響く銃声
初投稿……です……。
何故だろう。その少女を見た時、私は言いようのない不安に襲われた。
頭ではわかっているはずだった。軍服に、機関銃。彼女も異世界から来た人間だ。
そして、帝国兵の一人。つまり王都を襲ったやつらの仲間だ。
だけど、彼女の放つ雰囲気は他の帝国兵とはまるで違う。
本当に人間なのか……それすら疑わしくなるような異質な存在。
彼女はなぜ笑っている?この戦場で、多くの仲間が倒れている中で、彼女は一人満面の笑みを浮かべていた。私たちを交互に見て、ひとり頷いている。戦場に立つことが……怖くないのか?
私は無意識に銃口を向けていた。彼女は放っておくとマズい。本能が直感する。
今にも引き金を引きそうになるのを、理性で必死に抑える。撃ちたくて仕方なかった。
早く殺さねば。私も、アーサー王も、すべての人が不幸になる。彼女と対面しただなのに、私は彼女のことを何も知らないのに。そう思わせる何かがあった。
「撃ちなよ。」
声を発したのは銃口を向けられても、なお怯える様子のない彼女だった。
怖い。気味が悪い。あらゆる負の感情が暴走する。
私の指は無意識に引き金を引いていた。
「あ……。」
銃声で我に返った時には銃弾は彼女に直撃していた。
直撃していた…はずだった。少なくとも普通の人間。能力を持たない異世界の人間には当たるはずだった。
しかし、銃弾は彼女の前で落ちる。まるで見えない壁に防がれたかのように。
彼女は銃弾を拾い上げ興味深そうに眺める。
「こいつは危険すぎる!早く逃げろ!」
アーサー王が私に呼びかける。さっきまでとは明らかに違う。焦りの表情。
「でも……。」
「いいから早く!こいつは君じゃ絶対に敵わない!私でも敵うかどうか……。」
アーサー王は私を突き飛ばす。私は再び銃口を向けようとするがアーサー王はそれを止める。
「頼む!君を守りながらじゃ戦えないんだ!」
私は子供を抱えて走り出す。結局力にはなれそうもない。彼女を見た瞬間、私には勝てるイメージが湧かなかった。私は変われない。何の役にも立たない。結局他人に迷惑をかけてばかりだ。
足がふらつく。吐きそうだ。最後に見た彼女の瞳が忘れられない。私を見つめる、死んだような目が。
* * *
「話は済んだか?」
少女は銃を取り出し、アーサーに話しかける。
アーサー王は答えない。彼もまた、感じ取っていた。彼女の異質さを。
話せば私まで闇に飲まれてしまうのではないか。そう思わせるほどの邪悪。
帝国のうわさは聞いたことがあった。金色の髪に青い瞳、常に笑いを浮かべ、黒い服をまとっている少女。こいつが帝国の狂人……。世界崩壊を引き起こしたのも彼女が関わっていると聞く。帝国は……何を考えている……?
世界崩壊の直前から帝国の動きが目立つようになった。そして、崩壊後は各地で帝国が勢力拡大のために国を滅ぼしていると聞く。もしこの世界が……帝国に支配されたら。
アーサーは剣を構える。手が震える。彼は感じ取っていた、死への恐怖を。
「お前の質問には答えない。帝国が何を企んでいるかは知らんが、ここでお前を殺す。そうしなければ……この世界に平和は訪れない。」
彼女はそれでも笑顔だった。これから楽しいことが起こる、そんな期待に満ちあふれた表情だった。
戦いを次話に持ち越すお決まりのパターン。大佐ちゃんの名前が明らかになるのはいつなのか……。




