龍鱗と黒色の錆
ちゃんと続いてます。久しぶりの投稿です。読んでください。
雲海を抜け、さらに上昇し、龍は茜色の空を走る。
相変わらず、寒さや風圧は感じない。ただ、恐怖は感じる。
何しろこれは飛行機などとは違う。生身の状態でただ摑まっているだけなのだ。
さらに、その速度は地上を走るどんな乗り物よりも速い…速く感じる。
行きは山田さんの背にしがみついていたので何とかなったものの、帰りは乗っているだけで気を失いそうだ。
「なぁ、これ、もう少し低いところを飛ぶことはできないか…?怖いんだが」
返答はない。分かってはいたが。山田さんは意思疎通ができていたようだが。そもそも人間の言葉が理解できているかもわからない。山田さんも普通の人間じゃなかったし…。
そんなことを考えながら必死に瞼を開けていると、龍は緩やかに下降を始める。心なしかスピードも落ちてきていたように感じる。
王都はまだ遠い。雲より下に広がる荒野を見渡す。
ところどころ黒い煙が見える。やはり争いは各地に広がっているようだ。
とはいえ、俺にできることはない。一コマ一コマが視界に広がっては消えていく。
このスピードならそう時間はかからない…と思っていたが事態はそう甘くない。
「……!」
突如として後方から機械音のようなものが聞こえてくる。
何とか首をひねり、後方を見る。戦車と飛行船を合わせたような…元の世界では見たことのない兵器のようなものが龍を追従している。それも一機ではない。複数の機体が編隊を組んで追ってきている。
「おい!後ろ…何か来てる!」
伝わってるのかはわからない。いや、伝わっているはずだ。こいつには俺の意思が伝わっている!
龍は徐々にスピードを上げ、再び雲の中へと入っていく。視界が狭い。周囲から機械音と雷鳴のような音が聞こえる。竜はまさに、雷雲へと潜り込み逃げ道を探している。
視界が晴れる。雷雲を抜けた…のか?次の瞬間、目の前には不思議な空間が広がっていた。
「なんだ、これ…どうなっているんだ?」
気が付けば俺は雲の中に立っていた。周囲は雷をまとった黒雲に囲まれている。
足元には俺たちを中心に半径100メートルほどの円形のフィールドが広がっている。
俺たち…さっきまで確かに一人だった俺の隣にはいつのまにか見知らぬ誰かが立っていた。
白髪短髪、中世的な顔立ちで男女の区別はつかない。年齢…は分からないが俺と同い年ぐらいに見える。そして、その身には異国の民族衣装のようなものをまとっている。
「何…この。どういうことなんだ、お前は誰だ…?」
男?は答えない。何も言わない。このような状況は異世界では珍しくない。こいつらは重要なことは何も言わない。だから考えるしかない。いつもそうだ。クソ。
ただ、男は黙ったまま、手にした白色の杖のようなものを雲に向けている。その顔は険しい。
そして、雷鳴に交じって時折聞こえてくる機械音が徐々に大きくなってきている。
「なるほど…逃げるのはあきらめてここで戦うってことか…。」
男は黙ってうなずく。俺も随分この世界になれてきた。こうなれば後は戦うだけだ。どうあがいたってなるようにしかならない。
やがて、雲の先から鋼鉄の化物が、その姿を現した。
本当は空中戦が書きたかったのですが…妥協した感があります。次回は久々の本格戦闘がド迫力で繰り広げられます。




