「あーもう!」
我慢しきれなくなった俺は靴をひっくり返し、水を外に出す。小石と泥水が地面に落ちる。まるで長い間川の中にいたかのようだ。なんでこんなに入ってんだよ…。
訳が分からなかった。俺は確かに田辺とマーレを探していたはず。それがどうして川で水遊びをしていることになっているんだ…?
とにかくこのことを報告しなければ。もしかしたらここは、魔法学校は俺たちが気軽に入っていい場所じゃなかったのかもしれない。
やっとの思いで帰ってくる。
…ない。戦車がない。
そこに確かにあったはずの戦車が。
壁に入った亀裂はそのままに戦車だけが消えていた。狐につままれたような。そんな気分だ。
俺は不安な気持ちのまま、夜の街を駆ける。
いない。いない。いない。どこにもいない!
飯山も、田辺も、山田さんも、マーレも!
気がつくと、俺は再び魔法学校の前に立っていた。
あの日の夜と全く同じ。真っ暗な校内。
ただ一つ違うのは。
マーレの、影の先導がないこと。
俺はもう一度学長室に向かう。何故かは分からない。でも、マーレがそこにいるような気がした。
扉を開けようとする。
今度は自動では開かなかった。
「失礼します。」
部屋の中には虚ろな目をしたマーレと、大ババ様がいた。
「田辺を、マーレを返してください。」
なんでこんなことを大ババ様に言ったのかは分からない。
でも、きっと大ババ様なら何でも知っていると確信していた。
言い終わった瞬間。床が、壁紙が、宇宙が崩れる。飲み込まれそうな闇。黒一面に変わったこの部屋で、何故か二人の姿だけははっきりと見える。
「お前達は異世界から来た災いだ。放っておけば私の。理想の世界の妨げになる。」
明らかに今までと雰囲気が違う。
低く。重い。男のような声。
大ババ様が言葉を発するたびに空間が、圧迫される。地面に押さえつけられているような。そんな感覚。俺は動くことができずにいた。
「最後の忠告だ。3日以内に荷物をまとめてここから去れ。」
そういうと大ババ様は部屋の外へと出て行った。
「待て…!」
俺は重くなった体を動かし、なんとか大ババ様を追いかけようとする。
「田辺を…田辺をどこにやった…?」
俺は銃を構え、かすれた声で問い詰める。
「今は無事だよ。今はな。」
「ふざけんな…!返せ!」
標準を合わせ、引き金を引く。
次の瞬間、俺の頬を弾丸がかすめる。
実弾。間違いなく俺が撃った一発の弾丸。
反射魔法…!
「お前達が正しい選択をしてくれることを祈っているよ。」
呆然とする俺にそう告げ、彼女は闇の中に消えていった。
俺は、どうすればいい…?
そうだ、マーレ!マーレは無事か!?
部屋に戻るとマーレが倒れていた。
床には吐いた跡。顔は青ざめ、体は震えている。
「おい、しっかりしろ!」
もう夜も遅い。こいつを診てくれる病院はあるのか…?
俺はマーレの肩に手をまわす。
何も話さない彼女を連れ、外に出ると飯山がいた。
「ここにいたのか!探したぜ。
お前…なんだよその格好は…。
それに、隣の魔法使いの子…なんだかすげー顔色悪いぞ!」
飯山達は壁にめり込んだ戦車を街の中に移動させていたらしい。通りで見つからないわけだ。
それより病院だ。
俺は飯山と手分けして街を回る。
しかし、どこも灯りが消え、街は眠りについていた。
「ダメだ…どこも開いてない…。」
「こっちも…。」
「仕方ない。戦車に運んで介抱しよう。」
俺たちは夜の街を急ぐ。
一人の少女と、言いようのない不安を抱えて。
嘔吐の描写を詳細にしようと思いましたが読者の需要と尺の都合で泣く泣くカットしました。




