引き籠り戦車分隊奮闘記 ~最大の敵コミュニケーション~
一日が終わりそうなので初投稿です。
空は少し暗くなってきた。
村の規模は大きくない。
30くらいの家が並んでいて大きな畑もある。
「うひょお!マジか!」
田辺が歓声を上げる。
そりゃそうかぁ。目の前に猫耳少女がいるんだから。
VRよりずっとリアルだね。
ポリゴン数が違う…
「あの!き、聖騎士様ですか!」
猫耳少女はおどおどと俺たちに話しかけた。
多分ハッチから顔を出している俺に話しかけている。
俺は無言でみんなに助けを求めた。
が、俺ら三人組はごにょごにょとしかしゃべれない。
しょうがないさ。俺らは引き籠っていてまともに人としゃべれない。
まして、見知らぬ女の子ともなれば…
この危機的状況を救ってくれたのは我らが山田さん!
「すみません。私たちこのあたりで迷ってしまって、宿とかありませんか?」
男どもがわちゃわちゃしているなか、山田さんはしっかりした口調で交渉してくれた。
だが、戦車の小さな覗き窓からだが。
それにしてもさすが山田さん。確かに今、大事なのは寝るとこと食事だ。
「え、あっ…えぇ…」
少女は困惑している。
まぁ無理もないかな。そうだろ?いきなり戦車が現れたら誰だってビビるさ。
「こ、怖がらなくてもいいよ。」
俺はそう言ったが声が震えている。
落ち着け、落ち着け。
「俺たち、迷っただけさ。何もしない。」
「お金はないですが珍しいものならあります。差し上げても構いません。」
女の子は少し困った顔をした後、家の方にかけて行った。
両親が女の子に何か渡し、女の子はそれをこちらに持ってきた。
「何もいりません。貴方たちはすぐここから離れたほうがいいです。」
「お、おい…!」
女の子はパンと干し肉、さらに果物をバスケット一杯に入れ渡してくれた。
「行っちゃった…」
「うひょぉうまそう!」
「それにしてもどうしたんだろな。立ち去れって。」
「なんか空気悪いな。」
その時、村を見て初めて違和感に気づいた。
そうだ。窓が全てしまっている。
そして明かりが一切ない。
そこまで低い文明レベルには見えなかったが。
おどおどしているのもわけがあるのか?
「あー嫌な予感がするぜぇ?」
飯山が怯えた顔で俺を見つめた。
まぁ予感は予感だ。
しかし飯山は勘がいい。裏取りをよくしているからなのかもしれない。
少しは考えておこう。
戦車は女の子がバスケットの底に入れてくれたここら一体の地図に従って街をめざし進み始めた。
俺はハッチを開け村にありがとう!と叫んだ。
勿論見送りはいないが。
そして、空が赤く染まるころ。時間にして5分くらい。
嫌な予感が的中するかたちとなった。
いきなり漆黒の怪物が空から舞い降りた。
「ひえぇぇ」
俺は擦れた声しか出なかった。
マジで見るのは初めてだ。
そんなのは当たり前だ。
しかしVRでは感じ得ない死肉や炎の臭いが凄まじい現実感を突きつける。
「マジかよ…」
「わぁお。こいつは凄いな。」
山田さんと田辺も驚きの声を漏らす。
「な、なんだ?み、みえないぜ?」
飯山は俺のところまで這い登ってきてやっとこいつを見れたようだ。
漆黒の鱗を纏ったドラゴン。
紅い目が明らかに俺らを見つめていた。
しかし、ドラゴンはすぐにまた舞い上がっていった。
そして俺らが進んできた方へ飛んで行った。
「「よっしゃ逃げる!」」
俺と飯山は速攻ハッチを閉めた。
勝てるわけないと思った。
しかし、山田さんは違ったようだ。
「あの女の子、言ってたよね、騎士様ですかって。
つまり騎士はここに来ていないんだ。きっと騎士様とやらに守ってもらう算段だったんだ。」
「あー、それで村が真っ暗だったのか。
少しでもこのドラゴンの目から逃れられる確率を上げるために。」
じゃあ、あの村はどうなる?
まさにあのドラゴンは村の方に飛んで行った。
「俺も男さ。こんなとこで新設してくれた人を見捨てたりできない!」
「おう了解!そう来なくちゃだぜ!」
「了解、分隊長。」
「超信地旋回で行くぞ!つかまれ!」
戦車は反転し今まで来た道を戻る。
さぁはじめようか。
俺達の戦いを。
初投稿でした。
私はレオパルト派です。