孤独のギルファメント
伝説が再び幕を開ける…!
ジニーと暮らし始めてからどれぐらいの月日が経っただろうか。彼女は俺との生活の中で心を開く…なんてことはなく、今でも出会った時と変わらずどこかそっけないというか…ただ、それは意図的にそうした態度をとっているのではなく、彼女の性格なのだと分かった。何故なら俺以外と話すときも、彼女は同じような態度で接するからだ。
でも、そんな彼女だからこそストレスのない暮らしができている。家事全般をすればそれ以外のことを強要されることもない。衣食住に必要な道具は全て彼女のお金で調達している。居候の身としてはこの上なく贅沢な暮らしだろう。
相変わらず数週間に一度の頻度で黒服が訪れれば話してみれば害のない、気のいい奴らだった。何度か食事を共にすることもあった。
相変わらず彼らが何者かだけは分からなかったし、ジニーからも説明がなかったが…。まぁ、怪しいのはお互い様だ。俺なんか自分で自分のことが分からないのだから。余計な詮索をしてトラブルになるのはゴメンだ。
「お前、いつまでここにいるつもりなんだ…?」
そんな彼女の言葉を聞いたのはいつものように俺が掃除をしているときだった。いつものように気だるそうな口調だが、その言葉は俺を動揺させた。
「すいません…。やっぱり迷惑…ですかね?」
こういう時気の利いた返しができないのが俺のコミュ障たる所以だ。彼女は何も言わずに本を読み続けていた。気まずい沈黙が流れる。
「まぁ、私は気にならないけどさ。というか、むしろ助かってるけどさ…。このままじゃ、お前が不幸になるだけだと思うぞ。」
それが俺の記憶にある、彼女との最後の会話だったように思う。
* * *
ある朝、目がさめると俺は一人だった。綺麗さっぱり片付けられた部屋。床の上には一枚の書き置きと薬の入った小瓶。
俺は嫌な予感がして急いで手に取った紙を読む。
「異世界人、何年も引き止めてすまなかったな。本当はもっと早くにお前を自由にさせてやりたかったが、この機会にしばらくは休養をとらせろとの命令でな。
同時にお前をここに隠しておくことも目的だったんだ。何せお前のことだから放っておいたらまた無茶をするだろ?お前との生活はそれなりに楽しかった。でも私のわがままでお前を引き止めるわけにはいかない。
だから、お前と出会ってちょうど3年。私も区切りをつけることにするよ。お前はこんなとこで召使いをやってるような人間じゃないだろう。その薬を飲んでもう一度、自分のやるべきことを思い出してくれ。」
意味がわからなかった。何もかも。どうして突然…?俺の本当にやるべきこと…?
書き置きの中で、彼女の字が少しずつ歪んでいったのは俺との別れが辛くて、筆を進めることができなかったからだろうか。そうであってほしい。俺だけがこんな悲しい気持ちになるなんて虚しすぎる。
「俺の…俺の…」
言葉に詰まる。最近、俺は使命というよりは何者かに操られているような気がする。掴むべき未来も、そのための行動も…その度に何かを失い、自分を悔やむ。
そんな人生はうんざりだ!俺は何かにすがるように小瓶に入った薬を飲み込んだ。
不定期更新です。ゆるして…。




