未来への灯
キーボードをたたく手が冷たい。
突然の出来事、瞬きの間に二人は火花を散らし、ぶつかり合う。
リミエラの体は青い光に包まれ、あの時と同じ赤い残光が曲線を描いていた。
大佐は意外にも笑顔だった。だが、それはまるでおもちゃで遊ぶ子供のような…あのリミエラでさえも相手にされていないような…それほどまでに強大な力だった。事実、リミエラが息を切らし、大佐をにらみつけても彼女は全く動揺した様子がない。この状況を楽しんでいる様子だ。
「やはり仲間がいたか。だが王都のものではないな…いったい誰だ?」
リミエラは大佐の質問には答えず、俺を横目で見ながら話しかける。
「正敏、逃げろ。お前は帝国を…潰すための大切な人間だ。だから、こんなところで捕まるな。」
「やれやれ、私のことは無視か…。」
再びぶつかる二人。大佐が銃を撃つもリミエラは全てはじき落とす。大佐が距離を詰めるとリミエラは猫のような身のこなしで距離をとる。
「私が道を作る。そしたらお前は飛び降りろ。そうすれば、仲間が助けてくれる。」
次の瞬間、リミエラは一歩踏み込んだ。その瞬間、飛行船が大きく揺れる。突然の不意打ちに大佐はバランスを崩し後ろに倒れこんだ。
「行け!!!」
次の瞬間、俺はリミエラが入ってきた場所へと走りだす。飛行船の窓から身を乗り出し、飛び降りる。
頬を切る風の音、身を包む冷たさ。やがてそれは消えていき、何も見えなく、聞こえなくなった。
* * *
「……!」
正敏が駆け出した瞬間、ほぼ同時に、大佐と呼ばれた目の前の少女は走り出す。
私はすぐに目の前に立ちふさがった。
「どけ!お前にかまっている暇はない!」
さっきまでとはとは違う、殺気のこもった怒声。
「うるさい!お前を…行かせてたまるか!」
全身をつぶされるような痛み。正直…耐えられない。体はとっくに限界だ。
「離せ!っ…!」
なんて損な役回りだ。あいつとは出会ったばかりなのに…。私はどうしてこんなに…。
大佐は私を突き放し、割れた窓に向かって走っていく。きっと飛び降りる気だろう。
そうはさせるか…。もう私の出来ることは限られてるけど…最後まであいつ…違う、皆のために。
「皆と…もっと一緒にいたかったなぁ…。」
ためらいなく飛び降りる大佐に間一髪でしがみつく。落ちていく身体。遠くなる意識。それでも最後まで、気の力で大佐を押さえつける。できればこいつを海に落としてそのまま消してしまいたい。
「おじいちゃん…もうすぐ行くよ…。こいつを…連れ…て。」
最後に脳裏に浮かんだのは修行の風景。私はおじいちゃんのような立派な生き方ができただろうか…。
章の終わりが近い気がします。この章はどうやって締めようか。




