殺意
俺は母を殺したい。
僕は俺を殺したい。
朝、なかなか起きない自分。
母は僕を起こしてくれる。
「一人じゃ何もできないんだから」
軽蔑にも似た母の言葉
その言葉に殺意を抱く。
自分で起きればいいだけのこと
それができない弱い精神に
殺意を抱く。
服を選ぶ。
寒ければ厚着、暑ければ薄着を着ればいい。
柄も色もどうでもいい。
僕はいつもそうして選ぶ。
だいたい母に怒られる。
「選んであげなきゃ服も着れないの」
呆れ果てた侮蔑の視線
その視線に殺意を抱く。
服の種類、上手な着方
最低限の身嗜み
それすら知らない無知な自分に
殺意を抱く。
ご飯を作る。
洗濯をする。
服を干して、さらにたたむ。
電話料に通信料。
自分が住んでるこの場所すべてが
母の所有物であり、母の者。
「一から十までやってあげなきゃ、あなたは何もできないの」
何度その言葉を聞いてきただろう。
何度その視線を受けてきただろう。
その度に俺は
育ててもらった恩も忘れて
殺意を抱く。
何も変えない。
何も選ばない。
何も作らない。
何も返さない。
すべてをもってる母に対して
何もしない自分自身に
殺意を抱く。