広い世界へ
初投稿だった気がします。
「ところでさ、これどこに向かってんの?」
「私の里においでよ。歓迎する。」
シズクは俺があげたパンを頬張りながら笑顔を見せる。
「ここから、どれぐらいだ?」
「わふぁらない・・・。」
だいぶ走ったきがするが相変わらずどこにいるかはサッパリだ。
村も、魔法学校の大壁も一向に見えてこない。
あたりが暗くなってきた。
今日は、車内で一晩過ごすことになりそうだな。
「ふぉれもたべてふぃー?」
「皆の分もあるから、あんまり食べすぎないようにな。」
「ん。」
「今日はもう無理かな・・・。」
「そうだねー。真っ暗になっちゃったし。また崖から落ちたりしたら危ないからね。」
走ったり、休んだりを繰り返しながら俺たちは元来た道をひたすら戻った。
行きはこんなに走った気がしない。どっかで道を間違えたか・・・?
「ごめんね。私のせいで・・・。」
「いや、別にいいよ。ただ、あんまり見境なく矢とか撃つと危ないぞ。」
一応反省はしてるみたいだった。まぁ、俺も怒る気にはなれない。
あいつの悲しい過去とやり場のない怒り。俺にはよく分からないけど、今を楽しく生きて欲しい。
「イーヤマ、私さ、魔法学校に復讐したい・・・。」
「やめとけ、よく分からないけど。それじゃお前は幸せにはなれない。」
「でも・・・。だとしたら動物たちは、皆は・・・。」
「悪いのは森を削ったやつだろ?今いるやつらはなにもしてない。」
「うぅ・・・。」
「悪いな。俺はあんまアドバイスとかできんわ。」
「ううん、イーヤマの言うことも・・・よく分かるの。私はイーヤマに、話を聞いてもらいたかっただけなのかも。」
シズクはいつの間にか俺に寄りかかっていた。
頭を撫でてやる。彼女もそれを受け入れる。
「・・・あのさ、なんか食ってない?」
「ふぁまんできなふぁった・・・。」
明日の朝の分のパンを頬張るこいつの姿を見て、俺の理想のエルフ像は砕けてバラバラになった。
「あーさーだーぞー?」
うるせえ。耳元で叫ぶ声に俺はたたき起こされる。
こいつは最高に寝相が悪かった。狭い戦車内をごろごろと転がり、俺は何度も顔面に蹴りを喰らった。
「なぁ、イーヤマ。あれ・・・。」
ハッチを開け、外の様子を見るシズク。その顔には少しの影。
壁だ!見覚えのある高い壁!
めちゃくちゃに走り回った俺たちはいつのまにか魔法学校の前まで戻ってきていたのだ。
「イーヤマ・・・いっちゃうの・・・?」
外に出ようとする俺に、彼女はそう尋ねる。
服の端を引っ張り、今にも泣きだしそうな顔で見つめてくる彼女をみて、俺は決めた。
「ここで、仲間を待つことにするよ。」
俺の役目は戦車の留守番。
それを放棄するわけにはいかない。
明るい表情になっていくシズク、ここで初めて矢を受けたとき、誰がこんな少女だと思っただろうか。
思い描いたエルフは俺の予想とはだいぶ違った。だけど、ポンコツはポンコツで案外可愛いものだ。
ともだちいじょうこいびとみまん