衝突
「殺してやるよ。今でもこうやってヘラヘラしてるお前を殺して、この女を小春に塗り替えてやる」
「そうはいかねえよ。俺は家出した仲間たちを迎えに来ただけだからな」
指を鳴らすタンポポ。幸四郎が一歩踏み出すと同時に、熊の端役が動く。タンポポも駆け出した。
熊の攻撃をかわし、幸四郎の蹴りを止める。蹴りによって浮いたタンポポの体を、熊の腕が叩きつける。ついさっき腹に一撃をもらった私としては、あの感覚を思い出すだけで青ざめた。
床に背中を強く叩きつけたタンポポは素早く立ち上がり、熊の顔に一発パンチを叩き込む。端役の体勢が大きく揺らぐも、割り込んできた幸四郎に阻まれる。その隙に立て直した端役がタンポポに迫り、再びタンポポの体が跳ね上がった。
一見すると一進一退の均衡を保った勝負に見える。タンポポもいくらか幸四郎へ反撃しているし、見ようによっては負けているようには思えない。が、両者の違いは五分としないうちに濃厚となった。
タンポポの息が上がっている。目に見えて、疲れが浮き出ていた。
「幸四郎、ひとつ訊かせろ」
深呼吸で脈を整えたタンポポが改まって、幸四郎に向き直る。
「なんで慧をさらった」
幸四郎は肩をすくめる。その挙動には、何を知ったことを。と、見下すような意味合いも含まれていたに違いない。
「小春を復活させる。この女は小春と瓜二つだ。能力で俺の記憶に眠る小春の全てをこの女に託し、小春を作り上げる」
幸四郎の声には、躊躇いがなかった。できると、信じて疑わない者の声だ。きっと、日中の私もあんな声をしていたに違いない。
タンポポが一瞬だけ俯く。
「無駄だ、幸四郎」
諌めるような言葉に、幸四郎の肩から何かが滲む。その感情は黒く、赤い。
「小春は戻らない」
幸四郎が動いた。タンポポの腹部に、幸四郎の右足が刺さる。
「黙れ!」
幸四郎の激憤が、倉庫で弾ける。床に転がったタンポポの顔を蹴り上げ、幸四郎がもう一度叫ぶ。
「誰のせいで小春が死んだと思っていやがる。俺たちだ。俺たちの弱さがあいつを殺したんだろ!」
立ち上がろうとしたタンポポを、幸四郎は痛めつける。
「なのになんでお前はそうやってヘラヘラしていられるんだ! だから強くなった俺があいつを復活させる。復活させて、もう一度小春に名前を呼んでもらうんだよ!」
殴る、蹴る、踏む、叩きつける。抵抗する素振りを見せないタンポポはされるがままに傷つき、地面に転がる。幸四郎が圧倒的に強いのかタンポポに戦闘の意思が見えないのかはわからないものの、このままではタンポポが無事で済まされないことくらい私でもわかった。私の中で、焦りがとぐろを巻く。何とかしなければ。どうやって?
どうにかこうにか今日中の投稿ができました、ホッとしつつ、次の作品どうしようなーと、のんびり考えることにします