小春③
まず、なんとなく察せられる事態から物事を詰めていこう。
小春さんとは多分人間で、多分女性。そして輪廻さんが何かしらのリアクションを示した辺り、タンポポと輪廻さんから見たら共通の知人ということになる。
そして輪廻さんがあまりいい表情をしたようには思えなかったことから、多分そこまで輪廻さんの過去にいい影響を与えた人間ではないのかもしれない。タンポポにとってはどうかわからないものの、輪廻さんから見たらそうなのだろう。
次に、龍馬さんと百華は小春さんの存在を知っているのか。これによって、何かしら得られるものがあるはずだ。昔ここにいた人なのかもしれないし、ひょっとしたら少し前にタンポポが話していた“ジジイ”の家内かもしれない。もしそうなら輪廻さんはその小春さんに姑的な扱いを被り、彼女にとっては苦い人なのかもしれない。
いや、私は思いとどまった。他にも、考えられることはある。私は高く積まれた本の山を見て、思い出す。
もしや。私の背中を、嫌な予感が滑り落ちた。
輪廻さんにとって小春さんは恋敵で、タンポポを取られた間柄。なんてことは考えられないだろうか。しかし渦中のタンポポは一切知らず、水面下で底なし沼も青ざめるレベルのどろどろがあったというのも、考えられない話ではない。私は一人勝手に考えておきながら、勝手にぞっとした。恋なんて甘酸っぱいことをしないまま高校生になってしまった私でも想像力くらいはある。考えるだけで地獄だ。女はさりげなく敵を踏み台にすることだってあるし平気で蹴落とすこともある。そんな愛憎劇があったとなれば、互いの足を引っ張り合うこと必至だ。そんなタイミングで私がいなかったことに、心底の安堵をため息に載せた。
「まあ、」私はつぶやく。「その予想が本当なのかもわかんないけど」
皆さんには、ジンクス(あるいはそれっぽいもの)はありますか? 僕は朝ごはんを腹八分目以上食べると、通学中に八割以上の確率でお腹を壊します。電車の中で壊すので、その時ばかりは死ぬんじゃないかと思うこともしばしばです。胃が弱いということは、メンタルに問題があるってことなんでしょうか?