戦闘
「龍馬は二人を隠せ。百華は俺と来い!」
「任せ――」
「うぃ!」
また被った。龍馬さんと百華の組み合わせはちらほら見かけるが、仲がいいのかどうかはよくわからない。
タンポポ、龍馬さん、百華が一斉に仮面を顕現する。しかしタンポポだけは何かヒーローを真似ている分、装着がほかの二人より遅い。
「お前のその変身ポーズ、なんとかしろ」
「これじゃないと仮面が出ないんだから仕方ないだろ」
今回タンポポの変身に対するこだわりはどうだっていい。特異だったのは、龍馬さんと百華の仮面だ。龍馬さんは一目見てわかるくらいのダンボール素材で作られた仮面。そして百華に至ってはガスマスク。正直、正気を疑った。
「百華、好きなだけ遊べるぞ!」
年頃の、それこそやんちゃ盛りの歓声が残響した。喜びの声が、シャッター間で転がる。
百華の機動を一言で称するなら、まさしくスーパーボールだった。シャッター街の四方八方を、弾丸のように飛び跳ねる。
私が呆然とそのスピードに見とれるさなか、龍馬さんが私のそばで腰を下ろした。そして、自身の肩を指差す。
「触れってことさ」
意味を測りかねていた私に輪廻さんが導く。「詳しいことは、それから話してあげる」
私はとりあえず言われるままに、龍馬さんの肩に触れてみる。特に、何かしらの変化はない。
「龍馬の能力はなかなか面白くてね。触れているものや自分自身の気配を抹消できる。だから、慧ちゃんや龍馬を含め私も端役からすれば文字通り眼中にないってことになるかな」
舞踏荘を出る前にタンポポが力強く断言していた所以はこれだったのか。確かに存在感がないとなれば、狙われることも少ないはずだ。
タンポポと百華が端役と戦っている中、私は思っていることを尋ねる。
「なんで百華にも戦わせるんですか。百華は、まだ幼いですし」
輪廻さんは腕を組んで、悩ましげだ。
「臭いものに蓋をして、それで全部解決できるならそれでいいかもしれない。でも現実はそうじゃないし、蓋をしていたことによって思わしくない現実が迫ってくる時だってあるものなんだ」
龍馬さんの肩に触れながら、輪廻さんは話を続ける。
「もし私やタンポポ――さらには龍馬もいなくなってしまったとして、百華だけで端役と戦う必要が出てきたとき、何もできずに殺されるのはあまりに忍びない。だから私たちは、子供に戦わせるなんてけしからんと思われるかもしれないけど、ちゃんと生きて帰れる術は残してあげたいんだ。それこそ、端役なんかと戦えばうっかり死んでしまいかねない」
「答えにくいならいいんですけど、端役と戦って亡くなった人が?」
「いや。端役と戦って死んだ仲間はいない」
なぜか、妙に含みのある言い方だった。私がそれ以上何かを言及するより早く、輪廻さんが前を指差す。「ほら、そろそろフィニッシュだよ」
白単色という気色悪いカラーリングをした端役の腕をまるでアスレチックで遊ぶかのように器用な動きでかわす百華が敵の目を引きつけ、タンポポがその隙に回り込んでいた。数メートルほど跳躍し、落下の勢いを乗じて腕を振り抜く。勢い余ってアスファルトもろとも端役の頭を砕いた爆発音が、私の頭蓋を小突く。あまりの衝撃に、一瞬だけ眩暈を覚えた。
さらさらと崩れる端役には目もくれず、二人が戻ってくる。特に、外傷らしいものは見当たらなかった。私も仮面が出せるようになったら、あんなふうに戦うのだろうか。
「大丈夫」
輪廻さんが、私の頭に手を置く。私は何も言っていないはずだったのだけれど、察してくれたようだ。励ますように、言葉を重ねる。
「大丈夫、きっとできる」
このくらい書くと、毎回新作書きたくなってきて困ります。できる限り完結させようと頑張ろうかと思います。何なんでしょうねこの現象。なんか正式なプロセスとか論理見つけたら僕の名前の一部が正式名称に使われるのかもしれません