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     止まれ

 十五歩ほど歩いた時に、ふと前方のコンクリート道に黒い線を見た。その線は、時間を食うごとに大きくなる。

 何か? 見上げた瞬間、答えが自ずと私の目に飛び込んできた。黒塗りの鉄柱が、落ちてきている。それを私に向かってではなく、私の数メートル前を歩く睦まじい親子たちへだ。

 息を飲む。大気中に私の記憶が浮遊していたとでも言うのだろうか。はっと息を吸い込んだ瞬間、私の脳裏にいくつかの映像が光り始めた。

 両親が死んで私だけ生き残った時、親戚一同から妖怪でも見るかのような視線を被ったことを覚えている。

 私を可愛がってくれていた祖母が死んだとき、廃棄の仕方に難儀するごみを見るような目を向けられたことを思い出した。

 転校を繰り返したせいで友達らしい友達も満足にできないまま、教室の隅で本を読んで時折外に目を向ける私の姿が浮かぶ。

 なんだこれは。刹那よりも早い間で思い起こされた映像に戸惑うことも許されず、私は鉄柱を見る。無機質なそれは、狙いをずらすことなく幸せそうな家庭に牙を剥いている。

 なるのか? 私みたいに。あの楽しそうな顔をして両親と手をつないでいる少女が、私みたいになるのか。

 じっと息を殺し、下を向いて、存在を祝福されず、それでも何もないように生きて、大切な心をこじらせて生きるのか。私みたいに。

「やめろ」

 鉄柱に耳なんてないしあったとしても物理の法則には逆らえない。脳のどこかに住んでいる冷静な私がなだめる口調で私を諭す。

 やめろ降るな落ちるな刺さるな潰すな殺すな残すな泣かすな逝かすな鳴るな誰にも孤独を感じさせるな――

「止まれぇええええええええええええええええええええええええええ!」

 神がこの世にいるとして。世界そのものを司るリモコンんお一時停止ボタンを押しちゃいました。そんな不自然な空白が、挿入された。

 私の声に驚いたのか、周囲を忙しなく歩いていた人は皆足を止めで黙り込んでいる。

目線は私ではなく、空中で止まったままになっている鉄柱に向けて。


毎回毎回きりがなんか微妙で申し訳ないです。もっと霧のいい感じで終わらせたいんですが、それしちゃうと一回の更新で一気にかなりの文字数使っちゃうのでご容赦ください!

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