叛逆の思惑
雨やまないっすねぇ……
「力を貸してほしいってどういうことだよ」
俺は目の前のこの帝国士官の言葉を疑った。
最大級の敵が今俺たちの目の前にいる。この状況なら俺たちは簡単に始末されてしまうことだろう。
それなのに彼女は力を貸してほしいと?敵である俺たちの力を?
「あぁ今の帝国は暴走状態にある……各国との戦争は続き我々は東の小国の大半を手中に収めた。しかし、もう限界なんだよ。領地獲得戦争の限界だ。どこかと和解し戦争の終わりを見つけなければいずれ帝国は滅びる……」
帝国の今後を見越して彼女はとんだ賭けに出る気のようだ……
「それはつまり」
「そうだ。クーデターを起こす。皇帝を……軍総司令を暗殺する」
思ってもみない言葉がセレネ中佐の口から飛び出した。
反乱を起こして国を乗っ取ろうというのか?この人は?あまりに大きなリスクを背負った計画だ。
この話、もし本当なら一気に帝国の脅威を消し去るチャンスだ。内側の協力者、それも帝国軍の中枢にいる人物が協力してくれるならこれほど心強いことはない。
ただ……真偽がわからない。
もし彼女の言っていることが嘘だったら?俺たちをはめ王国の潜入部隊や帝国のレジスタンスなどの反乱分子を一掃するための罠だとしたら?
「柊、リミエラ……どう思う?」
「聞くだけは聞こう」
彼女自身まだ信用されていないことを十分理解している。
柊の言葉を受けセレネ中佐は話を始めた。
「暗殺の準備は既にできている。すでに私の同志が計画を進めている。しかし、私の同志だけでは完全に軍を制圧することはできない。そこで君たちの出番だ」
セレネ中佐はにやりと笑った。ここが計画のかなめ、君たちを利用する局面だという感じだ。
「君たちは帝国領外の占領された街の反抗勢力に手紙を送ってくれ。王国の協力者でもいい。そして各地方、占領地で暗殺と同時にクーデターを起こすんだ。私より王国の君たちの方が扇動しやすいだろ?」
帝都や帝国領だけじゃない超大規模なクーデター。なるほど、これが同時におこれば間違いなく既存の帝国体制は混乱し維持が困難になる。内通者のいる中佐の勢力は元の物より素早く事態を納めて帝国を乗っ取ることが可能だ。
「おもしろい作戦だ。しかし、肝心の暗殺はしっかりできるの?」
リミエラの指摘はもっともだ。これは暗殺ありきの混乱に乗じたもの。そもそも通信手段の少ないこの世界では帝国領内であっても同時には難しい。まぁほぼ同時であれば数日の誤差は問題にならないとは思うが。
「暗殺のことは言えない。君たちも私を完全に信用していないように私も君たちを完全に信用していない。あまりにずさんな帝国侵入計画だったからな」
うぐ……それに関しては反論できない。もしこれが中佐でなければ俺たちは死んでいただろう。
「だが、異世界の者たちよ。君たちには少し暗殺に協力してもらいたい。どちらか一人でいい」
セレネ中佐は俺と柊を交互に見つめる。
暗殺に協力……異世界の力……なるほどそのために俺たちが必要不可欠だったのか。
危険な任務だろうことは安易に予想がつく。俺は迷わず立ち上がった。
「協力しよう」
いよいよ4章もクライマックス!?
今回モチーフになったのはもちろんあの独裁者暗殺作戦。
 




