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転生

俺の新車!


はっ、ここはどこだ?

見渡す限りの草原に、頭上には大小の球体が幾つも浮かんでる。

あれは星か?


「そんなとこ突っ立ってないでこっちに来い」

神経質そうな初老の男性の声が聞こえる。


またもや姿なき声。

次から次に何なんだよ、この状況についていけん。


「いいから、こっちに来なさい」


こっちってどっちだよ。

悪魔か神様か知らないけど元人間に分かりやすい説明は無いのか?

そっちが迎えに来るまでここから動いてやらん!

俺は草の上にドカッと腰を下ろした。


……あっ、俺座ってる?体がある!

いや、無いぞ!

手も足も透き通ってやがる。

今度は俺が輪郭人間になったのかよ。


何なんだよ、この仕様は!


「駄々をこねてないで来なさい。私も暇じゃないんだ」


イラついてるな。だけど俺だって限界なんだぞ。


そう思っていたら体ごとつまみ上げられたようなフワリとした感覚と同時に視界が一変した。

今度は映画で見たホワイトハウスの大統領執務室の様な部屋にいた。


本当に勘弁してくれ。


「やっと来たか。何故床に座っている?そこのソファーにかけなさい」

正面にあった木製の大きなデスクの上に積まれた書類の山の向こうからカリカリとペンを走らせる音と先ほどの男性の声が聞こえる。


はい、失礼します。


俺の横にいつの間にか存在してた革張りの一人掛けソファーにあわてて腰掛ける。

ヤバい、さっきのニート悪魔と違う。

この人は偉いヒトだ。


「それでお前さんはどの種族に生まれ変わりたい。希望を言って見なさい何でもという訳にはいかないが出来るだけ叶えてやるぞ」


はあ、生まれ変わりの希望ですか?

ブロンドの白人とかマッチョなラテン系とか、そんな感じの希望?


「ヒトが良いならそれで構わないよ。ヒト以外でもヒト型なら魂は定着出来るだろうがな」


ヒト以外と申しますと?


「オーク、ゴブリン、コボルト、オーガ。トロールは定着が難しいな。あとはヒトとハーフのエルフ、ドワーフ、バンパイアだな」


ファンタジーな名前が並びましたね。


「お前さんの星がおかしいのだよ。ヒト種のみで魔法も無しとは偏りすぎだ」


魔法が有るんですか!

まさにファンタジー!


「はしゃいでないで早く決めてくれ。私は暇じゃないと言っただろ、これだからあの世界のヒトは……」


不味い、偉いヒトを不機嫌にさせてしまった。

俺、いや私の希望は魔法が使える長命の種族です。


「ならハーフエルフかハーフバンパイアだな。どちらも純血の同族からは嫌われているがな」


迫害されるのは困るな、それ以外のハーフというと……アレはありか?


「!?、目ざといヤツだな。それは有りといえば有りだが」


ならそれでお願いします。


「……やっぱりダメだ。力が強すぎて影響が測れん」


だったらクォーター、いや1/8でも!


「食い下がるな……仕方ない。私の孫に命じて血を分けさせよう。1/8なら世界への影響も無いだろうからな」


ありがとうございます!


「今生のお前さんは1/8の亜神(デミゴッド)だ。好きに生きて勝手に死ぬがいい」


神の七光りゲットだぜ!

そして俺の体の輪郭が輝き始めた。


「受体が始まるぞ。……眩しくて書類が見えんではないか!迷惑な」


うわああああああ

光が突き刺さる!

瞼が無いから防げない。ぬぉ、手で覆おうとしたら手が光っててかえって眩しい!

拷問だ!


『お前の声が聞こえたぞ。望みは何だ?』

どこかで聞いたことのある男とも女とも判別出来ない声がする。


意識を焼かれるような苦痛に耐えられず俺はその声にすがった。

眩しすぎる、何とかしてくれ!


『イイだろう。一つめの願いは光を打ち消し闇を操る力だ』


途端に部屋を満たす光の濁流がフッと消えた。


「はあ、はあ、はあ」

苦しかった。

何だかよく分からないが収まったみたいだ。


「やれやれ、これで仕事が出来るようになったが。こんなとこで悪魔の3つの願いを使って良かったのか?」


「あ、くまの?ねが、い?」

あっ、声が出る。


「受体は終わったようだな。今からお前さんは創造神フォッファーの曾孫にして虚空の亜神ベガの息子だ」


「やった、手も足もちゃんとある。おう、何故かパンツ一丁だ。鏡は?鏡はありますか」

創造神の曾孫とかすげぇ、絶対に金髪碧眼の美青年になったぜ。


「鏡か、それでいいだろ」

書類の向こうから創造神フォッファーの呆れたような声。


なんとなく指示されたような気がして後ろを振り返ると赤い布のかかった姿見があった。

さすが創造神様、何でも有りますね。


今になって心にゆとりができたのか、初めて部屋の様子を見回した。

30畳ほどの広い空間の壁には本棚やよく見えない絵画が飾られ窓もドアもない。

こんな密室で息が詰まらないのかな?


