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序章 夜明け前の村の外れにて
初投稿です。長編は初なので試行錯誤しながら書いていきます。
曼珠沙華、俗に彼岸花、またの名を狐花。
小さな村があった。中央からは遠く離れた地方の村である。農業でなんとか生活を成り立たせているような人々が住んでいた。どういったわけか、ここには彼岸花がよく生えた。秋のお彼岸の頃になると一斉に咲き乱れ、遠くから見ると村全体が鮮やかに燃えているように見えた。
そんな火のような花の咲く村から離れた山の中。
どこをどう走ってきたのか、薄汚れた狐が倒れていた。
意識はない。
ここに来るまでに負ったらしい傷から滲む血、
毛皮にこぼれた涙、
そういったものは夜明け前までに風に乾かされて消えていた。
明け方の薄い闇。
近づく影がひとつ。
「うわー、こんなとこでよく寝られるな」