帝国の撤退
100回超えたので初投稿ではありません……。
「気は済んだか?」
王都の兵士たちを倒しながら進んだ先には中佐が待っていた。
大佐は不満そうな様子で彼女を睨む。
「まだ一人も聖騎士を殺せていない。奴らをこの手で殺すまでは……。」
中佐は珍しく感情的になった大佐の姿を見て少し驚いたが、すぐに状況を分析する。
「お前は聖騎士と交戦したのだろう。じきに奴らは私たちの所へやってくる。いくらお前でも、聖騎士の集団が相手では無事では済まないはずだ。」
「それに私の作戦内容であった王都の偵察を、お前は強襲に変更した。これ以上自分勝手を貫くのならば上に報告させてもらう。」
大佐は渋々だが中佐の指示に従うことにした。先ほどのアーサーとの戦い。大佐には傷一つついていなかったが、疲労は無視できない。奴は思っていたよりタフだった。時間がかかりすぎた。
「まもなくここから数キロの所に飛空艇が来る。我々の目的は達成した。お前はまだやりたいことがあるかもしれないが今回の作戦はここまでだ。帝国に戻るぞ。」
二人は生き残った帝国兵を連れ、目的地まで走る。
しかし、王都の兵士が次々と集まってくる。完全に位置が把握されている。
「こいつら……。」
中佐が舌打ちをする。二人は消耗しながらも兵士たちをなぎ倒していく。
後ろをついてくる兵士の数は徐々に減っていった。
不意に光の矢が飛んでくる。中佐はそれを剣ではじく。大佐には光の矢は届かなかった。
「あれが今回の騒動の……」
「油断するな。奴は他の帝国兵とは違う。心してかかれ。」
「あれ……おかしいな。どうして私の矢が当たらないんだろう?」
二人の前に立ちはだかったのは聖騎士たちだった。聞いたことがある。
鎧に身を包んだ女はジャスミン…。金髪の剣士の方はフリッツ…。
世界崩壊後、率先して王都とその周辺国を守ってきた忌々しい存在。あとの一人は知らない。
フードを深くかぶり、顔が見えない。男か女かもわからない。手の甲に光の紋章が浮かんでいる。
さっきの矢はこいつが放ったものだろう。
「聖騎士が……三人。」
中佐は焦っていた。聖騎士が現れたこともそうだが、大佐が暴走してしまわないか。
もし彼女の気持ちが昂ってしまったら。そうなれば私も、帝国兵も、聖騎士たちもただでは済まない。
彼女の能力は強い。だが、持ち主である彼女の心は脆く、歪んでいた。
「こんなところで……。」
大佐は静かに呟いた。中佐が慌てて駆け寄る。
「おい!あと少しで目的地にたどり着く。抑えろ!」
中佐は剣先を聖騎士たちに向ける。大佐が壊れてしまう前にここを脱出しなければ。
だが相手はかなりの手練れ。無傷で済むとは思えない。最悪死ぬこともありえる。
「こんなところで死ぬわけにはいかない。帝国は滅びぬ……!」
帝国側が主人公みたいになってしまった……。
中佐ちゃんは大佐ちゃんにタメです。階級の差はありますが基本的にはタメです。