「広さも調度品も気分次第だ。窓も創れる」

カリカリと書き物をしながら事務的な応答がきた。


俺の疑問には答えてくれるんだ。

律儀な神様だ。

それより、どんな姿に成ってるんでしょうか?

元の体は覚えてないけど格好いいといいな。


「失礼します」

布をめくってご対面。


「……」

黒髪、黒目、中肉中背。

「ザ日本人!」

顔の作りは何となく前の俺より良くなってる気はする。覚えてないけど俺は平凡な人間だったような……

それよりは間違いなくイケてる。

足も長くなった。


気がするけどさ。


「創造神様、創造神様や虚空の亜神様も黒目、黒髪なんですか?」


「私に決まった姿は無い、種族もヒトに限定されないからな」


「お孫さんは?」


「銀髪赤眼の色白だ」


なら何故、ザ日本人?


「お前さんの魂に染み付いた前世の姿と……」


染み付いたって油汚れじゃないんだから。


「受体の最中に闇の力を取り込んだからだな」


「?、闇の力って何のことですか?」

そういやイラッてする声と口調で誰かと話したような。


「お前さんを死なせた悪魔が慰謝料代わりによこした特典とやらだ」


「そんなのもありましたね」


あっ、あのニート悪魔の声だ!

あの時光を打ち消し闇をどうとか言ってたな。


「本当に何も考えずに使ったのか?悪魔の定番、3つの願いというやつだぞ」


「げぇっ、あの3つ願いを叶えたら魂を奪うって有名なやつですか!」

生まれ変わったばかりなのにもう死の3カウントかよ。


『安心しろよ、願いを叶えても殺しやしないし、お前の魂もいらねえよ』

あの悪魔が俺の頭に直接話しかけてきた。

本当に大丈夫なのか?悪魔は信用出来ないってゲーテさんが言ってたぞ。


『変な記憶は残ってるんだな』


記憶喪失ってのはそんなもんだろ。


『面倒なヤツだな。いいから後2つの願いをいえよ』


何故急かす?

罠だろ!


『急かしてるのは俺の親父や神達の方だ!早く片をつけたいんだろ?お前はイレギュラーな存在だからな』


誰のせいだよ!


『多分俺のせい?まあ、俺もさっさと終わらせてまた部屋に引きこもりたいんだよ。この件で300年分は働いたからな』


「私も早く終わらせたんだが」

カリカリ、カリカリ


創造神にまで急かされた。

本当に願いを叶えても大丈夫なんだな?

そこは念をおすぞ!


『しつこいな、今のお前は腐っても亜神だから手出し出来ないだろ』


失敬な!腐ってねえよ、生まれたてのピチピチだ!


「この茶番はいつまで続くんだ」

ガリガリ、ガリガリ、ビリッ!


……不慮の死に対して一回チャラにしてくれ。


『決めるの早いな、2つめはそれでいいのか?』


またお前みたいなヤツがいたら面倒だからだ。


『ハイハイ、OK』


今殺して生き帰させるとかすんなよ!


『それが3つめか?』


ふざけんな!

お前ら悪魔のやりそうなことに釘をさしたんだよ!

油断も隙もねえな。


『やらねえよ、今のお前を殺したらまた問題になるだろ』

面倒臭いって意志がもろに伝わる口調だ。


『最後の願いは何だ?』


願いを無限に叶えてくれ。


『ざけんな!俺はもう帰る』


ウソです、ジョークです!

えーと、3つめは前世より幸運に恵まれるようにしてくれ!


『……そんな曖昧なもんでいいのか?』


十分です、だから3つめのお願いを叶えてプリーズ。


『分かった、これでお前の願いを3つ叶えた。俺は帰ってネトゲ廃魔になるから2度と会うことは無いように天寿をまっとうしろよ』


悪魔がニートなのは世の中にとっても良いことなのか?

元気に引きこもれよ!

じゃあな。


『あばよ』

あの悪魔との繋がりがプツリと切れた。


俺は悪魔を一体封印したんじゃない?


「これで茶番は終わったのか?」


「はい、終わりました」


書類の山の向こうからため息が聞こえた。

このあとはどうするんだろう?


「では、この世界とお前さんのいた世界の違いについて講義してやろう」








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