下ネタ
「なるほど。なんとなくわかってきたぞ」
舞踏荘の広間。夕食までまだ時間的余裕がある中で、荘に住んでいる全員で円を描いて座っている。原因は勿論、私の仮面が全く意図しないタイミングで発現したことについてだ。
人差し指でこめかみをリズミカルに叩く輪廻さんが、慎重に口を開く。「つまり、慧ちゃんは街中で鉄柱を止めるために意図せず仮面を発現させ、焦りのあまり私に投げ飛ばされるまで町中を走りまくった……と」
「そうなります」
「で、未だその仮面は取れていない。と」
「そうなります」
そう。舞踏荘に帰った私が一番初めに直面した問題といえば、今でも顔に張り付いている仮面だ。そんな原理が働いているのかは全くわからないが、取れない。どれだけ力を込めても剥がれず、このまま剥がそうとすると先に私の顔の皮膚がぶちぶちとちぎれてしまう恐怖が脳裏をかすめたためにやむなく中断することになった。
この退っ引きならない状況を輪廻さんに説明したところ、彼女は悩ましげに腕を組む。十秒と少しほど悩んで、輪廻さんが指を鳴らした。「よし、アレだ」
「あれか……」
龍馬さんが噛み締めるように呟き、膝の上に乗っていた百華の耳を両手で優しく覆い始める。タンポポも「アレ」に何かしらの心当たりがあるようで、気まずそうな顔をして私たちに背を向けた。一体、私に何が待っているのだろうか。
「慧ちゃん、聞いて欲しい話があるんだ」
「はあ」
急に場を侵略したシリアスな雰囲気に、私は及び腰に答える。断るわけにも行かないため、私は「どうぞ」と了承する。
「いや、これはそれなりに大切な話なんだが……」
輪廻さんの口が、ぱくぱくと動く。やがて決意したのだろう。まっすぐと私を射抜く目で、話し始めた。
「実は、ここ三ヶ月ほど生理が来ていないんだ」
沈黙が、流星群のごとく降り注いだ。なんと言えばいいのだろう。その一言が、この場を完全に粉砕したと喩えたほうがいいのかもしれない。俗に言われる、爆弾発言だ。
私は慎重に言葉を脳内で選び、差し出す。
「ご、ご懐妊おめでとうございます」
その瞬間、輪廻さんの腕が動いた。先日の超高速パンチとはいかないにしても私の反応速度を遥かに振り切る速度で顔に綺麗な手が迫る。私が何かしらのリアクションを取るより早く、顔から何かを強引にもぎ取られた。そのはずみで、顔には叩かれたような痛みがひりひりと走る。
痛みに数秒悶えて目を開ければ、輪廻さんの手中には仮面。私はもしやと思い、自分の顔に手を置く。
「ない」
呟く。仮面が、取れている。つまり、あれが私の仮面だということだろう。きょとんとしている私に、輪廻さんがネタを話し始めた。
サブタイトルに苦労します。さておいて、今回は下ネタが載っております。女性の下ネタってえげつないですよね。僕たち男の下ネタなんて女性のものと比べれば圧倒的な差がありますよね。