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くそったれな人生の


ちっちゃい頃の記憶はいつも一人でくそったれだったわけで。


ばっちゃはゴミみたいな家の扉の前にメシ置いてさってくばかりで。


一人でその背中見つめていつもつぶやいてた。


「神なんて絶対いないんだ」


今思えばふつうに痛々しくて。

でもそうでもしないと心も身体も不安と恐怖で押しつぶされそうだったんだ。


でもこの子は違う。きっと今まで幸せで。

けど突然幸せが奪われて。

これからの人生には絶望しかないはずなのに


どうして地獄から解放されたようなカンダタみたいな顔をしているんだ。


だからほっとけなくて。

自然と口は動いてた。


「じゃあ、僕が引き取ります。」


この地獄から解放されたカンダタの顔をした子供の、くそったれになるであろう人生に居座ってやろうと思った。

ただそれだけ。




「僕、つくもゆうすけ。きみは?」

口角あげれば笑顔になるわけじゃないよ。

恩師はそういう。自分だって目が笑ってないくせに。

そんな最強の盾と矛を持つ恩師の教えを顔に貼り付ける。

「なるせりょう。」

この解放されたてのカンダタはぶきっちょな顔で名前だけ告げる。


見事なまでに警戒心丸出しで、手を出したら野良猫みたいにひっかかれそうで。

このまま施設から家に連れて行くのはいささか気分が悪い。

何かを口実に連れまわしたい。

考えてたら、そうだ。

今日僕らはご飯がない。


「まず僕は、家へ帰る前にお買い物がしたいです。」


「はい」


「食べたいものはありますか。」


「ありますぇん。」


ふざけているのかこのやろう、

ないっていわれたら君のごはんは鮭茶漬けだばかやろう。

でも子供の好きそうなおかずなんてわからなくて。

助手席に解放されたての小さなカンダタを乗せて取り敢えず運転する。

じゃあシンプルに僕が喜ぶおかずにしよう。

前にあるラーメンの看板を一瞥して買うものを考えていた。


カンダタにゲーム機を与えて車に置き、

僕は一人カートをからから押して野菜と肉を物色する。

あと、片栗粉。

カンダタのおやつにお菓子と、歓迎用に小さなケーキを買おう。

カンダタがぶーぶー文句言ったら、僕が食べてやる。

かごにぽんぽん放り込む。

じっちゃが申し訳ないからって毎月有り余るお金を送ってくれるのと、そこそこ良い僕の収入で銀行は常に潤っている。

きっとカンダタが袴着るまで見届けてやれるはず。僕の諭吉とともに。



ちょっと遅くなったかな~って。ちょっとだけ急いで駐車場に向かう。ちょっとだけね。


そしたらカンダタが一人でこっそり泣いてて。

やっぱ親いなくてさびしいのかあなんて思って

ドアをがちゃってやって。

そしたらカンダタはぱっと嬉しそうにこっち見て、すぐに真顔になって。

何だこいつかわいいななんて思いながら鍵を穴につっこんだ。


車でぶーん。

僕は文明開化の象徴を動かしながらカンダタにきく

「好きなお菓子って、なに?」


「ない。」


「なんで?」


「ごはんも、あまりたべさせてくれないんだ。僕ばっちいからって。いっぱいパンってされた」


僕は絶句した。


まさか僕とおなじだなんて思わなくて。

この子も、ネグレクトだったんだ。

だから君はあんな顔をしていたんだね。

僕は道端に車を止めて。言った


「僕も、もらえなかったよ。いなくなってからはばっちゃが家の前にご飯だけおいてってた。あのねりょうくん。僕、頑張るからさ、絶対一人にしないからさ。パンってしないからさ。僕と家族になろう?」


カンダタ、りょうくんはちょっとないたあとにちっちゃく


「しょうがないからなってあげる」


なんていって。やっぱかわいくないなんて思いながら僕はまた車をぶーんと走らせた。









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