逢瀬
取材旅行に行きます。アサルト無双とは関係ないです。
「ニーナなのか…?」
体が動かない。目が離せない。
本物か?俺の目の前にいるのは本当にあのニーナなのか?
覚えている。
俺がまだ異世界に来たばかりの頃にあった彼女を……
一緒にいたのは僅かだった。だけど俺には忘れられない時間で…大切な時間だった。
爆発に巻き込まれ死んだだろうと思っていた。
生きていたのか?
「どうしたの?」
クリノスは硬直した俺を見て何かを察したようだ。
しかし、彼女は警戒していた。
なんせニーナが着ているのは帝国の軍服…そして帝国兵とともにいる。
なぜ?
しかし、そんな疑問は俺の頭に浮かばなかった。
ただ、彼女が生きている。その目の前の事実がすべてだった。
ニーナと帝国士官と思われる少年は屋敷の中に入って行った。
俺はそれを見て追いかけようとした。
刹那、クリノスが俺の肩に手を置き制止する。
「出ないほうがいいよ。冷静になって。彼らが君の何であれ今はここから逃げるのが先でしょ?」
冷静になれ、か……
俺だってわかってる。
ニーナは死んだはずだ。
だが、あの時死体を確認したわけじゃなかった。死んだものと思っていたが、もしかしたら…そう思えた。
「敵は変装ができるんでしょ?罠の可能性が高いよ」
「そうだとしてなんでニーナだ?それもなぜ帝国兵の格好をしてるんだ。俺たちを騙す気なら騎士団の格好をしたニーナに化けるだろ」
あれは偽物なんかじゃない。
俺はそう確信していた。
「た、確かにそうだけど……そうだとしたら」
クリノスが口を閉じた。
そうだ。
もし敵の変装じゃなくニーナ本人だとしたらなぜ帝国の服を着て帝国とともにいる?
「確かめる」
俺はそう言うと飛び出した。
「危険だよ!やめて!」
クリノスが叫んだがもう俺は止まらなかった。
確かめなければ…その考えは確かにあった。だけどそれよりも強い気持ち……
話したい。
話すことがたくさんある。
だから……
「不測の事態にさらに不測の事態…あぁもう滅茶苦茶だよ!」
クリノスはそう呆れていたけど俺に続いて屋敷に入ってくれた。
屋敷は本当に広い。
まるで迷宮だ。
「ジャスミンさん達とは中で落ち合う予定だったけど……大丈夫かな?帝国の奴らに出会わなければいいけど」
クリノスの不安を他所に俺は進む。
彼女は、ニーナはどこだ?
「まずは合流しないと…って聞いてない…」
「クリノスさん、ここの人って帝国との繋がりは?」
「特にないはずだけど…でも目はつけられていてもおかしくはないかも。まだ力のある人だから」
質問にはちゃんと答えてくれるクリノスさん。
しかし、そうなると帝国士官とニーナの動きが気になる。やはり調べる必要がある。
俺は大きな扉の前で止まった。
明らかに特別な部屋だ。
「この部屋は?」
「ギルドオーナーがよく使う応接室…」
俺はそっと扉を開ける。鍵はかかっていない。少し不自然……いや気にしすぎか。
俺は扉の隙間から部屋をのぞいた。
部屋の中にはギルドオーナーと思われる人影と帝国士官、そしてニーナがいる。
彼らは何か話しているようだった。
俺は集中して会話に耳を澄ます…
「この街の為に……貴方ならわかると思います」
なんの話だ?
途中からで話がつかめない。
「決断を……」
ギルドオーナーは顔を伏せる。
表情は読めない。しかし、悲痛な面持ちはなんとなく伝わってきた。
「あぁわかった。君たちに協力しよう……」
総火演予行が楽しみ。




