帝都潜入!
さむくない?
帝国領最大都市、帝都バルガレスに日が昇る。帝都を囲う城壁に点在する門では兵士達の仕事が始まっていた。
「鉄資材の搬入商人か?どこから来たか、名前と資材の重さを書け」
門の前に列を作る商人。兵士は数人で商人達の荷台を調べていく。
俺たち帝国兵に化けた三人はその列に並ばず門の横に馬車をつける。
俺の以外の2人は帽子を目深に被り、顔を見られないようにしている。性別は誤魔化せない可能性があったからだ。
「おい、トンプトンの視察班だ。先に通してくれ」
俺はそう言って身分証を出す。
落ち着け…マーレの魔法で偽装は完璧だ。この兵士が本来の視察班と仲が良かったとかでない限りバレないはずだ。
「おう、ご苦労さん」
兵士はあっさりと俺たちを通した。
商人を横目に帝都に入る。
「お、そうだ。マクレス!久々に仕事終わりに飲もうぜ」
と、さっきの兵士が突然荷台に顔を覗かせる。
マクレス!?一体誰のことだよ!?あ、焦るな…俺の顔を見たということは俺じゃない2人のどちらかをそう思い込んでいるんだ。
「すまない……炭鉱の煙が良くなかったようで体調が悪い……」
リミエラが口元を押さえてくぐもった声で答えた。ナイス判断だ!
「そうか。ならまたでいいさ」
兵士は再び仕事に戻ったようだ。
まずは一安心といったところか。
俺たちは商人が荷台を置いているところに紛れるように馬車を置き荷台から降りた。
「帝都バルガレス……想像以上だ」
俺は周りを見回す。
帝都は前に見た本のイラストとは大きく様変わりしていた。帝都中心の宮殿はおおよそ見たままだがその周りにはレンガの建物が規則的に並んでいる。整備され機能性を重視した街並みだ。
そして建物は俺のいた世界にあるような近代的な工場のようなものもある。
「工業力は確かなようだ……王国のそれとは規模が違う」
「規模だけじゃないさ」
俺は煙突から煙を立ちのぼらせている工場に近づく。中にはずらっと銃器が見えた。足が震えるほどの光景。武力も圧倒的だ。この帝国は本当に世界に戦争を仕掛ける気だ。
「今までのどの国よりも進んでいる。科学の進歩がこの国だけ段違いだ。見たか?門の兵士全員が銃を装備していた」
銃の量産でも驚きだが、その配備具合にも驚嘆する。どれほど装備がどのくらい配備されているのかも調査する必要がある。
「おぉ、お前たちトンプトンの報告をしたまえ。何そこでチンタラしている」
しまった。軍の兵士に見つかった。
ここで迂闊な真似はできない。
俺たちは兵士に従い彼を追って軍の建物に入った。
「ここで報告書を」
言われた通り報告書の欄を埋めていく。町長からいつも帝国兵に聞かれている内容を聞いて覚えておいたので問題はない。
「ご苦労。これからはどうするんだ?非番か?」
「え、えぇ」
とりあえず適当に返事をする。あまり多くは言えない。ボロが出ないかヒヤヒヤする…
しかし、今の話を聞くと俺たちには非番が与えられているらしい。まぁ、そうか。数日かけて他国に視察に行っていたんだ。数日休みが与えられていても不思議じゃない。
もし休みなら自由に行動ができる。帝国兵になりすまして自由に帝都を動けるのはまたとないチャンスだ。
「よし、一先ず宿屋へ行こう。話はそこでだ」
2人も頷く。
調べることは多い。軍工場、帝都の内情、士官たち、フリッツそしてミーナ……戦う為に必要な情報は多いほうがいい。
これからは忙しくなるだろう。
帝国兵も大変だね。




