降り立つ恐怖 湧き出す希望
でもやっぱり初投稿ネタも尽きてきたし…ここらでやめておこう…。
大佐たちは飛空艇のすぐそばにいた。突然のことに中佐は一瞬、唖然としていたがすぐになにが起きたかを理解したようだ。
「転移結晶石…。」
座標転移結晶石。帝国の技術を駆使して作られた魔道具の一つ。ある程度の範囲内であれば一瞬で異動することができる。転移魔法を誰でも使えるよう道具化したものである。これを持つのは帝国でも佐官クラスに限られる。
その理由として、転移結晶石の構造の複雑さが挙げられる。転移魔法は移動の際に複雑な演算を必要とする。それを道具として実用的なレベルにするためには高位の錬金術士の力を持ってしても長い年月がかかる。大変貴重なものであった。
「すまない……私にもっと力があれば…。」
中佐は俯き、弱々しく呟く。大佐はイラついていた。それは、中佐が聖騎士に勝てなかったことに対してでも、転移結晶石を使ってしまったことに対してでもない。
自らの手で民を、希望の象徴を殺せなかったことに対して、大佐はひどく不愉快な気持ちになっていた。
作戦を変更し、奇襲を仕掛けたにもかかわらず王都の聖騎士たちは対処した。そして、そんな彼らの姿を見て民は希望を持ち、結束を強めた。
「……あんな機械になにができる!作戦は失敗だ。」
中佐は必死に大佐をなだめようとする。何故なら、大佐は気分が悪い時すぐに人にあたるからだ。帝国兵の中に難癖をつけられ殺された人間が何人いることか。中佐はそれを快く思っていなかった。
「落ち着け。奴らに私達の存在を示すことはできただろう。作戦は成功だ…!
それに、王都は今頃混乱している。85型が恐怖を植え付けているはずだ。」
座標転移結晶石。この魔道具には使用者の転移と…もう一つ効果があった。それは機械兵の転移である。使用者が戦線を離脱した際、戦力の代替、敵戦力との戦闘を続行するために、機械兵を投入する。
この機械兵はかつて王都で秘密裏に開発されていた近代兵器、レガリアの改造型であった。
「機械では意味がない……私が。私が。」
大佐は心配して寄ってきた中佐を手で払う。
彼女の心の中にはどす黒い感情が再び渦巻いていた。
* * *
「なんだ…なにが起こっている?」
聖騎士たちと合流したアーサーは困惑していた。
今の爆発音は広場から聞こえた。嫌な予感しかしない。
「敵の位置は完全に把握していたはず。新手か…?」
聖騎士たちは顔を見合わせると、すぐに走り出す。広場までは数百メートル。走ればすぐに着く。負傷したアーサー、ジャスミンも歩いてそれを追う。
「ナレガ…!」
柊もそれに合流する。
「お前…無事だったか!」
「こっちの台詞だよ…!ごめん。本当にごめんなさい。子供は無事…。無事だから…!」
ナレガは駆け寄ってきた柊を抱きしめる。
「良くやった…。無事で良かった…!」
柊は抑えきれず泣いた。ナレガの獣臭さなんて、今は全然気にならなかった。ただ生きていてくれたことが嬉しかった。
「柊、よく聞け。敵の新手が来たかもしれないんだ。」
柊は黙って頷く。
「俺たちにできることは限られているが、人々が傷つくのを黙って見ているわけにもいかねぇ。王都の皆と、聖騎士と協力して帝国を止めるぞ。」
「うん。」
柊は銃を取り出し、爆発音のした方を見る。その目にはもう迷いはなかった。
不条理な世界に抗う強い意志だけが表れていた。
大佐ちゃんは心が壊れてしまっているので一貫性がありません。決してキャラがブレているとかではないのです。




