あなたに似ている
ホラー回です。
さて…どうしたものか…。
ただの黒服、帝国兵が相手なら救出は簡単だが馬車の周囲にいる2人が厄介だ。
1人は屈強な大男。武器も持たず、こちらを警戒する様子もないがそれは強者の余裕からか。服の上からでも分かる筋肉の量から近接戦をメインに戦うタイプだろう。
もう1人は小柄な子供…。しかし、その身にまとっているのはどう見ても帝国の服だ。確認のため階級章に目をやる。
「佐官クラス…⁉︎」
ありえない…。この前の襲撃からまだ間がないにも関わらず、この地域に再び佐官クラスが派遣されるなんて…。いったい何が起こっている…?
額を汗が伝う。動けるか…?あの2人を相手に…。私ひとりで…。
剣の柄に手をかけ、様子を伺う。マサトシを潜入させ情報収集を任せるという手段もあるが…。
「無理だな…。」
彼は戦闘面においては優秀なだが、それ以外ではまだまだ危なっかしい。私も人のことは言えないが…。
何より彼を潜らせても、無事に帰ってくる保証はない。フリッツに続いてマサトシまでいなくなったら…私はもう耐えられない。
剣を収め、深呼吸をする。戦う必要はない。一瞬の隙が作れれば救出は可能だ。
「行く…か。」
覚悟を決め、一歩目を踏み込む。
「…⁉︎」
しかし、その瞬間何者かに肩を掴まれる。
振り返るとそこには先程まで目の前にいたはずのマサトシが立っていた。
「マサ…!」
驚き、声をあげそうになったところを抑えられる。
「静かに…!」
何が起こっている…?訳がわからない。
「あいつは偽物だ…!帝国側にそういう魔法を使うやつがいる。」
私は混乱しながら剣を抜き、目の前のマサトシに突きつける。
「お前が…お前が本物だと証明するものは?」
目の前にいるマサトシ?は少し悩むそぶりを見せた後抱えていた鞄から次々と王国に関係する道具を取り出して見せる。それに今朝の事を事細かに話す様子をみると、どうやら本人で間違いなさそうだ。
「…すまない。」
「気にするな。俺だって目の前の光景が信じられねぇよ…。」
私達は揃って目の前の偽マサトシを見つめる。よく見ると集団の中にこちらを見つめている者がいた。
「あの帝国兵、こっちを見てる…。気づかれていたのか?」
佐官クラスの帝国兵は微動だにせず、こちらを見つめていた。その目に光はなく、遠目からでも危険な人物であることが伺える。
「離れよう…。あいつ、なんかやばい感じがする…。」
マサトシの提案に従い私達はその場を後にする。もし私がやつらに釣られて飛び出していたら…。
* * *
「彼ら、かかりませんでしたね。少佐。」
黒髪の少女が小柄な男に話しかける。
「思っていたより慎重みたいだ。うまくいくと思っていたんだけどね…。
まぁ、でも、奴らに君の姿を明確に見破る手段がないということは分かった。それだけでも収穫だ。」
少佐と呼ばれた男は辺りを見渡した後、少女の方に向き直り微笑む。
「引き続き撹乱よろしくね、ニーナ。」
「はい。お任せください…。
あの2人のことを一番知っているのは…私ですから。」
怖い話は怖いけどなぜか見たくなる。




