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第二章・回想、中学三年生

 慧ちゃん。面白い高校を見つけたよ。


 高校受験を明確に意識し始める中学三年生の夏。私は叔父に言われた。

 なんでも聞いた話、単位制で自分の好みに沿った授業スケジュールを形成できるとのことなのだ。確かに面白そうな校風ではあったものの、その高校が県を二つ跨いだところにあると知った時には素早く察しがついた。

 要は、私をこの家から追い出したいのだ。と。

 物心付き始めた頃に両親を事故で亡くし唯一生き残った私は、両親の血縁を頼りにあらゆる場所を転々と住み移っていた。五年前までは父方の祖母が私を忘れ形見だと言って可愛がってくれたものの、その祖母が死んでからはたらい回しのオンパレードだ。なにせ事故で父と母は原型すらわからなくなるほどの衝撃だったのに対し私はなんと無傷。それにすっかり恐れをなした親族は、いかなる会話の場を設けたのかは知らないが数年ごとに私を移住させることに決めたらしい。目の前で高校のパンフレットを持っている叔父も、白羽の矢に刺されたクチなのだ。確かに私自身考えてみても少しばかり不気味なので、きっと私が大人になったら同じようなことをするんだろうなと不思議に納得した。

 祖母が死んで周りの視線が一層冷たくなり始めた時から、私はなんとはなしに自分が周囲から祝福された存在ではないのだと悟り始めた。そしてそれを嘆き駄々をこねるほど子供でもなければ、全てを諦め穏やかな心で生きていけるほど大人でもなかった。

 だから私は、せめてもの駄々といわんばかりに進学祝いで本を一万円分買ってもらうことにした。

 手切れ金だと思えば良心的だし、叔父を含めた一家もひどくほっとしたような顔は今でも忘れない。

 それが、私がここに来たあらましだ。


第二章が始まりました。キリがいいので、、ちょっと短い感じですが今日はここまでです。今のところ毎日更新できているペースなので、ホッとしております。

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